ヤマブドウの収穫

今年は 我が家のヤマブドウの雌株の1株が、本格的に花を付ける様になった最初の年です。当地で ヤマブドウが栽培出来る様になったのは、近年 温暖化で 致命的な被害を与える害虫が姿を消したからです。ヤマブドウ自身は、温暖化には かなり強い様です。ですから 当地の様な平地の暖地での ヤマブドウの栽培データは、普通の人は 持ち合わせていませんので、私にとって 知識と経験上も 果実の収穫は 今回が初めての事なります。

我々は狩猟採集生活から離れて 長い年数が経っていますので、一般の人が 身近で扱う植物は、殆どが園芸植物です。その為 一般の人は 野性植物に、株毎に 強い個性(個体差)が有る事を 認識していません。店頭に並べられた野菜や果物からは、徹底的に個体差が排除されているからです。野生植物の果実には、その個体差は 強く有ります。例えば 山や植物の案内書等には、「サルナシは 晩秋になると 柔らかくて甘い実が、沢山採れます」と書かれています。でも 私の経験では、果物として 何とか美味しいと言えるのは、20株に1株 有るか無いかです。ヤマブドウも同様です。今回 実の成り始めた株も、生食用か葡萄酒用かによって違いますが、多分 使い物にならない可能性の方が ずっと高いと思います。でも 逆にその可能性は低くても、どの研究者も まだ見つけていない 稀有な形質を持った 株である可能性も有るのです。これを見つけるのが、野生植物を扱う醍醐味の一つです。低いと言っても その可能性は、宝くじで 100万円が当たる確率よりも、ずっと高いのでは と思っています。宝くじも 買わなければ、当たりません。野生植物も 種子を播いたり 枝を採取して 育ててみなければ、良い株は 見つかりません。ですから 残る2株の雌株も含めて、淡い期待を込めて 育てて見守っているのです。

この株の着果率は、房によって かなりの差がある様です。雄株に近い位置の方が、着果率は 良いのではと見ていたのですが、殆ど関係無い様です。花粉が付かない様に 袋を掛けた房は、ショットベリーだけで 普通の実は付きませんでした。花の良く付く結果枝は、古い枝で 総数80~100房程の花が着き、前年に徒長した蔓には 花は付きませんでした。

ヤマブドウの熟期は、自生地では 10月下旬から11月上旬なので、当地でもその頃かと考えていたのですが、9月中旬には もう熟して来ました。熟期は 房によって、かなりバラツキが見られます。ショットベリーの方は 7月には熟していました。ヤマブドウの熟期は 開花からの日数で決まる様で、この株の開花は 5月初めなので 4ヶ月程で熟す様です。この熟期を決めるやり方は、ミヤママタタビも同様です。ただ 同じ仲間のデワノマタタビでは、開花からの期間でなく 日照や気温によって決まる様です。

f:id:tanemakijiisan:20230916150225j:image上端から2つ目の しっかり実の着いている房は、雄株から最も離れた所の房でした。全体的に 粒の大きさは、少し小さめです。

f:id:tanemakijiisan:20230918094811j:imageこれで1株分で、収量としては 着果率が悪く とても少ないのですが、本格的に成り始めた初年度としては、予想よりも多めでした。実生の果樹は 一般的に 成り始めて 数年経たないと、本格的に沢山実を付ける事は無いのです。この木は 挿し木株ですが、数年経つと もう少し大きな実を もっと沢山 付けるでしょう。ただ 来年から 3,4年は、雄株が無くなりますので 暫くは 実は お休みです。その間に この雌株に 本当に両性花は無いのかを 調べる事にしています。この雌株の花の雄しべは 湾曲した短いものですので、稔性の有る雄しべを持った 両性花が有るとしても 極僅かの筈で、注意深く調べないと見つからないと思います。ついでに ショットベリーとジベレリンの感受性の関連についても、調べておこうと思っています。

この実を 熟した物から食べてみて、味を調べてみようと思っています。今のところの味の感想は、ほんのり甘さを感じる程度で、酸味の方は思っていた程強くは無く、苦味やエグ味は有りません。ただ 実が小さく 種子が多いので、満足感はもう一つです。問題はその後で、採れた種子をどうしようかと 悩んでいます。普通の店で買った葡萄ならば、躊躇なく種子は ゴミとして処分するのですが、自分で本格的に栽培出来た 初めてのヤマブドウなので、そう簡単には 割り切れません。一昨年 去年とほんの数える程の実が採れて、僅かなので 全て丁寧に 播いておきました。すると 発芽率はとても高く 7,8割にもなりました。この率からすると 今年 もし全部種子を播いたら、とんでもない数の苗が出来てしまいます。まだ先に出来た苗の行き先も決まっていないのに、そんなに苗が出来てしまったらと思うと、どうしようかと 悩んでいます。取り敢えず 播いて発芽率を調べてから、苗の処分を考えようと 問題の先送りにします。