イスノキの虫癭

20年以上前に イスノキを挿し木して 庭に植えました。そのままにしておくと 直ぐに枝が混み合うので、時々太い枝を間引いています。今年は下の方の枝が重なって来て、その部分の枝を伐採し 枝の虫癭を調べましたので、その様子を投稿します。

イスノキ

イスノキは 照葉樹林の主要な構成木で、宮崎県などの照葉樹林帯では 多数自生しているのが見られます。材は緻密でとても堅いので、櫛や算盤玉や小物の彫刻品等の木工品に良く使われています。材の堅さ以外に この木には、独特な虫癭が出来ると言う 珍しい特徴があります。私はこの材にも興味は有りましたが、それよりも この木に付く その独特な虫癭に、とても興味を持ちました。虫癭の大きな物は 7,8cmの歪な球形で、葉を変形させた物です。宮崎県の照葉樹林の中の 観光地の吊り橋から、周りの木に 沢山の虫癭が 果実がなる様に、枝にぶら下がっているのが見られました。宮崎県では 昔の子供達が この虫癭を使って、「ヒョン笛」と言う笛の玩具を作って 遊んでいたそうです。

虫癭の確認

我が家の木は、南伊豆で 枝を採取し 挿し木した物ですが、我が家は 採取場所から 直線距離で100km程離れていて、その中間では イスノキは見ていません。これだけ離れていても 虫癭を作る虫は、この木に取り付くのだろうか 調べてみたかったのです。植えて数年経つと、僅かですが 葉に小さな虫癭が出来る様になりました。更に年が経つと その数が増えて来て、虫癭もだんだん大きな物が出来る様になって来ました。やはり こんなに離れていても、何処からか 虫はやって来ている様です。10数年して その状態は、ほぼ安定して来た様です。この虫癭を作る虫は、どうやら1種類ではなさそうで、少なくとも3種類は居そうです。でも それらはどんな虫なんでしょうか、気になります。一番多いのは 葉の中央に1cm程の瘤を作る虫癭で、その次に多いのは 芽の所に1から2cm程の丸い薄緑色の艶のある虫癭で、最も少ないのは 葉の形も残らない程の大きさの大きな虫癭です。もしかすると これらは同じ虫で、大きい虫癭が雌で 小さい虫癭が雄で、何かの条件が特別良かった者が 雌となる、という事も考えられます。

f:id:tanemakijiisan:20231020110527j:image下の方の 小さな虫癭は、芽を変形させた物で、この形の虫癭は 今まで大きい方にばかりに 気を取られていて、気付きませんでした。この形態の虫癭で 他の植物で良く見かけるのは、クリに付くクリタマバチの虫癭で、クリの新芽から作る虫癭です。外観は果実の様に見える 1cm程の赤い綺麗な虫癭ですが、栗の栽培農家の方にとっては 農薬の効かない厄介な害虫です。

写真の上の方が、良く目立つ普通の大きな虫癭です。今迄 この大きさの物は、枯れて茶色の物が落ちているのしか見ていなかったので、緑色の生の物は初めて見ました。

f:id:tanemakijiisan:20231020110439j:imageそこで 大きい虫癭の中が、どうなっているのか 調べてみました。カッターナイフで割ろうとしたのですが、堅くて刃が差し込めず 剪定鋏で割ってみました。割れた瞬間に 中から何か飛び出して来た様に見えたのですが、びっくりして 掴んでいた虫癭を地面に落としてしまいました。慌ててその周囲の地面を探したのですが、何も見つけられませんでした。どんな虫だったのでしょうか、また次回の楽しみにしておきます。

虫癭の付く理由

このイスノキには、何故こんなに虫癭が出来るのでしょうか。虫の側の利点は、外敵から安心して棲めるので 良く分かります。では イスノキ側には どんな利益が有るのでしょうか。この虫癭の出来る様子を見ていると、木の側には この虫が付くのを防ごうとする意思は見られず、逆に 虫が虫癭を作り易い様にして 虫を誘引している様に見えます。普通この様な理由を考える場合は、逆にそれが無かった状態を考えると 分かり易いのです。でも 虫が来ずに 虫癭が出来なかった 初めの数年間に、虫癭が無い事による不都合は 特に無い様に見えました。でも 気付かないのですが、虫が何かの植物を守る分泌物でも出しているのでしょうか。今後その点を 注意深く観察して行こうと思います。