種間雑種は 草か木か?

ボタンとシャクヤクを掛け合わせた品種で、「オリエンタルゴールド」と言う 有名な園芸品種が有ります。この園芸種の形質について投稿します。

ボタンとシャクヤク

ボタンとシャクヤクは とても近い種です。でも ボタンは木本で とても草に近い木で、シャクヤク草本宿根草です。草と木の違いは 次の成長期に伸びる芽が 地表かそれより下に有るのが 草で、その芽が地表より上に有るのが 木です。言いかえれば 成長期が終わって 次の成長期を待つ間、生きた茎が地上に残っているのが 木で、地上の茎が枯れてしまうのが 草です。草と木を良く間違い易いのが バナナで、実が採れた後 根元から切り倒して新しい株を作っている作物で、その茎からは芽が出ず いくら大きくても草なのです。宿根草は 次の成長期に備えて、葉で作った養分を根に蓄えて置き それを次の成長に使います。ボタンは 茎は残すのですが、葉で作った養分を茎にはあまり蓄えず 宿根草の様に その殆どを根に蓄えます。ですから その根は 養分の貯蔵器官の役割が有る為、一般の樹木とは異なり 老木になっても とても瑞々しいのです。この養分の往復や木質の柔らかさの為、木を高く大きく出来ないのでしょう。余談ですが 実生のボタンを移植する際は、この太い根は切らずに 出来るだけ長く残せば、髭根や土は付けなくても移植出来ます。

種間雑種の種子

このオリエンタルゴールドは、10年以上前に 種間雑種の種子を採ってみたいと思い、近所の植木市で買い求めました。以来毎年 自家受粉やボタン,シャクヤク,ヤマシャクヤクの花粉を付けているのですが、全く種子は採れません。毎年立派な鞘は出来るのですが、中身はごま粒程のシイナしか入っていません。この鞘が出来るのは 柱頭に付いた花粉が、花粉管を伸ばして精子が子房まで届いた場合に、受精がうまく行かなくても 鞘はしっかり作られます。ですから もう少しのところまで行っているのです。一般に種間雑種では、極く近い種の間であれば 種子は出来易いので、もしかしたら これも種子が採れるのではないかと 期待したのです。種間雑種でも 自家受粉は 難しい物が多いのですが、このオリエンタルゴールドも難しい様です。オリエンタルゴールドは、別々に2つ以上の系統から作られている事は考えられず、他の株の花粉を付けても クローンの自家受粉になってしまいます。理論上は不可能であっても、現実では理論の抜け穴が有って、種子が出来る事が 往々にして起きるものです。ヒガンパナとジャガイモでも 種子を採る直前まで行きました。ただ それには膨大な回数か とても僅かな幸運が必要で、根気と費用が要る仕事です。この件もここで諦めず、もう暫く受粉作業を続けてみようと思っています。

姿形の変遷

長い間かかっても 種子はまだ採れていませんが、その姿形は少しづつ変化して来ました。買い求めてから数年間は、晩秋になると その年に伸びた茎は根元から枯れ、地表に冬芽がの覗いていました。そこでオリエンタルゴールドは、草本なのだと思っていました。でも その後芽の位置が少しづつ上に上がって来ました。7,8年すると 明らかに茎の上部に 芽が付く様になり、今年は地表より10cm上になっています。この事から言える事は、オリエンタルゴールドは、株が若い時は草本で 壮年になると 木本に変わって来る事です。樹木でも ヒイラギやカクレミノは、老木になると 葉の形が変わって来ますが、草本から木本に変化する植物は聞いた事が有りません。この株の若木と老木の関係について、この株の一部を株分けしてみたところ、分けた小さい株は 元の草本に戻って、冬芽は地表になっています。株分けにより 株の若返りが起きているのでしょう。接木や揷し木の場合も この若返りが起きます。

増殖方法

ボタンの増殖方法は、全てシャクヤクの根にボタンの枝を挿木しています。その理由は前回の投稿を参照して下さい。私は当初 この園芸種は 芽の付いた枝が残らないので、当然 株分けで増やしているものと考えていました。この株分けは とても効率の悪い手法ですが、それしか無いのであれば そうするしか有りません。でも 十数年経って 接木の方法も使える事が分かりました。ただ この品種の場合は 接木も 枝を得るのに長い年月を待たねばならず、その得られる枝の数も僅かで その利点は 殆ど有りません。入手した株の場合は 買って数年は 茎が枯れていたので、やはり株分けの方法を使っているのでしょう。念の為 これを確認する意味も兼ねて 株分けをしてみました。来年か再来年には花が咲くので、どちらの方法だったか判明するでしょう。

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オリエンタルゴールドの冬の姿です。