白紋羽菌

庭の土には 色々な沢山の微生物が棲みついています。中でも真菌類の白い糸の様なものが見える「白紋羽菌」が目立ちます。この菌は 果樹や花木や野菜の根について、その植物を枯らしてしまう「白紋羽病」の原因菌として、悪名の高い菌として有名です。でも 本当の姿は そんな被害よりも遥かに大事な、植物の作った廃棄物を 再生してくれる役割を担っているのです。もし こう言う菌が 枯れ木や枯れ葉を分解してくれなかったら、地球上の生物は生きていけません。白紋羽菌の殆どは 枯れ木や枯れ葉を食べていて、生きた植物を食べる事は無いのですが、極一部の菌は 生きている根にも取り付き、植木や作物に致命的な被害を与えます。この被害は 部分的に出たり 全面的に出たり、時折り出たり 連続して出たり、急激に広がったり ゆっくり広がったり、長く続いたり すぐに収まったりと色々な形態が見られます。此れ等を見ていると、一つの菌の株が 時と場合によって その性質を変えている様にも見えます。

我が家で最も被害を受けているのは、ボタンとヤマシャクヤクの苗です。我が家の全ての鉢や苗床には 乾燥防止と肥料分の補給の為に、十分乾燥させた小枝のチップを敷き詰めていますが、このチップには すぐに白紋羽菌が取り付きます。ユリは この菌の被害は 全く有りません。ユリは植え付け方を間違えると、すぐ腐る様に わざとしているのですが、腐らせる菌は 別の腐敗菌で、その菌の力を借りて 腐らせています。ボタンもヤマシャクヤクも 3年目以降は、殆ど被害を受ける事は無くなります。サンショウも少ないですが、発芽2年目迄は 被害を受ける事が有ります。家の周りの樹木には、その周りに かなり厚く落ち葉を敷き詰めてあり、其れ等には 全て白紋羽菌がしっかりと付いています。でも その他の植物は 殆ど被害を受ける事は有りません。

被害は 発芽する前の発根した根に付いて枯れる事も有りますし、発芽してから 根がやられて 苗が枯れる事も有りますし、2年目に根をやられて 芽を出さない事も有りますし、苗箱の一部だけ被害を受ける事も有ります。また 隣り合った株でも、被害を受ける株と 被害を受けない株が有ります。

私は被害が発生しても、土の消毒や取り替えは 決して行いません。敢えて同じ用土に 同じ種子を何年も播き続けて、それ以降の変化の様子を確認するのです。普通は2年で 長くても 4,5年で被害は収まって来ます。この様な短期間で 菌が全て入れ替わるとは考えられません。同じ株の菌の性質が変化したとしか考えられません。生業であれば この様な呑気な事は言っておられませんが、私たちの様な趣味や研究者は 折角の事象を見逃す訳には行きません。

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写真の箱の中のヤマシャクヤクは、植え替えて1株だけにした訳ではありません。一緒に播いて 周りに有った20粒近くの苗は、全て白紋羽菌にやられて 1株だけ残ったものです。そこにギョウジャニンニクの種子を播いて置いたものが 発芽して同居しているのです。この様に 被害に遭わなかった株の種子を 何世代も播き続けると、白紋羽菌に耐性を持った株が出来るのではと思います。