ヤブカラシの実

以前 したたかなドクダミの繁殖力について 投稿しましたが、その投稿を書いている時 常に気になっていた植物が ヤブカラシでした。ドクダミも とても強い生命力ですが、それにも増して凄いと感じていたのが ヤブカラシだからです。この名前からもわかる様に、生命力の強いと言う代名詞の「薮」でさえ枯らしてしまう程の強さを持っている 植物なのです。この植物は、とても身近な 蔓性の宿根草で、ドクダミに勝るととも劣らない程の 凄い生命力を持った植物です。私にとっては 「絶滅危惧種」ではなく、真逆の 憎っくき「絶滅期待種」第一位なのです。主な繁殖方法は、地下茎を伸ばして 何処へでも自生地を広げて、何処にでも芽を出して行く 繁殖法です。この草は 名前の通り 自生地を少々の密な藪で覆われてしまっても、その藪の表面まで突き抜ける力を持っていて、薮の他 5m程の中木に覆われても その上に出る力を持っている凄い草です。取り付かれた方の植物にとっては、日照を殆ど横取りされ、枯れるか 枯れない迄も 瀕死の状態になって、実を付ける余裕など 全く無くなる 迷惑至極の植物です。おまけに 目立った天敵は居らず、天下の嫌われ者です。その力の秘密は 地下茎に有り、樹木の根がびっしり はびこっていようと、コンクリートアスファルトの下であろうと、お構い無しに 長く伸ばした地下茎に たっぷりと養分を蓄えておき、その養分を使って 翌年には 密な藪や高い木の上迄、簡単に蔓を伸ばす事が出来るのです。その地下茎を引き抜こうとしても、周りの構造物に守られて ほんの一部しか取れません。他の宿根草と違って、地上部を作るのに全ての蓄えた養分を使わず、かなりの比率で残している とても周到な危機管理対策を執っている、強かさを持っている植物です。この草を絶滅させるには、数年間 絶え間なく 根気良く、地下茎が侵入出来ない 隙間の無い障壁に囲まれた 広大な区域を、見張っていなければなりません。現実には 現在の日本の土地の所有形態では、それは難しいのです。それが 日本全国 何処にでも蔓延って 身近に見られる理由なのでしょう。

この同じ理由で この植物には、独特の生態が見られます。それは 花は良く見られるのに、果実は殆ど見られない生態です。果実が作れない構造になっている訳では有りません。花はテーブル状の集合花で、一つの花の大きさは 5㎜程で、4枚の花弁(萼かも)と 4本の雄しべと中央に雌しべを持った、橙色の地味な花です。花期は 9月上旬で、花を見ていると 蜂が良く来ていますので、虫媒化の様です。でも 花が終わると、虫が来ていた花でも 実は付かず、花柄から次々と落ちて、花は丸坊主になっています。この花は 強い他家受粉なのでしょう。ここで 話を前の地下茎に戻すと、余りにも地下茎が強烈な生命力を持っている為に、その地域の全てが 同じ株になってしまい、余程遠くから飛んで来ないと 他家受粉にならず、全ての花が 自家受粉になってしまうのでしょう。逆に言うと 種子による繁殖法は、特別な状況以外 邪魔になるのでしょう。

f:id:tanemakijiisan:20230906175452j:image花は 一度に全部咲かずに 少しずつ咲いて行きます。

f:id:tanemakijiisan:20230906175625j:image蜂が盛んに 咲いている花を 突いていました。

f:id:tanemakijiisan:20230828212105j:image私も初めて見た、ヤブカラシの実です。見た場所が 家から遠い山の公園の生垣だったので、家から頻繁に来て観察する事が出来なかったので、その後の状態や種子の採取は出来ませんでした。