レモンの種播き

我が家には 同じレモンの木が 3本有ります。一番古い木は、60年程前に 八丈島の「一正園」と言う園芸業者から買い求めた物です。品種名は「サイパンレモン」となっていました。後で調べたところ、戦前に 軍の将校の「菊地」さんと言う方が、サイパン島の隣の テニアン島から、日本に持ち込んだ物の様で「菊地レモン」とも呼ばれている物の様でした。当時のテニアン島には、5000人近くの日本人が入植していたそうです。そこで栽培されていた果樹の様ですが、元々自生していた物か 誰かが栽培用に 何処からか持ち込んだ物か迄は 調べていません。

この木は 買って5年程は 鉢植えでしたが、その後 庭に直植えにしました。ですから 多分関東地方では 最も古い露地栽培のレモンかも知れません。このレモンの 果樹としての形質は、果実は とても上質で 皮も薄く 食べ易く 使い易い実です。樹木としての形質は とても扱い易い木で、枝が勢いよく伸びる様な 強い樹勢では無いのですが、丈夫で 粘り強い感じの木です。花は5から15輪程が集まって咲く 集合花で、中央に雌花が有り その周りに雄花が有り、自家受粉している様です。結実は 成り年,裏年は起きず、毎年 ほぼ同じ様に成ります。他の柑橘類の木と違う点は、葉の数と棘の数が極端に少ない事です。隣接するユズなどと比べると、葉が少ないので 木がスカスカの様に感じます。その為か 枝が徒長する事が無く、剪定を全くしなくても 2mを超える事はありませんし、棘は 偶に現れる 2cm程の物を 剪定しておけば、怪我をする事はありません。葉は少なくても 普通より少し大きめの実を、今では 毎年 20から30個成らせます。耐寒性はユズと同じぐらい強く、30年程前に 一冬に2度 雪が葉に積もる程 降った時でも、葉は全く傷みませんでした。病害虫については、葉の裏に潜り込む虫や アゲハが良く来ていますが、消毒や虫取りはしなくても 木は弱ってはいません。肥料は 全く与えていないのですが、木が弱って来る事は 有りません。

以上の点から この株は、一般家庭の 庭の果樹として とても適していると思います。この木は 露地に植えてから 2,3年すると、年に3度も花を咲かせたのですが、その内 回数が減って 年に1度に落ち着きました。移植された土地の気候に合わせる能力を 具えている様です。

この木の もう一つの特長は、繁殖がとても容易な事で、さし木,接木,取り木 共にとても簡単に出来、繁殖力はとても強い様です。この挿し木の根は とても丈夫なので、他の丈夫な根を持つ柑橘類の台木に 接木する必要は全く有りません。でも敢えて 接木が出来るのかを確認しておく為に 接木を2本と呼び接を1本してみたところ、全て活着しましたので 接木はし易いは良い様です。でもやはり 挿し木に比べると 手間が掛かり面倒でした。

お陰で 接木苗が少しと 挿し木苗が、沢山出来てしまいましたが、初めの各1本だけ残して 色々な人に引き取って貰いました。この様に 挿し木が あまりにも簡単に出来るので、今迄 種子を播きそびれていました。そんな訳で、元の木と 挿し木と 接木の 3本が、我が家に残っているのです。

その果実は、我が家では マーマレードや料理に使っているのですが、消費しきれません。そこで良く 用事で来られた人に、「無農薬ですので、皮まで食べられますよ」と言って、採りたてを 差し上げています。収穫時期は とても長くて 11月から5月頃迄です。ただ 3月を過ぎても残しておくと、果実が大きくなり過ぎてしまいます。酸味と水分は いつ迄でも 保っていて、春になると 皮に甘みが出て来ます。

その接木の株に、偶々8月下旬迄 実が1個残ってしまい、今年の実も 既に出来ているので、木に良くないと思って 採って食べてみました。その果実の 各袋の中にそれぞれ 2,3個の種子が入っているのですが、その内の1個の種子が 袋の中で 発根していました。

f:id:tanemakijiisan:20230827172443j:imageこのレモンは まだ 種子を播いた事は 有りません。そこで 折角面白い物を見付けたのを良い機会に、それを早速 プランターの苗床に 土に穴を開けて その根を傷めない様に そっと差し込んで 播いておきました。この様に 果実の中で発根する現象は、前にもナツミカンで 2,3度 見た事が有ります。熟しても 採らずにそのままにして置くと、稀に 果実の中で発根してしまう種子が有る様です。この種子は何時 地表に芽を出すか、竹串を目印に刺して 観察していました。

f:id:tanemakijiisan:20230914102601j:image播いて 2週間ほどすると、目印の竹串の側から 緑色の新芽が出て来ました。11月末迄には 2,3枚の葉を出して、そのまま冬を越すと思います。親株と同じ実がなるのか 親株とは異なる実がなるのか、葉や棘がどうなるのか 気になるところです。その実や株が 親株と違っていれば 親株は園芸種の可能性が高く、親株と同じであれば 親株は野性種に近い可能性が高いと思われます。でも 私がそんな先まで 生きているとは思えないですね。何しろ 柑橘類は「桃栗三年 柿八年 柚子の大馬鹿 十八年」などの諺が有る程ですので。