両性花のサンショウの実の収穫

サンショウの実がそろそろ赤く色付いて来ました。熟したサンショウの実は、一般には使われる事は有りません。私は両性花のサンショウの実生株は、どの様な形態を現すのかを調べる為、その熟した実を採取しているのです。

両性花のサンショウ

サンショウは雌雄別株の風媒花なので、雌花雄花共とても小さく花弁の無い地味な、20~40輪の集合花です。雌株に付く雌花は、花柄の先にゴマ粒の半分ほどの丸い粒の子房が2個付き、その先に細いツノ状に柱頭が付いています。本来付いている筈の、周りの雄しべは有りません。ちなみにサルナシやヤマブドウの雌花には、雌しべの周りに沢山の雄しべが有りますが、それらは飾りで稔性を持っていません。雄株に付く雄花は、ゴマ粒ほどの葯が円周状に5個配置され、その中心にある筈の雌しべは無く、その台座の盛り上がりだけが見られます。雄株の雄花の中に僅かですが、その中心に雌しべを持つ花が見つかりました。これがサンショウの両性花です。その中心に有る雌しべは、1本が殆どですが 中には2本だったり不完全なものも見られます。この両性花を持つサンショウは、南足柄市箱根山で初めて採取されたので、「アシガラサンショウ」と呼ぶ事にしました。雌株の中にある両性花は、まだ確認されていません。

両性花の結実

この雄株の両性花の割合は、おおよそ全体の1割ほどと思われます。その両性花が結実する割合は、更にその1割くらいです。サンショウは、近くに雄株が無くても雌株だけで良く結実し、その結実率は通常9割以上になります。多分スギ花粉の様に目には見えませんが、その時期にはかなり飛散しているものと思われます。そこで気になるのが、この両性花の結実率の低さです。もしこの両性花の花粉に稔性が有り 且つ良く自家受粉するのであれば、普通のサンショウよりも もっと高い結実率になる筈です。この結実率の低い最も可能性の高い原因については、両性花は一般的に自家受粉し難く このサンショウも僅かしか自家受粉はせず、先に自分の花粉が付くと 後から他の株の花粉が来ても、上手く受粉出来ない事ではないかと思います。この実が自家受粉か他家受粉なのかは、その実生株の形態を見れば、ある程度は推察が付きます。他家受粉であれば実生株の両性花の比率はそれほど高くならないであろうし、自家受粉であればその比率はかなり高くなると思われます。実生株の結果はまだ1株で1年だけですが、その株はその全ての花が両性花になっていて、結実は1個も見られない事からすると、やはりその推論が合っている可能性が高い様です。これには10本以上の実生株の形態を確認する必要があります。今後の多くの実生株の成長が待たれます。

両性花の位置付け

植物の進化の過程からすると、雌雄別株の状態は 他家受粉を確実に行う為に、両性花から分かれて進化したものと考えられています。その名残として 時々雌雄別株の株の中に僅かに両性花が現れるのでしょう。アシガラサンショウもこの一例なのでしょう。その他の樹木では我が家では、ギンモクセイとヒイラギの雄株で、結実が確認されています。そこでこの先祖返りした形質を、選別して世代を重ねれば、完全な元の両性花だけの株が出来るのではと考えました。ちなみに現在の園芸種のブドウは、雌雄別株の野生種のブドウから作られた、両性花なのではないでしょうか。サンショウの両性花では 1輪の花に1本の雌しべが多いのは、両性花の時代は 雌しべは1本で、雌雄別株に進化した後に、2本付く様になったからだと思われます。同時にトゲも両性花の時代は、無いか有っても小さいものだった事が考えられます。それでこのアシガラサンショウも、トゲが少なくて小さいのかも知れません。

実生株の確認作業

私はこの両性花の実生を3回以上蒔いていますので、今年からは他の研究者にその実を渡して実生株を作ってもらい、その形態を観察して第三者として確認して貰おうと思っています。これから実生の発芽率、実生株の雌雄の比率、両性花の比率とその結実率等を調べようと思っています。

今年の実の収量

今年は実の皮が割れる直前の9月10日に収穫しました。今年はとても豊作で 例年多くても50個程でしたが、その収量は葯130個でした。その内10個は比較用に手元に残して家で蒔き、あとは全て別の研究者に送りました。

種蒔き

サンショウの種子は発芽抑制機能を持っていますので、そのままで蒔いても発芽しません。蒔き方は以前紹介しましたので、ここでは省略します。

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次回はヤマブドウの実を紹介します。