1年目に発芽したヤマユリ

ヤマユリは 秋に種子を播くのですが、翌年の春には まだ発芽せずに 2年目の翌々年の春に発芽します。でも中にはごく僅かですが、1年目で発芽するものが現れます。この春も1本だけ 1年目で発芽したものが有りましたので、その様子を紹介します。

種播き

去年の晩秋に 耐暑性の強い株同士を掛け合わせて出来た種子を、プランターに播いておきました。種子の数は 1鞘分およそ300粒で、プランターの大きさは 40×60cmほどの物です。播いた後に表面に 乾燥防止用に乾燥させた小枝のチップを敷いておきました。

発芽

1年目のこの春に、雑草に混じって1本だけ発芽しているのを見つけました。

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遅発芽の目的

ヤマユリやササユリの種子は、1年目で発芽しない遅発芽性を持っていますが、その目的は次の様なものと考えられます。ヤマユリなどの植物は、栄養分が少なくても 固い土壌で しっかりと周りを固められた深い場所で、ゆっくりと育つ性質の植物です。ですから 柔らかい土壌や栄養分が豊富な場合は、自らを腐らせて枯らしてしまう仕組みを備えています。種子も出来るだけ深い所まで潜ってから発芽する為に、1年間余計にかけて その機会を狙っているのでしょう。その事は 球根が大きくなるに従って、下の根を収縮させて球根を下に潜らせている事からも分かります。

遅発芽の仕組み

では 1年目で発芽せず 2年目で発芽するのはどの様な仕組みを使っているのでしょうか。それは多分次の様なものと考えられます。

ヤマユリの種子は、半透明で薄くて丈夫な蝋紙の様な皮で包まれています。秋に播かれた種子は その皮の為に、水分が吸収出来ずに 翌春の発芽準備が出来ずにそのままになってしまいます。その蝋紙の様な皮は、気温の高い夏には 劣化してひび割れてしまうのでしょう。そうなれば晩秋に発芽準備が出来、翌春には発芽する事が出来ます。この事は ヤマユリの種子が 端の一部を切り取って播くと、 1年目でも発芽する事からも分かります。ただこの様な手法は 園芸種としては良いのですが、野生に戻す事を考えているものには 適用するべきでは無いと思います。遅発芽の工程を経ずに育ったものの中に 遅発芽性の無い株が含まれていて、その形質が野生の株に広まってしまう可能性もあります。そうなると種の存続にも 悪影響を及ぼし兼ねません。

法則外れの例外

生物界には 完全な法則は有りません。必ずどんな法則にも 例外や法則外れは出て来ます。それが無いと 進化が存在出来ず、外界の変化に対応出来ずに 絶滅してしまうからです。ヤマユリの遅発芽性も、0.1~0.5%ほどの種子が遅発芽性を破って、1年目で発芽して来る様です。この逆の現象は 雑草の種子に良く見られます。雑草は1年目に発芽して来る者が殆どなのですが、それらの中には 僅かですが、2年目に発芽して来る種子が有ります。1年目に完全に除去した筈の草が、その翌年にまた何本か生えて来る現象は この為なのです。