デワノマタタビの収穫

今年もデワノマタタビの実が成りましたので、10月30日に収穫しました。今年もコロナの影響で 冬季の剪定以外 何も手入れしなかったのですが、その割には良く成っていました。

追熟作業

デワノマタタビも普通の野生の木の実と同じ様に、全部同時に熟さずに 3週間ほどかけて 少しづつ熟して行きます。一般に野生植物は 果実を動物に食べてもらい 種子を遠くに播いてもらう為に、一つの個体に大量に食べさすよりも 多数の個体に 何度にも分けて食べさす方が、広い範囲に効率的に播けるので この様な熟し方をするのです。なお マタタビ科の果実に 蛋白質分解酵素が多く含まれるのも、沢山食べると 胃壁を刺激して、一つの個体に沢山食べさせない様にする為なのでしょう。熟すと 柔らかくなり 外観は 緑色が少し濃くなって来ます。収穫は 熟した実を選んで採っていては 何度も収穫作業をしなければならず大変なので、数個が熟して落ちたら 全部を収穫してしまい、それを追熟させてから使います。取り入れた実は、屋内で新聞紙を広げて、そこに実が重ならない様に広げて追熟させます。木から外して追熟させると、10日程で全てが熟します。

ジャム作り

熟した実は 生食も出来ますが 甘味が少なく淡白なので、我が家ではジャムにして食べています。大量に採れた時は 毎日追熟した物を選んで ジャム作りをしますが、少ない時は 全部追熟するのを待って 一度に作ります。マタタビ科の実は ペクチンが含まれていないので、煮上がる直前に 砂糖に混ぜた粉末ペクチンを加えると、トロみが付いて食べ易くなります。好みにもよりますが、煮込みは 強火で短時間で素早く仕上げる方が、風味が残って美味しいと思いますが、焦げ付かない様に 常に休まずかき混ぜるのが とても大変です。なお ジャム作りの詳細は 去年の投稿を参照して下さい。

単為結果

受粉作業をしない年は、この実の中に明らかに普通の物より大きい実が 必ず数個は現れます。これは何処か遠くに在るキューウィの雄株の花粉を、蜂などの虫が 稀に運んで来て受粉して出来た実です。その雄株が植えてある庭か畑が もっと近ければ、殆どが受粉された実になる筈ですが、かなり遠いので その花粉を付けた虫は 稀にしか飛んで来ないのでしょう。大きくならないその他の普通の実は、受粉されずに稔った実で 中に種子は入っていません。受粉しなくても実が成るので、花の実付きはとても良いのですが、実の大きさは 木の手入れ次第です。デワノマタタビは、マタタビ科の中で 唯一受粉しなくても実が成る野生植物なのです。受粉は 同種でなくても、キューウィ等のマタタビ科の花粉でも良く出来ます。コロナが流行る前は キューウィの花粉をもらって来て、受粉作業をしていました。受粉しても 数が多過ぎて 実を2割以下に抑えないと 大きい実は採れませんので、摘果作業が必要です。

種間雑種

キューウィの花粉を受粉して出来た果実の種子を播いてみたのですが、全く発芽はしませんでした。多分種子が種間雑種なので 発芽能力を持っていないのだろうと思っていました。この受粉作業をしない時に 僅かに採れる大きな実も、この地域にあるマタタビ科の植物は キューウィしか考えられませんので、その種子はキューウィとの種間雑種だと思います。

ミヤママタタビの低温処理

以前 ミヤママタタビの雌株に、キューウィの花粉を掛けてみたら 沢山の実が成ったので、その実の種子を播いたところ 全く発芽しませんでした。これは種子が 種間雑種になっている為だろうと思っていました。ところが 一昨年 その種子を、採取後 3週間冷凍し 1週間冷蔵してから 播いてみたところ、翌春に数株が発芽しました。念の為 去年もう一度同じ処理をして播く 確認実験をしてみると、やはり今春に数株が発芽しました。ミヤママタタビマタタビ科の中で 最も寒冷な厳しい環境に自生する植物なので、この低温処理をしてみたのです。これで発芽しなかった理由は、種間雑種が決定的な原因ではなく それは発芽率を下げる程度である事が分かりました。この発芽しない理由は、播かれた環境が決定的な原因になっている様です。ミヤママタタビは 日照時間を管理すれば、温暖な平地でも栽培出来る事が確認されていますが、では何故その様な地域に進出して来ないのか、その理由が分かりませんでした。でもこの発芽実験で分かった様に、寒冷地で播かれた種子でないと 発芽出来ない様にしてあるからなのでしょう。ミヤママタタビは この様にして 生存競争の激しい温暖な平地には 自ら出ない事を選んだ植物なのでしょう。

デワノマタタビの自生地

デワノマタタビの自生地は 日本海側の豪雪地帯で、その他では見られないマタタビ科の珍しい植物です。でも暖かい平地で栽培してみると、とても良く育ち 沢山の実が成るのです。ではなぜ 何の制限をしなくても良く育つのに、豪雪地帯から他に広がらないのか ずっと不思議でなりませんでした。でも このミヤママタタビの発芽実験から、そのヒントが得られた様な気がしました。それは いくら良く育って 沢山実をつけても、発芽出来なければ 自生地は広がりません。ですから 豪雪地帯の環境でなければ 発芽出来ない様な仕組みにして、外の良い環境ではあるが 生存競争の激しい所には進出しない様にしているのかも知れません。

デワノマタタビの発芽処理

その様な理由で デワノマタタビも 種間雑種の為 発芽しないのでは無く、温暖な環境では 発芽出来ない様にしてある可能性が有ると考えました。豪雪地帯の環境の特徴は、冬の低温の期間が長い事です。低温と言ってもミヤママタタビの様な強い低温では無く、布団の様な雪で覆われたその下は それ程冷えない 弱い低温です。そこで 今年この推論を確認する為に、次の様な豪雪地帯の環境を模擬した実験をしてみる事にしました。 その低温処理は、まず 0℃程度で 3ヶ月保管する条件を試してみようと思います。大きい実が熟したら それを二つに割って、中の種子を取り出して 洗浄してから この低温処理をします。その実際の処理は、冷凍室の無い冷蔵庫の製氷棚に密封した種子を置いて、12月から2月末までの 3ヶ月間保管して、それを3月初めに 播き床に播く方法です。参考に ミヤママタタビと同じ条件の処理をして、比較してみようと思います。来年の4月に発芽して来るかどうか 楽しみにして待ちます。

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中心の真っ直ぐな枝が 結果枝です。この株はとても花付きが良く、最大11節も花が付いた事が有りました。

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左上にあるのが 大きい実で、重さ20~23g有ります。