今年のヤマブドウの実験

今年は ヤマブドウも 花が遅れていますが、ようやく花が咲く時期になりました。今年は ヤマブドウについて 2つの実験をしています。その一つは この花を付ける様になったヤマブドウの雌株で「種無し葡萄」が出来るかで、もう一つは 自家受粉の種子が 僅かでも採れるかを確かめる事です。

f:id:tanemakijiisan:20240410173740j:imageヤマブドウの蕾 4月10日の状態で、もっと大きい物や ようやく見えて来た物と 成長はバラバラですが、全体的には まだこれより小さい蕾の方が多かったです。

種無し葡萄

今花を付けているヤマブドウの雌株は、去年迄の観察から 普通よりずっと小さな果実(ショットベリー)を、沢山付ける株である事が分かりました。このショットベリーの生成には、雄株の花粉が関係しているのか 気になります。また このショットベリーは そのまま黒く熟す迄付いていて、美味しくは有りませんが食べられます。

f:id:tanemakijiisan:20240414205832j:image去年の5月25日の一房で、右端に有る一つの大きい実が 普通の実で、小さい沢山付いている実が ショットベリーです。

そこで もしかしたら ジベレリン処理をすれば、このショットベリーも大きくする事が出来、「種無し葡萄」が出来るのではと 考えました。早速専門家に相談してみると、ショットベリーについては「栽培種の葡萄には偶に見られるが、ヤマブドウでは見た事は無い」との事でした。また ヤマブドウジベレリン処理については 「以前山形大の先生が試した報告が有るので、それを参考にしてみたら良いでしょう」と助言されました。早速それを読んでみましたが、ショットベリーとジベレリン処理の関連については 書かれていませんでしたので、直接本人に ジベレリンとショットベリーの関連について メールで問い合わせたところ、次の様な助言を頂きました。「ヤマブドウは 栽培種のブドウと違い 株毎の形質の違いが大きく、その株でジベレリン処理をしてみないと分かりません。それ故 そのショットベリーの出来る株で 試してみる価値は有ると思います。私の目的は ヤマブドウで「干し葡萄」を作る事でしたが、期待した程の大きな実は得られませんでした。」とのご返事でした。

今回の実験の目的は、このショットベリーを付ける株が ジベレリンに対する感受性を どれくらい持っているかを調べる事なので、沢山の房について試す必要は有りません。多くても 20房も試せば十分です。処理の仕方は 経験が無く良く知りませんので、溶液に房を漬けるよりは 溶液を筆で 房に塗り付ける方法が簡単なので、そのやり方で やってみました。塗る時期は 開花の10日前と 開花10日後の2回です。溶液の濃度は 栽培種のデラウェアの濃度を参考に、100ppmとしました。溶液を塗った房には、房の根元に紐を結んで置きます。紐が2本結ばれていれば 処理済みとなり、収穫時迄残しておきます。

f:id:tanemakijiisan:20240410174455j:imageジベレリンと処理に使った道具です。

自家受粉で種子が採れるか

ヤマブドウは 栽培種の葡萄と違い、雌雄別株の風媒花の植物です。ですから 実を採るには 雌株の近くに雄株が必要ですが、我が家の場合 は、雄株は 雌株から少し離れた家の裏に 植えて有りました。でも 去年の暮れに その雄株を伐採して、現在残っているのは まだ花の咲かない 数本の取り木した 雄株の枝だけです。ヤマブドウの自家受粉についての実験は、雄株の花粉が無くても 自家受粉で実が付くか、一昨年に数ヶ所と去年に20ヶ所の 雌株の花房に 袋を被せてみたのですが、袋掛けは 半分くらいが上手く行かず、上手く行った半分の房は 実は1つも成りませんでした。袋を被せなかった房は 疎ですが 実を付け、去年は 全部で150粒くらいは採れました。ただ その全ての実が、その雄株の花粉を受粉して 結実したものとは 断定出来ません。そこで 雄株の花粉では無く 雌株の自家受粉をして実を付けた物が、本当に無いのか 調べる事にしたのです。

ヤマブドウの枝の剪定は 野生植物なので 原則としてしませんので、今年は殆どの芽に蕾が付いて 全部で300以上の花が付いていると思われ、その花房の全部に袋を被せるのは 到底出来ません。そこで 花粉を出す雄花を無くしてしまう方が 楽で且つ確実なので、雄株を伐採する事にしたのです。幸い 近所には葡萄を栽培しているお宅も無く 野性のエビヅルも見かけませんので、この伐採で 自家受粉の実が付くかが 分かると思います。

雌株の雌花には 雌しべの周りに 雄しべが有りますが、その雄しべは 飾りで花粉を作りません。この雌株に咲いた雌花を良く調べると 付いている雄しべは 全て短くて湾曲していますので、この形の雄しべは 稔性の有る花粉は作らないそうです。でも 花房が300以上で 1房に30以上の花が付き 1輪に5本の雄しべが有れば、雄しべの総数は5万個以上になります。その中に 稔性を持った花粉を作る葯が出現する確率は、5,6個で良いのであれば 十分に有ると考えられます。因みに 以前 ヒイラギの雄木の太い枝を伐採した時、葉を全て外して調べたところ 2個の実を見付けました。このヤマブドウが 5,6個の実を付ける確率の方が それより遥かに低いのですから、数個の実が採れても 不思議では有りません。要は 母数になる花の数が十分かどうかと、その全てを確実に調べられるかの問題だと思います。葉が枯れてからなら、高い場所ではないので 全ての枝を調べるのは 難しくは有りません。もし 果実が 5,6粒でも採れれば、それを播くと これ迄の発芽率で有れば、多分その実生株が得られると思います。その実生株には 自家受粉する両性花を付ける確率が高くなるものと思われますので、それを調べたいのです。それこそが 今回の実験の目的なのです。