ウケユリの栽培報告

今年から栽培試験を始めたウケユリのこの夏の結果が出ました。結果は 期待した程の繁殖力は 見られませんでした。ただ 当地の気候条件での栽培や 栽培方法を、否定する様な結果では有りませんでした。

これ迄の経過

栽培したのは 2鉢ですが、その内 1鉢の球根が 栽培開始時には分球し始めていました。分球の様子も観察出来ますので、詳しく調べるのは その鉢の方だけにました。もう1鉢の方は、ほぼ同じくらいに成長しているので、調べるのは 省略して投稿します。

f:id:tanemakijiisan:20230920180542j:image23年2月8日に 鉢に植え付け時の状態です。球根の左上と右下に 2本の芽が出ているのがわかります。これは この株が去年の夏から、分球を始めていた事を示しています。ですから 1個の球根に見えても、2個の球根として扱います。寸法や重量は この半分の物が、2個くっ付いた物とみなします。植え付けは 普通は晩秋に行うのですが、都合で少し遅くなりましたが 根がまだ動き始めていないので、栽培実験には問題ありません。球根の下に付いている古い根は 根元から完全に切除して、炭床の上に植え付けます。

f:id:tanemakijiisan:20230920180751j:image7月30日の状態です。左の鉢が 分球していた株で、予想通り 2本の株になりました。右の鉢が もう一つの株です。暑さの為 葉に少し黄ばみが見られます。

f:id:tanemakijiisan:20230920181010j:image9月20日に 球根の周りの土を取り除いた状態です。分球が完了し 球根が分離した状態です。残念ながら 木子は1つも有りませんでした。球根に直に触れていませんので、そのまま土を戻しておきました。球根を動かしてしまった時は、一旦球根を掘り上げて 根を元から 完全に切り取ってから、再度炭の上に植え付けます。

耐暑性

普通のヤマユリよりは 耐暑性は強いのですが、期待した程の強さではありませんでした。今年の暑さでは 7月に入ると 葉が黄ばみ始め 8月末までが限界で、9月に入ると葉は全て枯れました。日照時間は 現在の8時間では無理で、4時間以下であれば 現在よりもう少し高温でも耐えられると思います。

繁殖力

このユリの成長力は、タモトユリやヤマユリの半分くらいです。成長に使われる養分の割合が、伸び始めた葉で作られる分が少ないので、殆どは前年に球根に蓄えられた分を使う事になり、球根に蓄えられた養分を使い切ると 成長が止まってしまい、葉の数や大きさや草丈が それらのユリの半分くらいになってしまうのでしょう。タモトユリやヤマユリは、1年で球根が3倍以上になり 木子も良く作りますが、このユリは 2倍弱にしかならず 木子も作りません。この葉の状態では、木子を作るだけの余力は無かったのでしょう。

葉の活動期間

芽出しの時期は ヤマユリとほぼ同じでした。7月に入ると 葉に黄ばみが出てきて、8月末には 葉が全て枯れてしまいました。9月末までは 葉が残ればと 期待していたのですが、かなり期待外れの結果でした。

栽培環境の変更

このユリは タモトユリやヤマユリと同じ生き残り戦略を採っているので、炭を詰めた鉢や施肥をしない事等は 従来通りとし、日照時間を従来の8時間から、4時間程度に相当する木の下に 移動してみる事にしました。日照時間を短くする事により、葉の傷みを少なくし 葉を大きく出来 活動期間も長くなるかも知れません。もし 葉の面積を大きくし 葉の活動期間を延長出来れば、日照時間が減少しても それを上回る成長力を得られるかも知れません。来年は 栽培条件を変更して、それを確認します。

耐暑性の強い株の選別

今回の栽培実験の結果から ウケユリも この温暖化で、近い将来 絶滅の危機を迎える事も予想されます。この実験用に入手した株は クローンでは無いとの事なので、交配して 各種の形質を持った種子を採る事が出来ます。ヤマユリの耐暑性を調べた経験から そのウケユリの種子の中から、耐暑性の強い株が 1%くらいは 得られる事が期待出来ます。その先は ヤマユリと同様の選別過程を繰り返せば、必ず耐暑性の強い野性の集団を作り出せると思います。来年からは 種子を採る事から始めてみるつもりです。