サンショウの狂い咲

今年の気候の温暖化のせいか 10月中旬になって、サンショウが 今年2度目の開花をしました。サンショウの狂い咲きは 偶に起きますが、この株の花は 特殊な形態でしたので、その花について投稿します。

この株の由来

この木は アシガラサンショウの実生株で、今年の春に 初めて開花した株です。この木はまだ小さく 高さは1m弱で、春の花は 最初の花なので 小さい花房が3ヶ所だけでした。その花を良く観察したところ、両性花の様にも見えたのですが 小さいので 良く分かりませんでした。そこで 来春の花を良く調べてみようと思っていたところ、思いがけず 秋に狂い咲きしたのです。

f:id:tanemakijiisan:20231022222727j:image狂い咲きした サンショウの木です。

この株の親木

親木のアシガラサンショウは、雄木で 基本的には 雄花を付けますが、年により多少のバラツキは有りますが、花の全体の1割弱の花が 両性花になります。両性花のそのまた1割弱が実を付け、種子が採れます。その種子を毎年播いて、それぞれの株が どんな株に育つのかを観察していました。

注) アシガラサンショウについては、以前に何度か 詳しい説明を投稿してありますので、そちらの方を参照して下さい。

アシガラサンショウの実生株の形質

アシガラサンショウの種子を播いて育った実生株の内、最初に播いた株が 去年から花を咲かせ始めました。去年に咲いた株は 雄株で 両性花は無く、全てが雄花の普通の雄株でした。今年の春に花を咲かせたこの株は、手元にある株の内の2番目に咲いたものです。他に数株を手元に残してありますが、その他の株は 研究者に渡しましたが まだ報告は有りません。来年から少しづつ 手元の実生株の形質が分かって来ると思います。

狂い咲きした花

この株の春に咲いた花では、はっきり分からなかった 雌しべと雄しべが、秋に咲いた花では 良く分かる様になりました。秋に開花した花を見ると、全ての花が 雌しべと雄しべを備えている 両性花の様に見えます。種子を採った親木の方は、両性花の割合が 1割弱ですので、1世代で一気に 全ての花が両性花の株に 変化した事になります。私はこの変化が何世代もかけて、徐々に変化して行くと考えていましたので、とても意外な状況でした。

注) この両性花の株は、人の手を離れて 自然界に出た時は、自身の力で繁殖をする事は無いので、野生植物では無く 園芸植物となります。

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他の実生株の形質

今後 アシガラサンショウの実生株で、同じ様な 両性花だけの株が 多数出て来るのか、とても気になるところです。また 全部が両性花で無くても、多くの雌花と少数の両性花が有る雌株も現れると予想しています。

狂い咲きの確認事項

この花が実を付けるかが とても気になります。秋には 空気中にサンショウの花粉は飛んでいませんので、この両性花が自家受粉するのか 確認出来ます。もし 実が付けば その花が 自家受粉をした事になり、その実が 冬を越せるのかも 確認出来ます。更に 来年以降も この狂い咲きの現象が続くのかも気になります。

サンショウの両性花の株の意義

サンショウの場合 雌雄の無い両性花の株は、実用的価値は 全く無いと思います。ですから それを作り出しても、何の意味も無い事と思われますが、技術的には 雌雄別株の植物から 雌雄の無い両性花の株を作る方法の一つを、示した と言う意義は有ったと思います。遺伝子工学の発展した現在でも、一般の人でも時間さえかければ、植物自身の力を使って 有用なものを作り出せる事を示したのです。

-追加投稿-
追跡経過観察

1ヶ月後に花の状態を見たところ、残念ながら 実は一つも付いていませんでした。ただ 雄花と違うところは、実が無くても 花柄は残っていました。雄花の花柄は 花が終わると、直ぐに根元から外れて 落ちてしまいます。葉もまだ殆ど傷んでいません。実が付かない原因は 一般の果樹と同様に、花の咲いた最初の年なので 実が付かなかったのかもしれません。

狂い咲きの原因についての考察

この株は 庭では無く離れた場所に植えてあるので、月に1回ぐらいしか観察していませんでした。そこで花の状態を観察した時に、もう一度良く全体を見直してみたところ、狂い咲きの原因は 夏の異常な暑さでは無く、8月下旬頃に アゲハ蝶の幼虫に 全ての葉を食べられて、丸坊主にされて 再度葉を出したので、それに伴って花を咲かせた物と思われます。

この根拠となる現象は、葉の量が半分ほどになっている事、その葉に暑さによる傷みが 殆ど見られない事です。

この アゲハ蝶の幼虫による食害は 過去にも良く見られ、小さい木の場合は 2,3日で丸坊主にされてしまい、再度葉を出して来る事が良く有ります。ただ それらの木で 花を咲かせた物は 見た事は無いので、今回は 残暑が長かったのも 影響したかも知れません。サクラが9月の台風で 葉が全て落とされると、花を咲かせてしまう現象が 時々話題になります。

サンショウはミカン科の樹木で、ミカンよりもアゲハに好まれる様です。

追跡経過観察その2

24年3月に この株の花を観察したところ、次の事が分かりました。

蕾の状態を観察すると、5個の雄しべの中心に 雌しべの先の柱頭が見えるのですが、花が開くと 中央の雌しべは 脱落してしまう様です。すると 外観は 普通の雄花になってしまいます。雌しべが残って 子房が付いているのは、1から3割になっている様です。

結論から言えば、この株は 全ての花が両性花になる「両性株」とは言えません。通常のサンショウではない事は事実ですが、不完全な「両性株」の様です。

この結果 また完全な「両性株」作りを続けるつもりです。