シロバナタンポポの生態 No426

数年前に 近くの散歩道で シロバナタンポポを見付けて、その種子を採取して 播いた株に 意外な状態が現れていますので その状況を投稿します。このタンポポの実生株についてと 後に他の場所から採取したシロバナタンポポについては、何度か投稿していますので それも参照してみてください。

夏と秋のシロバナタンポポの状態

このタンポポの意外な状態とは、花が咲く前の 未だ小さい株だった時は、夏も葉を枯らす事なく 秋迄葉を茂らせていたのですが、花を咲かせる様な大きさの株に成ると、7月に入ると 地上の葉が全て枯れて 完全に消えてしまう事です。初めは 暑さで株が消えてしまったと思ったのですが、秋になると いつの間にか また葉を茂らせていて、翌春には 長い柄の花を何輪も咲かせます。

今年の夏も 地上部は完全に消えていましたが、9月に入ると また葉を伸ばして来ました。

f:id:tanemakijiisan:20261028110339j:image これは 10月下旬の 2度目の葉を伸ばした状態です。この箱には 数株のシロバナタンポポの実生株が植えられていますが、もう 箱一杯になって 一部壊れてしまいましたので、12月には 少し大き目の発泡スチロールの箱に分けて 植え替えようかと思っています。その際 根が相当に絡み合っていますので、根を傷めない様に分離するには 1日掛りの仕事になりそうです。植え替えの用土は 現在のフカフカした柔らかい物では無く、硬めの重い物にした方が タンポポには 適している様に思います。一番小さな1株は 硬い土の日当たりの良い場所に、直植えにして 箱植えと比較してみようと思っています。

セイヨウタンポポとの比較

シロバナタンポポは 在来種のタンポポで 関西地方に多く自生していて、関東地方では 珍しいタンポポと言えます。シロバナタンポポは 数が少ないのに どうやって繁殖しているのか 気になって、見付けた株から 種子を採取して 実生株を作ってみたのです。在来種のタンポポとセイヨウタンポポの比較は、以前の投稿に書いて有りますので 参照して下さい。

その投稿に含まれていなかった内容に 夏に葉を枯らすこの現象が有るのですが、これはセイヨウタンポポには見られない現象で 在来種のタンポポとの大きな相違点なのかも知れませんので、今回は その点に付いて 考察をしてみました。

夏に葉を枯らす現象

この夏に葉を枯らす現象は 気候の温暖化によって最近現れたものか、元々持っていたものかが気になります。ただ この箱の全ての株が 同じ現象を起こしていますので、1つの個体に 偶々現れた現象ではなく 集団全体の形質の様に思います。

生理的にみると このタンポポは、夏の暑さによる損傷を受けない様な 丈夫な葉にするよりも、 容易に出来る弱い葉を作って 夏の暑い時は その葉を捨てて、暑い夏を乗り越えたら 又秋に葉を出す方法を 選んだのでしょう。ただし この方法には 年に2回 葉を作らなければならない欠点が有りますが、近年の夏の暑さには その欠点を上回る程の厳しさが有ります。地中の根が しっかりと養分を蓄えられる状態でなければ この方法は採れないので、花が咲く程度に株が大きく成ってから この方法に移行しているのでしょう。確かに葉を触ると 葉はセイヨウタンポポに比べると、とても薄く柔らかく感じるのは その為なのでしょう。この葉は 冬迄残っていても 寒さの中では 十分な活動は出来ず、弱ったままで春を迎え 春の新しい葉に 入れ替わる様です。

直ぐ傍に生えているセイヨウタンポポは、夏でも 葉は有った様に思いますが 全ての株が 本当に葉が残っていたかに付いては、良く見ていませんでしたので 来年の夏には しっかりと確認してみようと思います。

2度目に見付けた 別の場所に生えていたシロバナタンポポは、真冬の1月頃でも 葉も残っていて 花を咲かせていましたが、それも この現象の延長線上に有るのかも知れません。ただ この花の種子は播いても1本も発芽しませんでした。やはり 寒さの影響で 正常な受粉が出来ないのかも知れません。

種子の採取

この株も含めて 他の場所の株から採取した種子を、何回か播いてみたのですが 1度も発芽した事は有りません。この原因として考えられるのは、普通は 自家受粉では 発芽能力を持たないが 在る特殊な環境に置かれた時だけ 自家受粉でも 発芽能力を持った種子が作れる場合が有ります。最初に採取した株は その近くには 1ヶ所しか シロバナタンポポは自生しておらず、その株も その年は その時期には花を咲かせていませんでしたので、自家受粉としか考えられません。その株の生えていた場所は、路面のアスファルトとブロック塀の本の僅かの隙間で、とても過酷な環境となっていました。その証拠に その株は 種子の採取後、翌年には 消滅してしまいました。一般に植物は 厳しい生存出来る限界に近い環境で作られた種子は、生存戦略として 普段は他家受粉する種でも、自家受粉による 多少の不利な面には目を瞑って 自家受粉で種子を作る事が有ります。このシロバナタンポポも その様な厳しい環境だったので、発芽能力を持った可能性も有ります。

今栽培している実生株は とても良い環境で 自家受粉で有る可能性が高く、採れた種子を何回か播いてみるのですが 未だ1度も発芽していません。花に虫が来ているのは 全くみられませんので、来年は 綿棒を使って 何回か人工受粉をすれば、実生株同士なので 簡単に他家受粉になりますので やってみようと思っています。

 

 

 

再度見付けたギンモクセイの実 No425

我が家のギンモクセイで 8年前に実を見付けて以来、何とか もう一度 実を見付けようと 毎年花後に探し回っていたのですが、漸く 今年見付けました。

実探し

実が成っていた株を 毎年花が終わると 実が付いていないか 調べているのですが、子房が残っているのを 一度も確認出来ませんでした。実の大きくなる春にも 探してみるのですが、やはり見付かりませんでした。でも 今年は 花が終わったので 枝先を調べると、3ヶ所に 小さな子房が残っているのを見付けました。

f:id:tanemakijiisan:20261026130348j:image 10月24日の状態で 未だ枯れた花殻が 残っていて、中央に少しピンぼけの物と その少し右に 日焼けした物の 2個の子房が見えます。キンモクセイの場合には 花が終わると 直ぐに花殻は 綺麗に落としてしまいます。この房は 上手くすると まだ花殻の中に 子房が有るかも知れないので、多ければ 3個以上の実が成るかも知れません。左下隅に向かって 白い物が写っていますが、これは 今後の追跡調査の為の印として 20cm程の長さの リボン状に結び付けた紐で、他の2ヶ所の 子房の付いた枝にも 結んでおきました。と言うのも モクセイの実が大きくなる過程を 未だ観察した経験は 有りませんので、この子房が 本当に大きな実になるか 継続して観察してみようと思っているからです。仮に 大きな実が採れたとしても、この実は 自家受粉で出来た物と思われますので、発芽能力を持っているかは 播いてみないと分かりません。ウスギモクセイについては 二十数年前に 種子を播いた事が有り、発芽率は 5割程だった様に記憶しています。もし この実が大きくなって 種子が採れたら、その種子と それを播いた様子と 更に発芽すれば その様子を投稿します。

初めて この株の実を確認した経緯

このギンモクセイの株の実を 初めて確認した経緯は、この株の枝が 混み入って来たので 太枝の中抜きをしている時、伐採した枝を 太枝 細枝 葉に 仕分けていると、2個の実が付いた枝を見付けました。直ぐに 切っていない枝を調べてみたのですが、他には 見付かりませんでした。枝を伐採した時が冬だったので 未だ実は熟しておらず、残念ながら 播いてみる事は 出来ませんでした。でも この株は実を着ける事が有ると分かりましたので、以来 毎年丁寧に調べていたのです。

キン(金)モクセイとギン(銀)モクセイ

木犀と言えば 香りの強いキンモクセイが有名で 数も多く、ギンモクセイの方は あまり知られていませんが、ギンモクセイの方も 弱いのですが 香りは有ります。両方とも 昔中国へ行った遣隋使等が持ち帰って 日本に渡来した 園芸品種の花木で、花は良く咲きますが 植物学的には 実は成らないとされています。以前は 両者共 雄木で 日本には 雌木が無いので 実が成らないのだと説明されていて、中国には 雌木が有るとされていました。でも 現在では 中国にも雌木は無く、雄木を挿し木等で 増殖したと言う説に変わって来て、私も以前 知り合いを通して 中国の専門家に確認して貰った事が有りますが、やはり その専門家も キンモクセイの雌木は見た事は無い との事でした。つまり 当時は大変な思いをして、苗木の状態で 海を渡って 日本に持ち帰られたのもので、中国にも最初から 種子も雌株も無かった事になります。

私の これ迄の観察と経験から考察すると この両方のモクセイは、元は 中国南部に自生していた 野性のウスギモクセイの枝変わりから出来たもので、キンモクセイの方は 花の色が濃く 香りがとても良い枝変わりだったので、瞬く間に 中国全土に 挿し木等で 広がり、ギンモクセイの方は 白い花で 香りも少し良かった枝変わりだったので、それも挿し木等で 少しづつ広まったのでは無いかと 推察しています。

キンモクセイとギンモクセイの違いは、キンモクセイの方は ウスギモクセイの雄木の枝変わりから出来たもので、ギンモクセイの方は ウスギモクセイの雌木の枝変わりから出来たものと推察しました。その為 キンモクセイは まずは両性花が出来ないと 子房が出来ず、その両性花の極一部が 実を着けるので、実が見付かる事は殆ど無いのでしょう。ギンモクセイの方は 雌木なので 雄しべを作る変異の方が 雌しべを作る事と比べると負担が軽く、その変異さえ起きれば 雌しべは 元々有るので  自家受粉すれば 実が着くので、注意深く見ていれば 実は見付かるのでしょう。でももしかすると ギンモクセイは、スウギモクセイかキンモクセイの花粉を受粉して 実を成らせているのかも知れません。これ等のモクセイは 元は同じ種ですので、受粉は十分に考えられます。家の近くには ウスギモクセイは無いので、可能性が有るとすれば 直ぐ近くに在るキンモクセイの方です。そう考えると 今年は 珍しく両者の花期が一致した年で、その影響で 今年は珍しく 実が出来たのかも知れません。ただ その種子が 発芽力が有るかどうかは、それを播いてみないと分かりません。

キンモクセイの実が出来る可能性

このモクセイに とても近い樹種に ヒイラギが有り、同じ様な花が咲きます。ギンモクセイの実を見付けた後に、我が家のヒイラギの雄木が 隣の敷地迄 枝を伸ばしてしまったので、その太枝を伐採しました。その枝を仕分けしていた時、同じ様に 2個の実を見付けました。この事で ヒイラギの雄木でも 両性花が着いて 実が出来る現象を 確認しました。サンショウの雄木に 両性花が着いて 実が成るのを見付けて アシガラサンショウと名付けましたが、雌雄別株の雄木に 僅かですが両性花が着いて 実の成る現象は、それ程珍しいものでは無いのかも知れません。

ですから キンモクセイにも ギンモクセイ程多くは無いにしろ、良く調べれば 多分実は見付かると思います。それが 発芽能力を持った実かどうかは分かりませんが、サンショウやヤマブドウの両性花の場合は 良く発芽しています。未だ キンモクセイの太枝を伐採した経験は無く、伐採しても 調べるには 丸一日掛かってしまうでしょう。多くのキンモクセイの株を伐採して 調べれば、その内 見付かるのかも知れません。もし見付かれば その株を徹底的に調べれば、実が見付かるでしょう。

 

ウメの形質の変化 No424

ウメが 夏の終わりに 新芽を出して来る 特殊な現象が、発芽後 4年目になった今年も まだ見られますので その様子を投稿します。

ウメの特殊な形質

ウメは古くから人々に親しまれた 身近な花木で有り、その果実は 梅干や梅酒等として 良く使われて来ました。でも その親しさ故に ウメの持っている特殊な形質は、あまり気付かれなかったのでしょう。その特殊な形質と言うのは、ウメは 樹木の中では とても変わった 二つの形質を持っている事です。その一つは 花期で、一般の樹木は 冬以外の季節に花を咲かせますが、ウメは 虫媒化なのに 虫が少なく 冷害を受け易い真冬に 花を咲かせる事です。もう一つは 発芽の仕組みが、とても複雑になっている事です。その複雑な仕組みが有る為に、種子を纏めて播くと 発芽出来ません。その発芽の仕組みを調べている過程で、種子を冷蔵して 暑い夏をやり過ごすと、秋に発芽してしまう事が分かりました。その株には 春の新芽とは別に 秋にも新芽を出す現象が現れ、その現象は 翌年以降にも現れる事を見付けました。このウメの発芽の複雑な仕組みを調べる実験と考察については、以前から 何度か投稿して来ましたので、其れ等を参考にして下さい。

今回は この秋の新芽の現象を 取り上げて 投稿しました。

f:id:tanemakijiisan:20261018154553j:image 10月17日の状態で、2本の新芽は9月初めに出て来たものです。新芽の先端は 未だ伸びきっていませんが、伸びは遅くなって止まりそうです。夏の葉は 既に全て散ってしまい 1枚も残っていません。

新芽を出す現象

ウメは 通常の新芽は 3月下旬に出すのですが、このウメの様に 9月に種子から発芽した株は、その後何年間かは 夏の終わりから秋の始めにかけて、新芽を出してしまい その葉は そのまま冬を越してしまう様です。この株が 9月に発芽した経緯は、種子を採取後直ぐに 冷蔵保存して その種子を9月初めに播くと、殆どの種子が 播く時には既に殻が割れて 発芽の準備段階になっていて、9月下旬には 発芽して来ます。それらの株の半数近くが、翌年以降にも 秋にも一部新芽を出して来るのですが、殆どの株が 年毎に 異常な時期の芽出しは減って、4年目には 殆ど無くなります。でも 中にはこの株の様に 4年経ってもまだ 秋に新芽を出す株も有ります。

この秋の新芽の芽出しは 株全体の枝で起きているのでは無く、2,3ヶ所だけに現れる現象です。

新芽を出す原因

秋に新芽を出す原因としては 通常とは違う方法で 種子を発芽させた事に有ると思われます。株の形質を決める遺伝子は 受精した時に 決まってしまうもので、成長過程では 変化しないと考えられます。この株は 種子を採取した直後の低温状態が、その後の異常な時期の新芽の芽出しを 引き起こしていると思いますので、遺伝子の中に 元々 秋に新芽を出させる形質が含まれていて、普段は隠れているのですが 低温等の刺激を受けると、それが 発現して来るのでは無いでしょうか。この現象は 多くの株が起こしているので、偶々1個の個体が起こす突然変異では無いと思います。

今後の調査方法

この秋に芽を出す現象が 何年くらい続くのか調べるには、この枝を 接木又は挿し木で育ててみて、その広がりと継続性を確認する方法が良いと思いますが、時期と枝の太さが適当で無いので 適用出来ません。その代わりに この株の新芽が出ている枝以外の枝を、全て切除して 更に来春の不要な新芽も芽欠きすれば、接木と同じ効果が得られる筈ですので、どうなるか観察してみようと思います。

 

 

季節外れのスミレ No423

先日 近くの細い路地裏を歩いていると、路面と塀の僅かの隙間に 白い小さなスミレが咲いているのを見付けました。スミレは 一般的に春の花とされているのですが 稀に暑さが和らいだ 秋にも咲くのかも知れませんが、今年は 強いエルニーニョによる 9月の長雨,低温,日照不足が起きて、その影響なのでしょうか。この秋は サクラの狂い咲きも 多く報告されている様です。

f:id:tanemakijiisan:20261013085232j:image 10月8日に撮ったものです。良く見ると 花弁の周辺に 僅かに菫色が出ていて、時間が経つに従って その色が少し濃くなる様です。

スミレについては その種類を語ると 分厚い本が1冊書けてしまうと言われる程、その種類の数が多いそうです。私は スミレについては 殆ど知りませんが、白い花は 家の近くでは見た事は無く、秋に咲く株も “珍しいのかな“ と思って投稿しました。

種子の採取

私は 珍しい植物を見付けると、つい種子を採取して 播いてみたい気になります。スミレの 春に咲いた花は 種子を着けているのを 良く見かけますが、秋に咲く花は 種子が作り難いのではと 思われるのですが、この後 どうなるか良く観察してみます。もし 晩秋に 種子が出来なかったとしても、株は消えないと思いますので 来春の花と種子を期待しようと思っています。

何れにしろ 種子が採れれば 早速播いてみますが、スミレの種播きは 未だ一度もした事は有りません。もし 晩秋に採れれば 他の株は近くに無いので、自家受粉の可能性の高い種子になります。スミレの花に 虫が来ているのを 一度も見た事は有りませんが、その割に 花後に良く種子が稔っているのを良く見かけますので、スミレは 自家受粉し易いのかも知れません。

でも それは種類が多い事とは 逆の現象の様に見えますが、実際は 如何なんでしょうか。何れにしろ この株の種子が採れて 花が咲いたら、何色の花になるか 気になるところです。

 

アシガラサンショウの種播き No422

雌雄別株であるサンショウの雄株に 両性花を着けて 疎に実が着く アシガラサンショウの種播きを、今年は10月8日にしました。9月23日に「サンショウの両性花から作られた実生株 No418」を投稿しましたが、今回は その実生株の種子を採取して 播いた様子と、アシガラサンショウの両性花についての考察を投稿します。

アシガラサンショウの種子の採取

今回 種子を採取した株は 花が咲き始めて 2年目になるアシガラサンショウの実生株で、実を着けるのは 今年が初めての株です。箱根山麓の南足柄市の山中で採取して作った 挿し木株を、アシガラサンショウの第1世代とすると、この実生株は アシガラサンショウの 第2世代の株と成ります。第1世代は 普通のサンショウから 突然変異で発生した実生株と思っていましたが、それから作られた第2世代の実生株は、自然界では ほぼ存在し得ない株なのです。サンショウの種子は 小鳥に食べられなかった物は、油脂層が付着している為 発芽出来ないのです。小鳥は 房状に沢山付いた赤い実は 良く目立つので 食べて、その内の消化されず 僅かに残った 油脂の付いていない種子は 発芽出来ますが、疎に着いた実は 目立たないので 食べられる事は殆ど無く、稀に食べられても 数が少ないので 消化残りは 出ないからです。

この株の樹高は 未だ1.2m程ですが、丁寧に調べて 種子を採取すると 全部で 15個も成っていました。前回の投稿には その1個が写っています。前回 投稿の際 見た時は ざっと見て、多くても 5個くらいだろうと見ていました。これ迄の アシガラサンショウの初年度の実の成り方は、多くても 2,3個なのですが この株は 初年度なのに 数がとても多く、親の第1世代の株の成り方と比べても 遥かに数が多く、又 サンショウの実生株の 実の成り始める樹齢としても 早い方で、第2世代の兄弟株の中でも 飛び抜けて多く実を着けた 特別な株の様に見えます。来年以降も 実を多く着ける状態が続けば この株は 特別な形質を持っていると 再確認出来ますので、この株に注目して 自然界には滅多に見られ無い 第3世代の株を作る作業を この株で続けるつもりです。それと並行して 念の為 来春にこの株の枝を 挿し木して、この形質を確保しておこうと思っています。

種子の前処理と種播き

サンショウの種子の油脂の除去は、シジミの貝殻を使っているのですが、今回は 種子の数が少ないので 貝殻の破片は使わずに、黒く薄い表皮を 爪で削り取り ティッシュペーパーで 油脂を拭き取った後に、石鹸水の中で 指で揉み洗いして 綺麗に油脂を取り除いて、それを一晩 水に浸けておきました。

f:id:tanemakijiisan:20261008211930j:image 油脂を取り除いた種子を 水に浸けた状態で、種子は全て しっかりと沈んでいます。サンショウの種子の場合は、1割程が浮いて来るのが普通です。この後 翌日に 種播きをしました。

播き床は 発泡スチロールの箱に、下に消し炭の層を敷き その上に 小粒の鹿沼土を入れます。そこに 3行 5列の15本の楊枝を刺して、その根元に種子を5mm程の深さに埋め込んで行きます。

f:id:tanemakijiisan:20261008213456j:image 楊枝が同色で 見難いですが、紙の上に有る1本は 良く見えています。この表面に 十分に乾燥させた小枝のチップを敷き、その上から網戸用のネットで覆って、他の植物の種子が紛れ込むのを 防いでおきます。ネットは 来年の3月中旬迄 掛けておきます。

アシガラサンショウの両性花の考察

これ迄 雌雄別株であるサンショウの雄株に着く両性花は、ただ漫然と 雌雄分化する前の両性花と同じ物で、雄花が突然変異で 先祖帰りして 過去の両性花が現れたと 決め付けていました。その考えに基づいて 古代の両性花を着けるサンショウを 再現してみようと、受粉方法等 色々工夫して 実生株作りを試みていましたが、古代株作りは 予想通りには進みませんでした。この過程で 過去と現代の両性花が 同じ物であると考えると、アシガラサンショウの実生株の形質の現れ方に、説明の付かない点が 幾つか有る事に気付きました。その最も気になる事は アシガラサンショウの第2世代に、雌株が未だ1本も現れていない事です。この両性花が 普通に受粉して 実を着けていれば、雌雄半々に現れる筈なのですが 雄株だけしか現れないのは、確率上 考えられない事です。次に気になる事は、第2世代の株の 花房の中に現れる両性花の比率と それが実になる比率が、親株より高くならない点です。通常 片親だけでも確実に特定の形質を持つ株の実生株は、その形質が 子に出て来る比率は 偶然出て来た親株よりは ずっと高くなるものです。一方 棘の付き方と 実の着き方が 株毎にバラバラなのも、何故この点だけは 普通に引き継がれているのか 気になりました。

両性花の仮説

そこで この疑問を解決する手段として、両性花について 次の様な仮説を考えてみました。その仮説の要旨は アシガラサンショウに現れる現代の両性花は、雌雄分化する前の 過去の両性花とは 外観は同じでも 全く違う物と言う ものです。その違いの内容は 次の様なものです。

雌雄分化する前の 過去の両性花は、自家受粉か他家受粉かは 分かりませんが 受粉して種子を作っていた筈です。これに対し アシガラサンショウの方は 一旦雌雄分化が完成した後の雄株に現れる 現代の両性花は、受粉/受精と言う 通常の有性生殖法を採らず、無性のクローン繁殖を基本にして 種子を作り、そこに枝変わりの仕組みも組み込んだ 無性生殖法を採っている、と言う 両者に違いが有ると 仮定してみたのです。そう考えると アシガラサンショウは、繁殖の基本が 雄株のクローンあれば 雌株は現れず 雄株だけが現れ、その株の形質を引き継いで 両性花を持つ株が多いのも 説明が付きます。又 株によって 棘の着き方に バラツキが出て、実の着き方にもバラツキが出ているのも、種子を作る際に 枝変わりと同じ現象を起こしながら 種子を作っているとすれば 説明が付きます。

これを 動物の進化の過程に例えると、海中に生息していた魚が 陸上に進出して 陸上動物になり、その一部が 又海中に戻って 生息する様になったら、その動物は 元の魚に戻るのかと言うと そうでは無く、外観は 魚と似ていても 魚とは 全く別物と言う事例に 似ています。

この仮説の生殖法は 交配による有性生殖や 単純な栄養繁殖の無性生殖に次ぐ、第3の複合型無性生殖法と言えるものです。だとすると アシガラサンショウは、サンショウの亜種や変種では無く フユザンショウと同様に 生殖法が異なる別種と言えそうです。フユザンショウは その詳細は 未だ解明されていませんが、雌株だけで 花粉を使わない無性生殖で 単純にクローン繁殖で 種子を作っているサンショウなのです。フユザンショウの雄株は その存在を確認されていませんが、反対に アシガラサンショウの雌株も その存在は 未だ確認されていません。フユザンショウは 花房の殆どが実になりますが、アシガラサンショウの方は 花房の一部が両性花になり、更にその一部だけが 実に成ります。つまり 雌しべの無性生殖する仕組みが 未だ完成されていない 種の形成途上の状態なのかも知れません。

仮説による見直し

もし この仮説に立つと、これ迄考えていた「アシガラサンショウの第1世代は、サンショウから突然変異で発生した」とする考えは 誤りで、「アシガラサンショウは 以前から 極僅かではあるが 自然界に細々と存在していた」と言う事になります。とすると 僅かの実でも 探し回って食べている小鳥も、自然界には 居るのかも知れません。アシガラサンショウの方も こっそりと 殻の硬さを少しだけ硬くしておき、食べられた時に消化され難くしてあるのかも知れません。ただ これが誤りであっても、アシガラサンショウの第2世代 第3世代の実生株を作って 調べる事には、その価値を減らすものでは 全く有りません。

両性花と人の関与

もし この仮説が正しいとすれば、では何故 今迄この存在に気付かれ無かったかと言うと、サンショウの発芽方法に 原因が有ると思います。先にも書きましたが アシガラサンショウは 小鳥に食べられる事が殆ど無いので、世代更新がされ難く 株がとても少なく 人には気付かれ難かったのでしょう。これがもし 人が積極的に関与して 種子を発芽させていたら、もっと早く この事が知られていたのでしょう。これに似た例に 種子の採れないキンモクセイが有りますが、こちらは人を惹き付ける 独特の香りを持っているので、人が積極的に関与して 栄養繁殖で増殖しているのですが、アシガラサンショウには 人にとっては 何の取り得も無いので、人が 種播きにも 栄養繁殖にも 全く関わって来なかったのです。

後書き

この仮説は 不思議な現象を説明する為に、無理やり作られた 突拍子も無い仮説に見えますが、現実に起きている不思議な現象は ねつ造では無く 事実ですので、全く可能性の無い仮説とは言えません。

この仮説を立証するには、時間は掛かりますが アシガラサンショウの世代更新を繰り返し、現れる形態を観察して行く方法が 最も現実的です。私には出来ませんが、最先端の遺伝子解析を使えば アシガラサンショウが、最近 突然変異で分化したものか かなり前に分化したものか、又 有性生殖か無性生殖かを 立証出来るのかも知れません。

 

 

 

スチューベンの苗 No421

去年 晩成種の葡萄のスチューベンの種播きをして、この4月20日に その発芽状況を「スチューベンを播いてみました No384」で投稿しましたが、その苗の今の状況を投稿します。

去年の晩秋に 30粒播いて、最終的に10本発芽しました。苗を植えたプランターの置いてあった場所が 強い日陰であったせいか、その後の成長が悪く 発芽した苗は 次々と枯れて行き、秋迄残ったのは 3本だけになってしまいました。でも こんな悪い環境でも 残っているのですから、この3本の株は とても樹勢が強いのかも知れません。

f:id:tanemakijiisan:20261005094947j:image 10月初めの状態で、成長はあまり良く有りません。本葉は もっと大きくなると思っていたのですが、残念ながら 小さなままでした。

小さいのですが 本葉の形を見ると、一般の葡萄に見られる 両側に深い切れ込みは 有りません。多分 株が未だ幼いから 葉に切れ込みが現れないのでは無く、スチューベンの持つ形質では無いかと思います。この葉の形は 野性のヤマブドウの葉に似ているので 予想通り 野性に近い葡萄と言う印象を強めました。もう一つ気になる点は ヤマブドウの株と比べると、もう秋の半ばなのに 葉に殆ど傷みが見られ無い事ですが、プランターの置かれた場所が 強い日陰の所なので、その影響かも知れません。

発芽したら 直ぐに日当たりの良い場所に移すつもりでいたのですが、中々適当な場所が見つからなかったので ついそのままになってしまいました。来年までに適当な場所が見つからなければ、このままプランターで 盆栽風に仕立てるしか有りません。でも プランターの方が、蔓を引き下げて 早く花を咲かせるのには移動が楽で、都合が良い面も有るのです。

栽培種の葡萄は ヤマブドウ等の野性のものと違って 雌雄別株になる事は無いので、美味しい実が採れるかどうかは別として 安心して実生株を作る事が出来ます。この実生株が どんな実を着けるのか とても気になっていて、親の株より もっと野生味の有る実が採れればと 期待しているのですが、実の成るのは 大分先の話ですので 私には ちょっと無理でしょう。

イスノキのキノコ No420

我が家のイスノキの根元に、白いキノコが沢山生えて来ました。今話題になっている あの白い毒キノコとは、形状と生え方から見て 違う様です。こんなに纏まって生えて来たのは、9月の長雨と低温が 発生の原因なのでしょうか。しかも 不思議な事に 生えて来たのは イスノキの根元だけで、イスノキでも 庭の他の場所でも このキノコを見たのは初めてです。

f:id:tanemakijiisan:20261001073829j:image 9月25日の最も大きくなった状態で、1週間程で 腐って消えました。生えた箇所は 根元の全周では無く、北西側だけなのです。

イスノキを植えた経緯

このイスノキは 三十数年前に、伊豆半島南端の神社の境内で出会った木の ヒコバエを挿し木したものです。イスノキは 南九州に見られる照葉樹林帯の代表的な樹木で、常緑広葉樹で 材質が日本の木の中では 最も硬い部類で、櫛やそろばん玉や工芸品の彫物に使われています。

私がイスノキで 気になったのは、宮崎県でイスノキの林を見た時 葉に大きな虫癭が 何個も付いてた状態を見た事です。久し振りに 伊豆でこのイスノキに出会ったので、この木を  直線距離で50km以上も離れた我が家に持って来たら、それでも虫癭は出来るのだろうかと 気になって、ヒコバエを1本採取して 庭に植えたのです。当地の周辺や伊豆の山中では、これ迄 イスノキを見掛けた事は 一度も有りませんでした。

虫癭の結果は 数年して木が少し大きくなると、1cm以下の小さな瘤が出来始めて 年と共に段々と大きくなって来て、今では 5cm以上にもなる 普通の大きさの虫癭が多く付く様になりました。虫がとんでも無く遠い所迄、花粉と同じくらいの量が 飛んでいる事になります。この事については、以前 イスノキの虫癭として 投稿しました。

キノコ菌とイスノキの関係

樹木とキノコの関係は、共生から敵対迄 色々有ります。共生関係で最も知られているのは アカマツとマツタケの関係で、他の植物が生え難い程の 痩せた土壌で、マツタケ菌が 僅かに有るミネラルを集めて アカマツに渡し、アカマツが 葉で作った マツタケ菌にとって必要な養分を マツタケ菌に渡しているのです。他にも 多くの植物と菌が、この様な共生関係を持っています。

真性菌と樹木で 致命的な敵対関係では、白紋羽菌や紫紋羽菌が有りますが、白紋羽菌は 普段は枯れ草や枯れ木に取り付くのですが、稀に生きたボタンやヤツデの様な 柔らかい根を持つ樹木の根に取り付いて 枯らしてしまう事が有り、紫紋羽菌は もっと過激で 柔らかい根だけで無く普通の樹木にも取り付いて 極短時間で 樹木を枯らしてしまいます。ただ これ等は稀にしか見られませんので、それ程心配する必要は有りません。

普通の腐朽菌は 自然界では とても重要な掃除屋さんの役割を持っていて、倒木や枯れ木を腐らせて ミネラル分を土に返しています。ただ 生きた木でも 傷が有ったり 太い枯れ枝の跡から、樹木の中心部の仮死状態で 骨格の役割をしている硬い部分に入り込んで、樹木を空洞化させ その後倒壊に至ります。腐朽菌は 直ぐ枯れる訳では無く 敵対関係では無いのですが、木と菌は 共生関係でも有りません。クスノキやコナラやクヌギは 不要になった小枝を落とす時、落とす前に 枝の根元に隔離層を作って 枝を落とした跡を綺麗にして、傷痕から腐朽菌が 幹に入り込まれるのを 防いでいます。更に クスノキは 材に防腐剤の働きをする「樟脳」が含まれているので、枯れ難く 大木になる例が 多く見られるのです。

このイスノキの場合

このキノコの付いたイスノキの状態を確認したのですが、葉が落ちたり 変色している様子は 見られませんので、このキノコ菌とは 今のところ敵対関係ではなさそうです。生えて来ている場所が 木の根元に限られているので、共生関係で有れば キノコは根の先の周辺に生える筈なので、共生関係でも無さそうです。普通の腐朽菌の一種なのでしょうか、でも この木に付く虫癭と同じ様に この木と特別な関係に有る菌で、虫癭より遥か遅れて 漸くこのイスノキに出会う事が出来たのかも知れません。来年も生えてくるか 木が弱って来ないかを、注意して 観察してみます。