キン(金)モクセイとギン(銀)モクセイ

キンモクセイとギンモクセイは、共に古くからの園芸種の花木です。9月に入って住宅地を歩いていると、その強い香りで 花が咲き始めたことにすぐ気付きます。でも この二つの木ほど、巷間その由来を諸説語られる木は無いと思います。そこで私もその仲間に入って、私見を紹介したいと思います。

これまで言われていた由来の主なもの

私の若い頃は、キンモクセイ遣唐使が中国から持ち帰ったもので、それを揷し木等で増やして全国に広まった。その際持ち帰ったものが雄株だったので、日本には雄株しか無いと言う説がありました。この説にはかなり無理があると思います。アオキを英国に持ち帰った話と良く似ていますが、キンモクセイは何故すぐに雌木が渡来しなかったのか。また 遣唐使の頃は 苗木を持ち帰るよりも、その種子を持って帰る方がずっと楽で、種子であれば沢山持って帰れるので、必ず雌木が入っている筈です。さらに この説を裏返すと、中国には雌木が有ると言う事になります。私も何度か知人を介して、中国の植物の専門家に尋ねて貰いましたが、誰一人雌株を見たと言う人はいませんでした。最近はこの「中国には雌木が有る」と読める説は、殆ど目にしません。

最近目にした説は、ギンモクセイが元になる木で、キンモクセイやウスギモクセイは それから派生したと言う説です。この説にもかなり無理があると思います。ギンモクセイは野生かそれに近い種と言う事になります。でも ギンモクセイには、実をしっかり付ける雌木は無く、殆どの木は種子を滅多に付けません。それに対し ウスギモクセイは、雌株と雄株が有り 雌木は良く実を付け、その種子を蒔くと良く発芽します。

私の考える由来

私はウスギモクセイが野生に有り、それは元々亜熱帯に自生していて、それが温帯地域に進出して来たのではないか と考えています。亜熱帯の夏は、高温と乾燥で厳しい季節なので、秋の過ごし易い季節になると、花を咲かせるのでしょう。日本にも南九州辺りで、ウスギモクセイの自生株が見られると言われています。かなり昔に 中国南部で、ウスギモクセイの雄株の枝に、色が濃くて香りの強い「枝変わり」が突然変異で現れ、それに気付いた人が 揷し木等で増やしたのが、今のキンモクセイだったのでしょう。それが中国全土に広がり、唐時代の桂林は、秋になると日本の春の桜の様に、街中がキンモクセイの香りが漂っていたそうです。その時中国に行っていた遣唐使が、日本に持ち帰ったのでしょう。ですから キンモクセイの雌株は、何処にも存在しないのです。

一方ギンモクセイの方は、同じ様にウスギモクセイの「枝変わり」で、こちらは 白色で香りは元のままだったのでしょう。ただ 何処で生まれたかは、資料が少なく推定出来ません。そして こちらの元の木は、雌株だったと思われます。その為 キンモクセイは実が付いたと言う報告は有りませんが、ギンモクセイには その報告が時々有ります。私も10数個確認しました。そして ギンモクセイの花には、不完全ながら雌しべが確認出来ます。

キンモクセイの花期

日本では数年に一度 キンモクセイが秋に花が二度咲く事がありますが、今年がその年の様です。ただ その一度目と二度目の間隔が、今年は少し短い様に思います。普通二度咲く時は、1ヶ月半程の間隔が開くのですが、今回は1ヶ月程で2度目が咲き始めました。間隔は短いですが、一度目の花が完全に落ちた後、また咲き始めましたので、連続した花期では有りません。かなり珍しい現象だと思います。また 普通は初めの方が花は多いのですが、今回は二度目の方が花は多い様です。ギンモクセイも同様に二度咲いていますが、キンモクセイほど花は多くは無い様です。

 

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ギンモクセイの花、中心に不完全ながら雌しべが見られる。

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キンモクセイの花、中心に雌しべは見られない。

次回は ヤマイモのムカゴ採りを紹介します。