来年からヤマブドウの受粉状況を調べる目的で、雄株の花粉を 一時に無くす為に 我が家の唯一の、古い雄株を伐採する事にしました。その様子を投稿します。
雄株の由来
この雄株は 我が家に植えた最初のヤマブドウで、20数年前に 秋田県で行った 巨樹の調査に同行した際に、和賀山系で 蔓を採取して来て 庭に挿し木した株です。当時は ヤマブドウが雌雄別株である事を知りませんでした。蔓が伸びたので、早く花を咲かせる為の 蔓の誘引実験をして、花を沢山咲かせたのですが、その花には 雌しべが有りませんでした。そこで初めて ヤマブドウが 雌雄別株の植物で、その株が雄株と知ったのです。
花粉を無くす為の伐採
そこで 各地の山から雌株を集めて植えてみましたが、雄株は少々虫に食われても 木は枯れませんが、雌株は虫に喰われると 全て枯れてしまいました。ところが 数年前から、気候の温暖化のせいか 虫の害が見られなくなり、雌株も花を付けるまで 大きく育つ様になりました。雌株に雌花が咲く様になると、以前から両性花の植物に興味が有ったので、ヤマブドウでも両性花が有るのか気になりました。そこで このヤマブドウでも 開花の時期に 雌花に袋を掛けて、自家受粉する花が現れないか 調べてみました。でも 袋を掛けた花房で、実が付いた物は 一つも現れませんでした。花房の数を100以上に増やさないと、正確な結論は出せません。でも その袋掛けが 大変な作業で、2年やってみて その方法を諦めました。そこで 次に袋掛けに代わる方法として考えたのが、雄株を一時的に無くして 花粉を無くす事でした。幸い家の近くには 当然ヤマブドウは自生していませんし、栽培種のぶどう畑も在りませんので、この木の雄花を 一時的に無くせば、全ての雌花が 無花粉の状態になる筈です。これならば 資料数としては 十分となります。この様な理由で 唯一の雄株を、根元から伐採する事にしたのです。元の株は伐採しても 周囲に地を這った蔓が、根を出して新たな株を作っていますので、4,5年もすると また雄花を付ける株に戻ると思います。
伐採前の 古い株の根元の様子です。
伐採した後の切り株です。余談ですが、隣の白い花は シャクチリソバです。
雄株の果実の調査
雄株を伐採しながら 丁寧に実が付いてないか 蔓を調べたのですが、残念ながら 実は一つも見つかりませんでした。普通に考えれば、雄株なのだから 実が付いて無くて当たり前で、調べる事自体が 無駄な作業と思われています。ただ伐採だけが目的であれば、葉が落ちてからの方がやり易いのですが、実を見つけるには まだ葉が残っている時期の方が良いので、今の時期に伐採したのです。でも 実は見つかりませんでした。この雄株に 実が付いているのかを調べる事が、この伐採作業の隠れた目的だったのです。
雌雄別株の両性花
雌雄別株の植物の両性花は、全く無いと思われていますが、実際は それを調べる人が殆どいないだけで、本当は意外と多いのではないでしょうか。両性花がないのでは無く、問題はその比率だと思います。その比率が10%以上の物は 殆ど存在せず、1%程の物は 極わずかで、0.1%以下の物は かなり存在はしているのですが、普通に調べたくらいでは 見つからない程度に 実在するのでしょう。以前 庭の雄木のヒイラギの 直径5cm程の 太い枝を剪定した時、その枝の小枝を全て切り離し 葉を1枚1枚外しながら、枝全体を丁寧に調べてみると、2個の実が見つかりました。切らずに 木に着いたままの枝では、幾ら丁寧に調べても 見つけられないと思います。同様にギンモクセイでも 10個以上見つかりました。我が家で 最初に両性花に気付いた アシガラサンショウの場合は、両性花の比率が 1割程になり、とても珍しい個体だと思います。
雌雄の区分
生物界では 雌雄の区分は 固定的なものではなく、割と緩いものなのでしょう。雌雄を絶対的に区分したがったのは、人間だけなのでしょう。