ヤマユリの中咲き株の開花

今年も ヤマユリのベニスジ系の最初の株が、7月3日に開花しました。去年の中咲きの最初の開花より、3日早く咲きました。その株は 去年の中咲きの最初の株とは別の株で、今年から咲き出した株です。中咲きの株は 全てベニスジ系で、元は1つのベニスジの株から 木子で増えて、その木子を 毎年新たに用意した鉢に 分けて来たものです。初めの方に分けた株は、もう 5,6輪の花を付ける大きさになっています。中咲きで最初に咲き始める株は、決まってその年に 初めて花を咲かせる、1輪咲きの株です。つまり花の数が増えて来ると、開花時期が少し遅れて来る様です。これ等の中咲き株の大元の株は、横須賀市の民家に現れたベニスジを 研究者が一部を採取し 培養した株で、10数年前に その研究者から その1つを分けて頂いた株です。その株の花に 耐暑性を持った 他のヤマユリの花粉を受粉し、出来た種子を 側に有った複数の鉢に播いて 発芽した株です。その元の培養株は 耐暑性が弱く、2年程で消えてしまいました。その時発芽した株の中で、ベニスジ系で 耐暑性の強い株は、この親株1つだけだったのでしょう。

f:id:tanemakijiisan:20230703211701j:image今年の中咲きの最初のベニスジです。23年7月3日開花

木子の形質の変化

早咲き,中咲き,遅咲きの各グループは、それぞれ 元は1つの株で 木子で増えたので、グループ内の株は 全てクローンになります。ですから グループ内で受粉しても 種子は出来ません。

クローンであれば 全く同質の個体になると考えられていますが、受粉は出来なくても 花の色や葉や耐暑性が、僅かに異なって来る様に見えます。樹木等に現れる「枝変わり」と呼ばれる現象に当たるものです。でも 枝変わりは、どの樹種でも滅多に現れません。芋類も 木子の様な増え方をしますが、形質は変化せず 安定して引き継がれている様です。ただ 違った形質の株が現れても、それが有用でなかったり 興味が無ければ、無視して捨てられて 報告される事は無いでしょう。

ベニスジは 野性のヤマユリに偶に出現する形質で、私も今迄各地の山野で 時々見掛けました。其れ等の株の赤みの程度は、濃いのから薄いの迄 色々な株が有ります。そこで このベニスジの色の着き具合が、もし株によって固定されていて、年によっても変化が無ければ、形質の変化の目安に使えます。偶然このベニスジの形質が 変異を調べるのに使えそうだとなったのですが、ただそれには 管理と記録が大変なので、もう少し様子を見ようと思います。

また耐暑性についても 株によってかなり差が出ている様に見えます。その原因が株の固有の軽質か、鉢の状態等のその他の環境の違いによるものか調べる必要が有りそうです。

中咲きの開花状況

f:id:tanemakijiisan:20230704211734j:image花の中に1輪 異形の花が有るのに気付きました。雌しべの支柱が 3本に裂けているのです。柱頭部はくっ付いています。正常な鞘の種子が出来るのかを調べる為に、受粉をしておきました。続いて咲いたベニスジを注意深く観察してみると、これ程はっきりしていませんが 柱頭の直ぐ下が 少しだけ3本に裂けているのが 何本か有りました。どうやらこのベニスジの固有の形質の様です。

f:id:tanemakijiisan:20230707170116j:image去年の晩秋に 初めて緩い斜面に直植えした株です。直径4cm程の球根で、直植えした40個程の球根の中で 1つだけ特に大きい物でした。これ等の球根は、プラ鉢が壊れて 植え替えした2鉢の株に出来た木子で、その他は 花を付けない小さい株ですが、20本程が消えずに残っています。

ヤマユリの鉢植えでなく 直植えする場合の注意点は、植え付ける時 必ず球根の下の根は 付け根から完全に切除する、植え付け穴は 球根より少し大きめで 深さは球根の2〜3倍で、その深さ以上に土を掘って 土を柔らかくしてはいけません。肥料や消毒は してはいけません。株の周りの植物は、引き抜かず 根を残して 地上部を刈り取ります。肥沃な土壌は 栽培には適しません。

f:id:tanemakijiisan:20230707174926j:image中咲きの鉢の全体の状態です。今年は 中咲きの株は、9株が花を付けました。半分程に受粉して種子を採る予定です。