ボタンの二季性についての考察

実生のボタンについては 50年以上に亘って 多くの株を観て来ましたが、寒ボタンについては 全くその経験は有りません。去年 寒ボタンらしき株が現れたので、寒ボタンについて 色々情報を調べてみました。その際 ボタンの二季性について 色々と考察してみましたので、その考察について 書いてみました。ただ この二季性については 観察や事実に基づいたものでは無く、あくまでも頭で考えたものですので そのつもりで読んでみて下さい。

二季性のボタン

普通のボタンは 草木によく見られる 春咲きの一季性で、4月に芽を出して 4月下旬から5月上旬に開花し、7月に種子が熟し 8月に葉が枯れます。春に出る葉と花は、前年に葉で作られ 根に蓄えられていた養分を使って作られます。その年に 葉で作られる養分は、種子を作る為と 来春の出葉と開花の為に 根に蓄えます。

もしこれが二季性になると どの様なボタンになるのか 考察してみましょう。葉は 4月と9月に出して、花は 5月と10月に咲くのでしょう。1季目の春に出た葉で作られる養分は、7月に熟す種子に使うのと 2季目の9月の出葉と10月の開花の為に 一旦根に蓄えます。8月に葉が枯れて 9月から2季目に入り、再び同じ事を繰り返します。葉の活動の強さは、当然1季目の春から初夏にかけての期間は強く、2季目の秋から初冬にかけての期間は 弱くなります。従って根に養分が多く蓄えられている 2季目の方が、1季目よりも 葉も花も大きくなるのでしょう。翌春の1季目は、前年の10月から翌1月にかけては、気温も低く 日照時間も短いので、根に十分な養分を蓄える事が出来ていないので、葉も花も小さめになるのでしょう。ただし 2季目の方が 大きいとは言っても、1季目の葉が大きく無いので 少し大きい程度でしょう。普通の一季性のボタンと比べると、二季性は 全体的に かなり小さめで 観賞用の花としては 見劣りするかも知れません。樹勢は 普通のボタンの活動量も期間も 2倍になるので、根や葉は かなり強くなくてはなりません。特に2季目の葉は 低温に耐える 強いものでなくてはなりません。

「完全な二季性のボタン」は、この様になっていると考えるのですが、この様な二季性のボタンが 実際に存在するのかは、2季目の葉の活動が 十分出来るのかにかかっています。これについては 去年に偶然起きた事例で、7月に出た葉が 1月末迄 低温に耐えて持っているので、この葉が 低温でも活動出来て 根にある程度の養分を蓄えられていれば、その可能性はあると思います。

寒ボタンの二季性について

寒ボタンは 二季性である事には間違い無いのですが、完全な二季性では無く 不完全な二季性の様です。それはもし 寒ボタンを自然に任して 年に2度花を咲かせようとしても、どうしてもどちらかの花が 小さい蕾のままで、花が2度は咲かないと言われているのも、その不完全性の為でしょう。寒ボタンは、葉が働くのは1季目だけ 花を咲かせるのは2季目だけと、役割を2季で分担しています。また 根の養分の出し入れは、蓄えるのは1季目だけですが、それを消費するのは2季目の花と 翌1季目の葉の展開の2回に分けています。この様に不完全な二季性なのです。この不完全性は、寒ボタン独特の手入れ法による面も有りますが、地上部が二季性であっても 接木されている根が、たとえボタンの根を使ったとしても それが一季性である事によるのかも知れません。でも1季目の春の花は摘み取り、2季目の寒中にだけ 大きな花を咲かせる栽培法としては、この様な不完全な二季性であっても 全く問題有りません。2季目の9月に出る葉の方は その不完全性の為、しっかりとした大きな葉を付けられないそうですが、その葉は 開花の時期を遅らせる為 取ってしまうので、その方が根の養分が温存出来て 逆に都合が良いのでしょう。

完全な二季性ボタンが存在する可能性とその価値

不完全な二季性ボタンが存在する以上 この様な完全な二季性のボタンは、必ず存在するか 又は過去に存在したと思います。ただ その出現頻度は 不完全な寒ボタンより更に低いのでしょう。種子を播いて育てる人は 品種改良家以外 殆どいないので、その出現頻度は ほぼ0なのでしょう。でも もしその様な完全な二季性のボタンが現れても、それを寒ボタンと同じ取り扱いをすれば、寒ボタンとして使えます。ですから 今有る寒ボタンに接ぎ穂を提供した元の実生株の中には、この完全な二季性のボタンが 極僅かですが含まれている事も考えられます。でも 品種改良家が その完全な二季性の株の存在に気付いても、花も小さく 開花時の秋には競合する花が沢山存在し、寒ボタンの様な知名度も話題性も無く、繁殖に手間と時間のかかる物は 商品価値が低いので、完全な二季性のボタンとして扱わないでしょう。

でも 私にとっては 完全な二季性ボタンを 自然のまま二季性で栽培する事は、寒ボタンとして栽培するよりも ずっと魅力的で重要な事なのです。植物が二季性になるには、1季の活動期間が 6ヶ月以下のものに限られます。また どの様な6ヶ月に区切っても、1季目と2季目は 必ず気候条件が 真逆になりますので、その環境の中で 一つの個体が同じ事をするのは、植物にとっては 非常に難しい事なのです。樹木でこの条件を満たす物は 極僅かしか無く、ボタンは その二季性になれる条件を満たした とても希少な樹木なのです。宿根草ギョウジャニンニクで、1度だけ 二季性を現した株が有ったのですが、翌年からは又元に戻ってしまいました。花だけ二季性のサクラや 二毛作の作物は有りますが、完全な二季性の植物は とても珍しいので、是非とも見てみたいものです。

この考察の検証

去年現れた 寒ボタンらしき株について、二季性がどの程度有るのか 現在この考察に基づいた観察をしている最中です。完全な二季性の可能性は 殆ど無いと思いますが、僅かでも二季性が有れば この検証の参考にはなると思います。