2年目に芽を出したウメ達

ウメの種子に有る「発芽を制御する機能」については、以前から何度も投稿して来ました。この 「何故 纏めて種子を播くと 発芽しないのか」については、夏の暑い時期に 種子の殻から何らかの物質が浸み出して来て、その濃度が高くなると 種子を殺してしまう事が これ迄の実験から分かりました。この濃度を調べる確認の実験で 一昨年に播いた種子が、2年目になる今年の春に6本も発芽して来ました。この物質は 初めは休眠物質と思っていましたが、休眠物質は それとは別で 胚とその皮に含まれているそうで、この物質はその休眠を解除する物質の様です。

f:id:tanemakijiisan:20240411095216j:image写真の右側の小さい鉢は 内径8cmの鉢で、普通にこの大きさの鉢に1個の種子を播くと、その物質の濃度が高くなり 種子は確実に 秋迄には死んでしまいます。そこで その時の実験では その物質の濃度を下げる為、この小さな鉢にだけ 7月と8月の間 毎日1日1回鉢にたっぷりと水をかけておきました。結果は 6鉢中3鉢が、翌春に発芽して来ましたので その物質が水溶性で、濃度が確実に下がっていた事が分かりました。発芽しなかった3鉢は そのままにしておきました。すると 2年目になるこの春に、その残り3本が発芽して来たのです。

左側の鉢は 内径12cmの鉢で、水遣りはせずに そのままにした鉢です。ウメの種子を播く鉢の大きさについては、鉢の中の土の容量が 内径8cmでは、その物質の濃度が高くなり 絶対に発芽出来ず、15cmでは その物質の濃度が下がり 確実に発芽出来る事が分かっています。そこでこの実験では その中間の内径12cmの鉢の場合は、どうなるのかを 調べてみたのです。結果は この鉢の大きさの濃度が境目の濃度になる様で、翌春には 6鉢中 1本も発芽して来ませんでしたが、そのままにしておきました。すると この春になって 3本が発芽して来たのです。残りの種子は 多分死んでしまったものと思われますが、念の為 来春迄待ってみます。

要は これらの1年遅れて発芽した6株は、「死ぬ」と「生きる」の境目の状態に置かれた種子なのです。その状態で 死んではいないのですが 発芽出来ない「仮死状態」になり、通常の休眠とは異った状態で 1年目には 発芽出来なかったのでしょう。その仮死状態が解けた後 2年目に 発芽して来たと思われます。以前の別の実験では 3年目に発芽して来た例も有り、この仮死状態はかなり長くなる事も有る様です。

ウメの種子の発芽仕組み

ウメの種子の発芽には、何故この様に複雑な 「休眠機能」と 濃度が高くなれば死んでしまう危険な「休眠解除機能」を持っているのでしょうか。休眠させて 後で解除するのであれば、最初からそんな面倒な仕組みを付けなければ良いのではと思います。その理由を考えてみると、ウメの実は 6月に完熟するので、その時期に理由がある様に 私は思います。もし 落葉樹のウメが 実が完熟して、種子が播かれて直ぐに発根して 夏の終わりに発芽してしまうと、春の時期には既に遅く 秋が直ぐ来てしまうので 出した葉が無駄になり、とても中途半端な発芽時期になってしまいます。そこで この様な複雑仕組みを採って、秋迄発根を遅らせて 翌春に地上に発芽しているのではと思います。

ウメに近い時期に熟すビワは、実が落ちて直ぐに発芽して来ますが、常緑樹であるので 全く問題無い様です。