冬至梅の開花

今年もようやく本格的な寒さが来て、庭の冬至梅が 7,8輪咲き始めています。

開花期間

桜は開花して1週間程して満開になるのですが、梅は最初に ちらほら咲き始めてから 2,3週間しないと満開になりません。満開になった時には 始めに咲いた花はもう散っていて、全部咲き終わるまで 1ヶ月以上かかります。梅はその香りや花の鮮やかさからも分かる通り、虫の少ない寒中に咲いていても 虫媒花なのです。さらに 梅は基本的には 他家受粉なのです。ですから 虫の特に少ない寒中にあっても、どうしても虫に来てもらわなくてはならないのです。その為 長期間に亘って花を咲かせて、虫が来て受粉してくれるのを待っているのでしょう。また ウメはウグイス等の小鳥にとっても、貴重な蜜源になっています。百花繚乱の春爛漫の時期は、植物にとって 自分の所に虫や小鳥を惹き付けるのは、花の色や形や香りや蜜を工夫しなければならず 大変な事なのです。ウメはこの大変な競争を避けて、敢えてこの厳しい寒い時期に 花を咲かせる事を選んだ植物なのです。たとえ虫や小鳥が少なくても それを独り占めに出来るからです。

このウメの形質

ウメの場合は 早咲き性の品種を、冬至の頃に咲き出すので「冬至梅」と呼んでいます。このウメも その早咲きで、今年は例年より少し早く12月10日ぐらいに咲き始めました。でも全体的には まだ蕾が固く小さなものや 少し膨らんだものが殆どです。このウメは 母親が強い青梅性の株で、父親が観賞用の一重の白梅の間に出来た実生株です。でも その両親には全く「早咲き性」は見られません。この早咲き性の他 両親には全く見られない、ウメには珍しい 強い「自家受粉性」を持っています。その他に 親から引き継いだ形質として、母親からの 弱い「青梅性」を持っています。早咲きの為 種子は5月上旬には熟しているのですが、実が6月末まで緑色で 7月になってようやく黄色に色付いて落ちます。この様に 早く実を成らせる「早咲き性」と、果肉の成熟を遅くする「青梅性」の 正反対の形質を併せ持つ株は、とても珍しいものと言えます。

形質の出現

このウメの様に実生株に 両親には全く見られない形質が現れたり、両親の形質が殆ど現れない現象は、殆どの果樹に良く見られる 一般的な現象なのです。果物は 果肉は食べても その種子を播く人は殆ど無く、播いても種子が発芽抑制機能を備えているものが多い為、一般の人が この様な現象を目にする事は殆ど無いのです。でも逆に この何が現れるか分からないと言うのが、実生株を育てる醍醐味と言えるでしょう。野生の樹木は 実生でもこれ程の変化は現れません。果樹や園芸種の樹木は、人間が不自然に色々な種を掛け合わせて作り出した植物ですので、潜在的に含まれている色々な形質が 実生株に現れて来るのです。

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疎に咲き始めた冬至梅の花