シデコブシの実

前回の投稿で シデコブシの揷し木を紹介しました。その際 「今迄一度も実を付けた事が無く、今年も実を付けませんでした」と書きましたが、もう一度本当に無いのかと その木を良く調べ直してみました。すると 葉の陰に2個の実が付いているのを見付けましたので、訂正させて頂き その様子を 詳しく紹介します。

f:id:tanemakijiisan:20230615133222j:image実は葉の色と同じ色をしてますので 見付け難いのですが、白い小さな斑点の付いた ゴツゴツした物が実です。コブシと言う名は、この実の形状が 拳に似ている事に由来しています。この実は 秋になるとゴツゴツと膨らんだ部分が割れて、中から 大豆より少し大きめの赤い果実が現れます。この果実は 殻が割れて 果実が外に出ても 下には落ちません。果実には 白く細い糸が付いていて、殻から数cm下にぶら下がっています。これは この実を ヒヨくらいの大きさの小鳥に、地面に降りる事無く 安心して食べて貰う為なのです。この実の赤い皮の内側に、白くて柔らかい油分を含んだ 果肉が有り、それが小鳥の大事な食料になるのでしょう。その果肉の中に 大豆程の大きさの、黒くて堅い ハート形の種子が入っています。それを小鳥が糞と一緒に、遠く離れた場所に播いてくれるのです。他の果樹と同様に この果肉が発芽抑制物質になっていて、鳥に食べられずに 親株の下に落ちた種子は、親株の競争相手となるので 発芽させないのです。

シデコブシは 自家受粉する株が多いのですが、この株は毎年花を咲かせますが、実は全く付けませんでした。そこで今年は 他の実生株の花粉を、全部の花に掛けてみました。その効果も有って 樹勢が弱くても、やっと2個だけ 実を付けたのでしょう。秋に種子が採れたら 果肉をきれいに取り除いて、水に沈む物だけを播きます。シデコブシの発芽率は 低い様で 2~3割でした。これが自生地を 愛知,岐阜,三重の狭い地域に限らせているのかも知れません。今年の実は 木に勢いが無いせいか、実が少し小さく 種子の数は 2個の果実合わせて7,8個ではないかと思います。シデコブシは 実生後 10年程で 花を咲かせます。花弁の数が多い株が現れれば良いのですが、期待しています。