気候の温暖化による暖冬の植物への影響

暖冬による植物への影響が、近年特に顕著になって来ています。このブログでも何回か取り上げて来ましたが、今迄は偶々起きる 1株か2株の現象でした。でも 今年の冬は 色々な植物で、それも複数の株で起きています。やはり 気候の温暖化のせいで、今迄の暖冬とは異なる 別の現象が始まっている様に感じられます。そこで 個々の植物について、どの様な現象が起きているか 投稿します。

ヤマユリの現象

ヤマユリは 暑さにはとても弱い植物です。ヤマユリだけで無く 他の多くの種類のユリも 暑さには弱いと思います。私は偶々身近に有ったヤマユリの 耐暑性の強い株を選び出す栽培をしていますので、暖冬による変化を ヤマユリを通して 強く感じるのでしょう。夏の耐暑性の強さと 冬の暖冬の影響とは 関連が有るのか 良く分かりませんが、異常の現れは 夏が終わる頃には始まっていました。それは 9月になって 新芽を出して 伸び始めたり、4月に発芽した苗が 9月になって 又1枚葉を出して来た株が、10株以上有りました。その内の2株に 特に強い異常が見られ、1株は 1月中旬迄元気な緑色で その後段々茶色味がかって来ました。もう1株は 葉は小さいですが、1月末でも まだしっかりと緑色のままです。

20年以上 野性のユリを栽培していますが、冬にこの様な現象を見たのは初めてです。この現象は 同じ系統だけで起きているのでは無く 別系統の株でも起きているので、系統固有の現象では無いと思われます。

f:id:tanemakijiisan:20240124172737j:image右がユリの1枚葉で、左の引き抜いた1枚葉は、根に球根は無く 多分アカネの発芽苗だと思います。とても良く似ていますが、地上部を見比べると 葉の根元と先端が少し違います。通常アカネの発芽苗は 2枚葉なので 簡単にユリと区別が付くのですが、成長の悪い株は 写真の様に1枚葉になるので、良く注意して見ないと ユリの1枚葉と間違えます。このユリは 1月末でも まだこの状態でした。本来発芽時期が全く違うので、間違う事は無いのですが、ユリがこの時期に発芽してしまうと 紛らわしくなります。

ユリの地上部の葉と 地下の球根の鱗片は、活動期間が密接に関連しています。ですから 地上部の葉の活動期間が変わると、必ず鱗片の活動期間に影響を与えている筈です。鱗片がどの様になっているか、良く調べてみなくてはなりません。

ギョウジャニンニクの現象

ギョウジャニンニクの場合も、やはり耐暑性の強い株にはっきりと 異常が現れています。去年の9月に 1株だけですが 夏に枯れた株に 新たに葉を出して、その葉は1月末まで 枯れずにいました。以前にも同じ現象が起きていたのですが、その時の株は1枚だけで 1月末には枯れました。今回の株は その葉の根元に、2cm程の新葉が出ているのです。これと同じ様な新葉は、当地で種子から発芽した耐暑性の強い株 全てに現れています。それらの株は 例年2月中旬から新葉が動き出していましたが、今年は1月中旬から新葉が動き出して、1月末には もう3〜5cmになっています。購入した寒冷地産の株には、僅かに動きが見られる程度です。ギョウジャニンニクでも、この異常と耐暑性は 関連が有るのかも知れません。ギョウジャニンニクの場合は、地上部の葉と球根の分球は 密接に関連しています。ヤマユリと同様に 葉の活動期間が、分球にどの様に影響を与えているか調べなくてはなりません。

f:id:tanemakijiisan:20240126183125j:image最低気温が0℃になっても、葉に傷みは見られず 伸び続けています。今伸び出した葉は、7月末まで枯れずに持つと思います。そうなると 葉の活動期間が さらに1ヶ月間長くなり、寒冷地の株より 3ヶ月間も長くなります。ただ 夏の暑さが厳しくなって、1ヶ月早く枯れてしまうかも知れませんが、そうなれば 暑さを避けて、活動期間を1ヶ月冬に移した事になります。

ボタンの現象

ボタンの場合は、ユリの場合と同様に 異常の現れは、9月に始まっていました。一昨年誤って地上部を刈り取ってしまった株が、7月に新芽を出し 小さいながらも葉を2枚出して育ち、秋になっても枯れずに そのまま冬を越した例が有りました。今年は その時の様な外乱を全く受けていない2株が、9月に新芽と根元から1枚の葉を出して来る現象が起きました。1枚の葉の方は、葉の大きさは普通です。前回の経験から 冬に日焼けして弱らない様に、笹の葉で日除けをしてあります。その葉は まだしっかりと緑色が残って 元気に冬を越している様に見えます。

f:id:tanemakijiisan:20240128194919j:image9月に新芽を出した方の株で、1月末の状態です。こちらの方は 日除けをしなかったので、少し赤くなっていますが 葉は元気に残っています。でも 春の葉に比べると、秋の葉は 半分以下の大きさです。葉の後ろに見えるのが、去年までに伸びた茎です。茎が残っている事から、この株は 刈り込みの被害には遭っていない証拠です。

ボタンは これ迄50年近く実生株を栽培していますが、この様な 秋に葉を出して 冬を越す現象を2件も見たのは 初めてです。ボタンには 二季性の寒ボタンが有るのですが、この株は 以前から毎年9月に 新芽を出していた訳でないので、それとは違うと思います。ただ ボタン全体に 二季性の形質を秘めている様で、夏の暑さが厳しくなって来ると ちらほらその形質が現れるのかも知れません。

ロウバイの現象

散歩で歩く道の民家の塀越しに、ロウバイが咲いているのを 2件見かけました。かなり離れた2軒のお宅なのですが、何れのお宅のロウバイも 花と一緒に葉が付いているのです。ロウバイは この時期にはとっくに葉を落としている落葉樹です。

f:id:tanemakijiisan:20240124174206j:image別のお宅の株は、もっとしっかりした葉を付けていました。

 

これらの異常現象が意味するもの

これらの異常現象は、暖冬が普段より気温が少し上振れしたから、その為起きている現象とは違うと思います。長い間 色々な植物の実生株を栽培して来て、“遭った事が無い現象“ が起きているからです。これは暖冬によるものだけでは無く、やはり気候の温暖化によって起きている現象の様に見えます。

私には 植物達が温暖化が もう後戻り出来ない時点に来たと受け止めて、自分達の遺伝子の奥に秘めた 過去に何度も潜り抜けた温暖化対処策の遺伝子を、表に出して来たのではと思います。世界の気象学者達は その時点を、地球の平均気温が 産業革命時より 1.5℃上昇した時で、まだもう少し猶予が有るとしています。でも 植物達は「もう既に その時点は過ぎている」と言っている様に感じます。この様な環境の変化に対応する形質の現れは、普通の植物を栽培して 見ていても判りません。遺伝的な変化は 実生にしか現れないので、世代交代を繰り返しながら 実生株を大量に継続して観察していると、その変化が見えて来るのです。それも 自然界で現れても 直ぐに消されてしまう程の 僅かの株に現れて来るのです。この様な遺伝子の発現は、平常時でも 必ず極く僅か現れているのですが、今回の現れ方の比率は その比率を遥かに超えていたのです。植物達が この気候の変化に対応したのだとしても、余りにも早い今の変化には 到底対応出来ません。でも 人間がそこにほんの少しだけ手を貸してやれば、何とか生き延びられる植物は 沢山有る様に思います。また これらの現象は、植物達が 温暖化した夏の厳しい暑さを避けて、暖冬化した冬に 生き抜く場を見い出そうとしているのかも知れません。

この温暖化による異常現象は、植物だけで無く 虫の方に先に現れていました。十数年前から 異常に減少して、今では全く見られなくなった虫が 数多く有るのです。防虫対策が楽になったものも有るのですが、受粉作業は 大変になりました。これも温暖化の影響と思うと、この先何かとても不気味な感じがします。

この見解は 科学的なものでは無く、私の動物的な勘によるものです。この勘が外れていれば 幸いです。