ヤマユリの不思議

ヤマユリの小さな苗が 芽を出してくる時期になりました。今年は思いも寄らない鉢に ヤマユリの苗を見つけました。その鉢の在った場所は、十数年前まで 7,8鉢のササユリやヤマユリの鉢が置かれていた 木漏れ日のさす所です。でも この素焼きの鉢には ユリは植え付けた事は有りません。ユリは 必ずプラスチックの縦長の鉢に下半分に炭を詰めた 専用の鉢に植え付けています。この鉢は元は何かの植物が植えてあったのですが、その植物が消えてしまい 土だけが残った状態になっていたのです。その鉢に この春ヤマユリの1枚葉の苗が芽吹いて来たのです。

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その場所に置いてあったササユリの方は 種子を採取していたのですが、ヤマユリの方は 花が咲いても 種子はそのまま放置していました。結果として無意識に 庭のあちこちに ヤマユリの種子を播いていた事になります。数年前にも 同じ場所に置かれた2個の鉢に ユリの苗が生えていたのを見付け、それをユリ専用の鉢に植え付けて 日照時間が8時間以上の場所に移して栽培したところ、2株とも耐暑性の高いベニスジ系と普通のヤマユリである事が判りました。でも それから数年しても まだ芽が出てくると言うのは、ヤマユリの驚異的な生命力です。この苗も秋になったら ユリ専用の鉢に植え付けて、どんな形質のユリか 調べてみようと思っています。もし この株も耐暑性が高ければ、気候が温暖化して 耐暑性が高い株だけが 生き残ったのかも知れません。

地中で生き残るユリ

この地中で長期間球根が生き延びる現象は、ヤマユリだけでなく ササユリにも見られます。30年以上前に ササユリの生態を調べていた時、和歌山県の自生地の土を バケツ1杯採取して調べた事が有りました。小石混じりの粘土質の表土を シートの上に広げて調べると、数個の小さな球根が見つかりました。それらの球根は 地表には葉を出していませんでした。何かの条件がそろえば、一斉に芽を出して来るのでしょう。別の例では 三重県の民家の裏山で、ササユリが沢山咲き乱れていたので 地元の人に尋ねたところ、「元あそこにはササユリは見られなかったんだが、家が火事で焼けて 裏山も焼けてしまったら、その後 ササユリが咲き出したんです」との事でした。やはり ササユリの球根が 地中で何年も生き延びていて、地表の植物が消えたのを察知して 一斉に芽を出して来たのでしょう。

では何故これらの球根は 地中に何年も潜む事が出来るのでしょう。ユリの球根は 葉の変形したものです。ですから 球根に光を当てれば 炭酸同化作用は出来ます。この光は 普通は緑以外の可視光ですが、効率はとても悪いのですが 赤外光でも出来る様です。物体は常温でも僅かですが 赤外光を出しています。ユリ達はこの僅かのエネルギーを利用して、生き延びる戦略を採っているのでしょう。その代わり生き延びる以外の全ての活動を休止して、ひたすらその時が来るのをじっと待っているのでしょう。