イヌビワの発芽

双葉の小さい発芽苗は、何の植物の芽なのか 判別がとても難しいのです。庭の鉢やプランターに 良く出て来るのが、クスノキとエノキです。この様な良く見かける木の発芽苗は 見て直ぐ分かるのですが、偶に出て来る小さい種子の発芽苗は 中々見分けが困難です。今迄は目的外の発芽苗は、小さい内に 引き抜いていました。でも 色々な植物の種子を播いていると、中には播いた事をすっかり忘れてしまい、何本か引き抜いてから 種子を播いた事に気が付いた失敗が 何度も有りました。そこで最近は 小さな何か分からない芽が出て来ても、直ぐ引き抜かずに 暫く様子を見て 何の芽か分かってから、取り除く事にしています。今年はそんな発芽が 2本有りました。

アシガラサンショウの種子を播いたプランターに、3月中旬に サンショウに混じって、サンショウの半分くらいの双葉の芽が出て来ました。もしかしたら サンショウの小さい種類かもと思い、その成長の様子を見ていました。でも サンショウの方は 双葉の次に、小さい本葉 普通の本葉 大きい本葉とどんどん成長して行くのに、その芽は 暫く小さい双葉のままで 何の芽か分かりません。ひと月以上そのままでしたが ようやく双葉の間から芽を出して来ました。それが6月に入ると 其れ迄とは逆に、勢い良く伸び始めました。普通の大きさの本葉が出て来て、やっと何の木か分かりました。この芽は イヌビワでした。

f:id:tanemakijiisan:20230803094718j:image両隣りのサンショウに比べ 1ヶ月半の遅れた成長でした。イヌビワと分かって 成長が遅かった理由が 納得出来ました。イヌビワの種子は ゴマ粒より小さく、サンショウの種子に比べても 10分の1程の大きさです。そのサンショウでも 樹木の種子の中では 小さい方なので、イヌビワの種子が如何に小さいか 分かると思います。そのサンショウは 種子の養分を使って、発根と双葉を作り その双葉が作る養分も加わって、直ぐに本葉を出す事が出来ます。一方イヌビワの方は 種子がとても小さいので、発根だけで精一杯で 小さな双葉しか作れないのでしょう。ですから 小さな双葉で本葉を作る養分を貯めるには、1ヶ月半の時間がかかってしまうのです。でも 本葉さえ作れれば、その後の成長は サンショウより早くなります。

種子の大きさを小さくして 成長は遅くても その数を増やすか、種子の数を減らしてでも その種子を大きくして 苗の成長を早くするかは、その植物の生存戦略として 選んでいるのでしょう。その究極の大きさは ランで、種子は埃の様な小さい物で 発芽に使う養分は付けていません。その為 膨大な数の種子が 埃の様に遠くへ飛んで、幸運にも上手く養分を作ってくれる菌類にくっ着いた極僅かの種子だけが生きられるのです。

このイヌビワは 野性のイチジクで 雌雄別株の樹木で、特定の蜂に頼った 特殊な方法で受粉を行っています。このイヌビワが 良く見かけられると言う事は、その蜂とその実を食べてくれる小鳥が まだ健在だと言う事で、虫が減少している中で 少し安心しました。

この何だか分からない発芽がもう1本、ウメを播いたプランターの中に有ります。分かり次第 また投稿します。