デワノマタタビの発芽

かなり以前に ミヤママタタビの発芽について投稿しましたが、今回はデワノマタタビの発芽条件について投稿します。

ミヤママタタビの発芽条件

ミヤママタタビは 高山帯の厳しい寒冷地に自生するマタタビ科の植物です。平地の暖地で普通に種子を播いても 発芽する事は有りません。そこで 種子を自生地の環境に合わせた “低温処理“ をしてから播いてみると、発芽する事が分かりました。その条件は 《ー20℃で3週間 その後 4℃で 1週間》保管してから播く事で、前回これを報告しておきました。

デワノマタタビの発芽条件

デワノマタタビ日本海側の豪雪地帯に自生するマタタビ科の植物です。このデワノマタタビも 普通に種子を播いてみたのですが、2度やっても 全く発芽しませんでした。先にミヤママタタビの結果が出たので、デワノマタタビも自生地の環境に合わせた低温処理をする 前処理が必要では無いかと考え、その実験を去年からやってみました。その自生地の豪雪地帯の地表の特性は、厚い雪に覆われて保温されて いるので 冬であっても強い低温にはなりませんが、その低温の期間がとても長い事です。そこで その具体的条件として、種子を採取後直ぐに《ー1℃で4ヶ月 その後 4℃で1週間》の前処理としました。

前処理

去年の11月上旬に、近くのキューウィフルーツの雄株の花粉を受粉して出来た大きく種子の入った果実から種子を採取し、前記の前処理を施しました。比較の為に ミヤママタタビと同じ前処理も、別に同じ数だけしておきました。

種播き

長い前処理が終わった 3月中旬に、鹿沼土の苗箱に播いておきました。比較用に用意したミヤママタタビと同じ前処理の種子は、前処理後直ぐに 同じ苗箱の半分に 去年の12月に 先に播いておきました。

発芽

今年の4月に 沢山発芽して来ましたが、苗箱の近くに有った草の種子が混ってしまった様で、似た様な少し大きな芽も 多く出て来ました。その苗の本葉の付き方をよく見ると、互生では無く 対生していましたので、デワノマタタビとは違う草ですから 取り除いておきました。比較用に播いたミヤママタタビと同じ前処理のものは、全く発芽しませんでした。所期の前処理の種子は 沢山発芽し、その発芽率は 多分8,9割くらいでしょう。やはり自生地に合った低温処理でないと、発芽出来ない様です。

f:id:tanemakijiisan:20230513132214j:image下の大きい苗は 混ってしまった草の芽です。下半分にミヤママタタビと同じ前処理をした種子を播いたのですが、1本も芽を出しませんでした。

発芽抑制機能による生存戦略

ミヤママタタビもデワノマタタビも、何故この様な発芽抑制機能を具えているのでしょう。ミヤママタタビは 平地の川沿いに自生しているマタタビから派生し、競争相手の少ない 冬の寒さが厳しい高山地帯に進出した植物です。デワノマタタビは 中低山の山野に自生している サルナシから派生し、競争相手の少ない豪雪地帯に進出した植物です。いずれの植物も 温暖な平地に植えても良く育つのに、今の自生地から出て行きません。それは 温暖な平地でも良く育つと言っても それは人間に保護されているからで、もし自然の状態に任せれば 生存競争に敗れて消えてしまうのでしょう。環境の悪い所に進出した植物は、環境の良い所に戻らない様にする 何らかの機能を具えているものです。このミヤママタタビとデワノマタタビも、自生地に合った種子の低温処理が それに当たるのでしょう。即ちその様な低温に遭わない場所では 種子が発芽できない様に、故意に仕組まれているのです。これは 植物達の巧妙な生存戦略なのでしょう。