梅の種子の殻

ウメの種子の殻には、どんな役割が有るのか 調べてみました。

種子の保護

梅の実は 実が成長して 発芽能力が備わると、周りの果肉を熟させて 動物にとって美味しくさせて 動物にその実を食べさせ、中の種子を親株から離れた場所に 糞と一緒に播いて貰います。その動物の消化管を通り抜ける時、種子が消化されない様に しっかりと中身を守る役割をしています。また 堅く丈夫な殻は、中身を虫や動物やカビやキノコ等の真菌類からも、発芽する迄護っています。

果肉を保持する

実が熟して 親株の下に落ちて 果肉がついたままで置かれると、種子は 果肉の発芽抑制作用で 発芽出来ません。殻の表面に在る小さい穴や溝は、果実が転がったり擦れた時でも 果肉が 簡単には取れない様になっているのです。一方動物の消化管の中では その消化酵素で、穴や溝の中まで 果肉は綺麗に取り除かれます。

発芽時期の調節

種子を包んでいる丈夫な堅い殻は、種子が糞と一緒に落ちた後 直ぐに発芽を開始しない様にする役割を持っています。それを確認する為に、収穫後直ぐに 殻を中身を傷つけない様に丁寧に外して播くと、9月から10月に発芽して来るものが 多く見られます。秋に発芽してしまうと 何とか冬は越せますが、通常の春の発芽に比べると その後の生育は良く有りません。やはり 殻は 種子が春に芽が出る様に調整しているのでしょう。これに比べ この様な機能の付いていないビワの種子は、果肉が付いたまま実が落ちても 動物に食べられて播かれても、直ぐに発芽して来ます。ウメの様な落葉樹ではないので、発芽時期の調節の必要が無いのかも知れません。なお まとめて大量に播くと、殻が外してあっても 何故か直ぐには発芽しない様です。また  種子を採取後に 殻の付いたまま冷蔵庫に保管すると、直ぐに発芽準備を始め それを9月に播いても、これと同じ様な現象が見られます。ちなみに ウメの正常な発芽過程は、6月に播かれた種子は 9月になると発芽準備を始めて、中身が水分を吸収して膨らみ その力で中から殻を割り、11月頃に発根して来ます。地上への発芽は そのまま春まで待ちます。

発芽抑制

ウメの殻は 種子が何個かまとまって播かれた時、発芽させずに種子を枯らす役割を持っています。温度が高い時に 殻から水溶性の発芽抑制物質を出し、種子が発芽準備の為 周りから水分を吸収した時、その濃度が高いと 種子を枯らしてしまいます。そこで この殻を外して播いてみると、数粒なら直ぐに発芽して来ます。なお この発芽抑制物質は、殻から直接出ているのか、殻に着いた真菌類が生成する物かは まだ分かっていません。なお 一粒でも 容積の小さい鉢などに播くと、その濃度が高くなり 発芽しません。直播の場合は、種子を 20cm以上離して播くと安全です。これは まとまって生えると 株が競合してしまうので、その状態を避ける為の仕組みなのでしょう。ウメはこの様に 果肉と殻の2段階の発芽抑制機構を備えているのですが、果肉の方は 1個でも働き、殻の方は 2個以上固まった時に働き、それぞれの違った役割を持っています。

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殻を外した種子を 数粒播いて置きました。9月から10月に発芽して来ました。