立春寒波に耐える梅の実とヤマユリ

この冬に 関東には2月5日から6日にかけて、南岸低気圧による大雪が降りました。でも 最も寒い時期の寒波としては、例年よりもう一つ寒さが弱い様に感じました。2,3cm積もった雪も、当地では翌朝には すっかり寒く溶けていました。やはり 温暖化の影響なのでしょうか。その雪が溶けた後の 庭を様子を投稿します。

花後の冬至

1月上旬に満開になった冬至梅は、立春を迎える頃には 花もすっかり終わっていて、今回の雪も 翌朝には 花がらや枝には 全く雪は残っていませんでした。この冬至梅は とても珍しい株で、非常に自家受粉性が強く、花の時期に周りに 咲いているウメが無くても 良く実を付けます。果樹は 一般的に 早く採れる品種の方が 高く売れるので 自然と早い品種に移行するのですが、ウメは加工食品ですので 早く収穫しても 価格はそれ程上がりません。反対に 早く花が咲くと 冬の低温で、受粉不良と出来た子房が凍って不作になりますから、花が早く咲く冬至梅は 実梅としては 全く使われなかったのです。でも ここ50年程の温暖化による冬の気温の変化を見ていると、関東以西の暖地の冬の低温の程度ならば、ウメの受粉や花後の子房は その低温に何とか耐えられる様になったのではと思います。

10年くらい前から 良く実を付ける様になった我が家の実生の冬至梅は、花後の子房が 大きく成り始める時期が、冬の最も寒い時期に重なるのです。でもこの株は これ迄に何回か 花後に雪が積もった事が有りましたが、子房が凍って落ちた事は有りませんでした。

f:id:tanemakijiisan:20240207115811j:image雪の降った翌日の2月7日の様子で、雄しべの間から もう子房が膨らみ出しているのが見えます。冷害を受けた様子は 全く見られません。

早咲きのウメに限らず 普通のウメも、最近は開花時期が早くなって来ました。花の時期が早くなると満開の時期が、最も寒い時期になってしまっています。でも 4,50年前迄は ウメが冷害に遭って 不作になったと言う話は良く聞きましたが、最近はその様な話は あまり聞かなくなりました。とすると 真冬の気温が、上がって来たからなのでしょうか。

ヤマユリの木子の出葉

1月下旬になって ヤマユリの木子が、小さな1枚葉を出して来ました。因みに 1月に投稿した 秋に葉を出したヤマユリの種子の発芽苗の1枚葉も、今回の雪が積もっても 全く変化は有りませんでした。葉を出した木子の親株は、耐暑性の強い株です。もしかすると ユリの耐暑性と耐寒性は関連が有り、耐暑性が高くなると 耐寒性も高くなるのかも知れません。

f:id:tanemakijiisan:20240207174344j:image葉の直ぐ左の枯れた茎が親株で、中央の1枚葉は その木子です。この他にも もう1本 別の鉢にこの様な木子の1枚葉が見られます。木子の1枚葉の出葉は、茎立ち株の芽出しより早くなるのが普通なのですが、1枚葉は 通常3月中旬で 1月中に葉を出したのを見たのは 、20年以上ユリを栽培していますが これが初めてです。しかも 今のところ この葉は、寒さや雪の影響を全く受けていません。多分 この葉はこのままで冬を越し、春になったら 2枚目の大きな葉を出して来ると思います。実生株だけでは無く 既存株の木子にも、温暖化の影響を受けて 形質が変化する株が出て来ているのでしょうか。もしこの株が 来年もこの形質を現したとすれば、この木子株は 形質を変化させている事になります。樹木で極稀に見られる「枝変わり」と呼ばれる現象と同じです。樹木が新しい枝を出す為の新芽を作った時、その新芽が突然変異で その形質が元の株と違うものが出来てしまい、その芽が伸びて 伸びた部分は 全て変化した形質になり、その枝全体が まるで元の株とは違う 枝接ぎの様になります。果樹や観賞用樹木では、この変化した枝を見つけると それを接木や挿し木によって増やし、新しい品種として商品化しているのです。この現象は 人が一生で一度出会うかどうかの頻度で、もし 環境や生理的に不都合な形質であれば、枝は伸びずに 人目に触れる前に枯れてしまう枝変わりが多いのでしょう。木子の方は 草の枝変わりに相当する現象で、翌年には 別の株として分離独立して 増殖します。

これに比べ 実生による形質の変化は、親株と同じ形質を持った株は ほんの僅かで、親株と似てはいても 千差万別の形質を持ちます。この変化の中に 温暖化に適している変化が有れば、温暖化を生き残る有力な手段になります。

ユリの木子に関しては、変化の発生頻度は 樹木の枝変わりより 遥かに高いのではと 感じています。これもユリの生き残り戦略なのでしょう。

このユリの木子を 大事に育てて どの様な株になるのか見守りたいと思います。