忘れた頃に実を付けた柑橘の果実の評価 1回目

去年の11月1日に「忘れた頃に実を付けた柑橘」と投稿した実生の木は、果実が黄色く色付くと それ迄枝の中で緑色で 気付かなかった実が 更に5個見付かり、全部で7個稔っている事が分かりました。今年は 柑橘類全般に大豊作になっていますので、この株もその影響を受けて 実生にしては早く実を付けたのではと思います。3月4日に その中の1個が 落ちましたので、拾って良く見ると 一部が傷ついて 小さい穴が開き、4分の1程が柔らかくなって 腐り始めていました。虫に喰われた様子も無いので、側の大きなトゲが 実に刺さって傷付いたのでしょう。実が熟して落ちたのでは無い事が分かりました。植物としては 種子が発芽能力を持っていれば 熟したと言えるのですが、ただ 果物としては 味覚的に完熟していると言うには まだ早い様に感じます。

果実の大きさは 夏蜜柑くらいで、形は 先端が夏蜜柑と同様に平らで 根元の方が夏蜜柑より少し尖っています。皮の硬さは 夏蜜柑より少し柔らかで薄く、何とか素手で剥けるくらいでした。この落ちた実では 味覚の評価は出来ないと思いましたが、食べずに捨ててしまうのは 勿体無いので、取り敢えず どんな味がする実なのか、傷んでいない4分の3を食べてみました。

食べてみて 分かった点は次の通りです。

・酸味は 殆ど感じなかった。甘夏よりも酸味は少ない様に感じた。

・味に特徴が無い(コクが無い)様に感じた。ただ ハッサクよりは 有る様に感じた。

・苦味や渋味やエグ味等の食べ難い味は無かった。

・味に未熟さは 無かった。

・水分や歯触りは 適度であった。

・後味がさっぱりしている様に感じた。

・種子の数と大きさは 夏蜜柑と同じくらいだった。

意外だったのは 実生の果物としては 味に致命的な欠陥が無く、全く抵抗無く食べられる事でした。また この時期でも既に未熟感が無い事も意外でしたが、この未熟感が無いのは 一部が傷んで 追熟機能が働いた為とも考えられます。そこで 翌日にもう1個採取して食べて この点を確認してみました。成っている実の内 最も未熟に見える物を選んで、1個採取しました。もし その実が もう食べられる物であれば、他の実も全て食べられると判定出来るからです。

f:id:tanemakijiisan:20240305150439j:imagef:id:tanemakijiisan:20240305150458j:image後に採取した方の実です。その味については、先に食べた傷んだ物に比べると、味にまだ少し未熟感が感じられる事を除けば、先に食べた実と同じでした。やはり前の実は 痛んだ為に 少し追熟していたのでしょう、4月まで収穫を待てば この未熟さは消えると思いますので、最終の評価は 4月にもう一度残りを食べて 確認してみようと思います。多分この蜜柑の収穫期は4月で、その時には 味にもう少し甘味が出て来るかも知れません。でも 3月に収穫しても 暫く保管してから食べるのであれば、未熟感も消え 食べ頃になっていると思います。

現時点での果実としての評価は、総合的に見て 果物としての商品価値が、辛うじて有る様に思えます。果物の実生は過去に色々やりましたが、今回の様な まともな実が出来たのは 実生の生産木の多いウメだけで、後は全て物になる株は出来ませんでした。今回は 宝くじで 1等1億円とは行きませんが、ちょっとした額の賞金を当てた気分で 何かとても嬉しくなりました。欲を言えば 味にもう少し甘味とコクが有れば、申し分無いのですが 4月にそうなっている事を期待します。

最終では有りませんが この様な評価が出ましたので、早速この木の トゲ外しを 暇を見て 少しづつする事にしました。今迄は 実の事を考えていなかったので、通路に面した枝のトゲだけを取り除いていました。これからは この木の色々な場所の実を収穫する事を考えて、作業の安全の為に 出来る限りのトゲを取り除いておかなくてはなりません。トゲは一度全部を取り除いておけば、その次の年からは 新しく伸びた枝のトゲだけを取れば済みます。柑橘類の大きいトゲは、長さはそれ以上伸びませんが 年と共に太って丈夫になって来るので、そのまま付けて置くと 作業の時 刺されて 大怪我をしてしまいます。実生株は この傾向が特に強く、過去にナツミカンの実生株で 15cmを超える長さの大きなトゲが現れた経験が有りました。この株は それ程大きなトゲは無さそうです。

もし この蜜柑が本当に商品価値の有る物であれば、この株をこの蜜柑の原木として保存し 増殖をしておこうと考えています。そこで 適期ではありませんが、挿し木をしておく事にしました。株の中心部に 2m程に伸びて 小枝を付けた徒長枝が有ったので、それを切り取って 挿し穂を20本作りました。上手く行けば 新芽の時期に間に合います。挿し木の成否は、活着率が5割と考えていますが、もし駄目ならば 6月の新葉が固まった頃に、もう一度挿し木をしてみます。

生産木を作るのであれば 接木で苗木を作るのが一般的で 問題も無いのですが、原木の保存株を作るのであれば 可能な限り挿し木で苗木を作るのが良いのです。接木は理論的には 台木の形質は 穂木が育った木には移らない事になっていますが、現実には 台木の形質が穂木の形質に入り込んでしまう現象が起こる事が有るのです。私は以前ウメの接木で、その事象を実際に経験しました。もし 台木に都合の悪い形質が有り それが混ざってしまえば、原木の良い形質を 忠実に保存する事は出来ません。

この時期に 挿し木してみれば、この木の挿し木の難易度が判明します。4月に残りの実を試食した際に、その味と挿し木の結果を また投稿します。