キン(金)モクセイとギン(銀)モクセイ

住宅地の道を歩いていると、何処からとも無くキンモクセイの香りがして来る季節も、いつの間にか過ぎてしまいました。良く似た樹に ギンモクセイと言う花木が有りますが、両方共野生種では無く 庭木に良く使われる 昔からの園芸種です。今回はこの園芸植物がどの様に作られたか、私なりに想像してみました。ただし これはあくまでも私見で、一般に認められた定説ではありませんが それを書いてみました。

両種の出自

両方の品種共 中国の唐の時代よりかなり前に、中国南部で 花に強い関心のあった人が、野生植物のウスギモクセイの枝変わりから 増殖したと思われます。キンモクセイは ウスギモクセイの雌木に、色が濃くて香りの強い花を付けた枝変わりが現れたのを見付けた人が、その枝を採取して挿し木で増殖したと思います。ギンモクセイの方は ウスギモクセイの雄木に、白い色の 少し弱いが香りのする花を付けた枝変わりを見付けて、同じ様に増やしたと思います。私は以前は キンモクセイは 雄株から、ギンモクセイは 雌株からと 逆に考えていました。その理由は ギンモクセイには 稀に実が付いたという報告が有るのですが、キンモクセイには その様な報告は全く無かったからです。でも サンショウやヒイラギの様に、雄株に両性花を付ける例も出て来て それが変わりました。今年 4年振りに ギンモクセイを剪定したのですが、この株は以前 実が付いているのを見付けので、切った枝を全て丁寧に調べると、今回も4箇所から膨らみ始めた子房を付けた花柄が見つかりました。

f:id:tanemakijiisan:20231101231431j:image花が終わったばかりなので、子房はまだ大きく膨らんではいませんが、雌しべが有った証拠です。

比較の為 キンモクセイの方も ほぼ同じ量の枝を切って 花を調べてみましたが、肉眼では 中央の雌しべも 2本の雄しべも見当たりません。でも 撮っておいた写真を良く調べると、2個の短い雄しべと 中央に雌しべの痕跡の様な物が見えます。雄株の枝変わりから採取したのであれば、しっかり伸びた完全な雄しべだけでも、残っている可能性が高いと思います。多分 雌株の雌花の雌しべと雄しべが退化して、その代わり 花弁の色が濃く 香りが強くなったのでしょう。

f:id:tanemakijiisan:20231027170056j:imageキンモクセイの花です。完全な雌しべと雄しべは 見当たりません。

f:id:tanemakijiisan:20231027170118j:imageギンモクセイの花です。2本のしっかり伸びた雄しべは見られますが、雌しべは見られません。一般的な雌雄別株の雄株の雄花です。これはあまり知られていませんが、大抵の雌雄別株の雄株には、比率は極僅かですが 両性花を付ける株が多いのです。ギンモクセイは 以前にも実を確認した事があります。モクセイに近い樹木のヒイラギの雄株でも、一度 実を確認した事が有ります。

花の変化の度合いは、ギンモクセイの変化は キンモクセイに比べると、とても少なく 花の形態は 殆ど変わらなかったのでしょう。