アシガラサンショウの遺伝特性

3月27日に アシガラサンショウの両性花の写真を投稿しましたが、以前から その写真の株の種子を播いて 育てていた実生株の内の1株が、この春にやっと初めての花を付けました。このアシガラサンショウの実生株が花を咲かせるのは、これが2例目になります。1例目は 去年雄花を付けた雄株で、その株は樹勢が少し弱く今年は花を咲かせませんでした。その株の去年 2ヶ所に付けた雄花の花房の中には、両性花は確認出来ませんでした。今年 花を咲かせた株も 雄花を付ける雄株でしたが、去年 花を咲かせた株と違い 樹勢は普通で、花房は6ヶ所に付けていました。その花をよく調べると、かなりの数の両性花を付けている様に見えましたので、その様子を投稿します。

アシガラサンショウの実は、自家受粉か他家受粉か

サンショウは風媒花で スギ花粉と同じ様に 目には見えませんが、その時期になると 空気中にとても多くの花粉が飛んでいます。雌株の近くに在る雄株の花を、花山椒として全て摘み採ってしまっても、雌株の着果率には 全く影響を与えていません。ですから かなり遠くから飛んでくる花粉でも 受粉している様で、受粉を気にせず 雌株だけを庭に植えても 実は良く成ります。このアシガラサンショウの両性花も、雌しべのすぐ脇に付いている雄しべの花粉で 受粉しているとは限りません。多くの花に見られる 自家受粉を避ける為の手段の、雌しべと雄しべの受粉時期をずらす事を、この花もやっているのかも知れません。また 元々自家受粉は出来ない様になっているのかも知れません。何れにしろ 他家受粉の方が可能性は高いと思います。だとすると その種子には アシガラサンショウの両性花を付ける形質は、半分しか伝わっていない事になります。

両性花を付ける形質は引き継がれるか

この僅かに稔るアシガラサンショウの実は、毎年 発芽抑制作用を持つ油脂膜を取り除いて、直径と高さが10cm程の素焼きの鉢に1粒づつ播いています。毎年同じ様に播いているのですが、発芽率の高い年と 全く発芽して来ない年が有ります。普通のサンショウでは、この様な変動は殆ど起きません。今年の発芽は、昨秋に20粒播いたものが 2本発芽して来ました。ただし 今回は他の種子が絶対混ざらない様に、発芽直前まで 厳重に細かい網を掛けておきました。これは以前 鉢の端から2本もサンショウが出て来た事が有り、この様に 明らかに 播いた種子とは別物と思われる種子が混じる事例が有ったからです。これらは 小鳥が播いて行ったものでしょう。ですから アシガラサンショウの実生株と思っていたものが、実は 別物が混じっていたと言う事も考えられます。明らかに違うと思われる株は除いて、アシガラサンショウの実生株として育てて、その両性花を付ける形質が引き継がれるかを調べています。サンショウは 実生4,5年で花を付けるのが普通で、果樹の中では 早い方です。実生株の雌雄の比率は ほぼ半々になります。去年花を咲かせた実生株は、今のところ 全く両性花を付ける形質は 引き継がれなかった様に見えます。一方 今年花を咲かせた実生株は、かなり強くその形質を引き継いでいる様です。その 両性花の比率は 親株より高い様ですが、ただ 初めての花のせいか 両性花の雌しべの根元の子房の膨らみが小さい様に見えました。殆どの果樹は 実生や揷し木,接木をした株は、花が咲き始めて数年は 実が留まり難いのが普通なので、この実生株も しっかりした雌しべを付けて 実を成らせる様になるのは、まだ 2,3年先になるでしょう。

これからの予想

これから毎年このアシガラサンショウの別の実生株が、次々と花を咲かせる様になって来ると思います。今のところ実生では 雄株しか現れていませんが、雌株で両性花を付ける株が 何時現れるかが とても楽しみです。雌株のアシガラサンショウは まだ確認されていませんが、雌株の場合は 雌花の花房の中に、1,2輪だけ 5本の雄しべを付けた花が現れる筈です。これは花が咲いている時しか 確認出来ません。雄株の場合は 僅かですが 実がなりますので、その実を見つければ 両性花が有った証拠になります。さらに2世代目3世代目と アシガラサンショウの実生株を育てて行けば、その内 全ての花が両性花になる株が現れる可能性が有ります。もし出現すれば 進化して雌雄に分かれる前の「古代山椒」とも言うべき物になるのでしょう。

f:id:tanemakijiisan:20230405172754j:image今年初めての花を咲かせた実生株の両性花です。

この株の親木との違いは、親木の両性花の比率は 1割以下ですが、この実生株の両性花の比率は 2,3割は有りそうで、また 一つの花の雌しべの数が 親木は殆ど1本で、この実生株は 2本が多く見られます。普通のサンショウの雌しべの数は 2本です。

普通のサンショウの雌しべと比べると、子房が小さいので わかりにくいです。今はスマホの画面はよく見えているのですが、ピントが合わせられず 又ピンぼけの絵になってしまいました。