最近の害虫事情

我が家では害虫を駆除するのに、農薬は一切使いません。害虫は全て手で捕まえて駆除しています。この方法はとても大変ですが、害虫の発生状況を正確に把握出来ます。その害虫の発生状況に、最近変化が見られますので、その変化について紹介します。

虫の捕り方の要点

害虫を農薬を使わず手で捕まえるのは、ただ闇雲に虫を探していてはとても大変で無理です。でも虫の習性をよく知って効率良く監視していれば、趣味の程度の規模であればこの方法も可能です。どの植物の,どの場所に,どの時期に,どの様に卵を産みつけるか、そして幼虫と成虫の活動形態をよく知っていれば、必要な時期だけ毎日ほんの僅かの時間を割くだけで、害虫の被害を最小限に抑える事が出来ます。

害虫の習性と捕り方

我が家によく来る主な害虫について、個別に説明します。

・毛虫類

大抵は若葉の展開し終わった時期に、鳥から目立ち難い下の隅に卵を産みつけるか事が多いので、その時期はその様な場所を毎朝ちらっと見ておきます。卵から孵って1週間程は、集団で活動している事が多いのです。特に葉の裏は要注意です。他に散らばらない内に捕まえるのがコツです。

・コウモリガの幼虫

コウモリガはとても原始的な虫で、時期や食害植物を選ばず、被害が致命的になり易い厄介な虫です。産卵は夜に飛びながら産み落としていくので、この名前が付けられたそうです。ですから特定の場所や時期や植物を監視する方法は使えません。孵化直後の幼虫は、太さ1㎜ほどの草の茎に食い入ります。成長に合わせて次々と太い茎の植物に移っていきます。食い入った穴は食いカスで紡いだボロ布の様な幕で塞ぐので、その様子でコウモリガと判別出来ます。この虫の穴はいくら深くても真っ直ぐです。カミキリムシ等は深くなると穴がクネクネと曲がっています。このコウモリガを捕まえるには、穴の大きさに合わせた柔らかい銅線を、先端を鍵状に曲げて穴に差し込み、奥にいる幼虫を引き摺り出して捕まえます。大きな幼虫になると、最初に周りの樹皮を全周食害してから、幹の中心に穴を開けて食い入ります。この状態になると、被害は甚大に成りがちです。どんな樹木でも食い入りますが多少の好みは有る様で、クサギがよく食害に遭っているのを見かけます。幼虫の最後は太い木に食い入って、そのまま蛹になって出て来ます。この被害を食い止めるには、庭で元気がないか枯れそうな小さい草を見かけたら、必ずその根元を見てボロ布の様なものが付いてないか調べます。もし不要な草だったら直ぐに引き抜いて、中に虫がいないか確かめます。大事な草であれば、銅線を使って捕まえます。まだ草の内にいる間に捕まえておくのが、大事な樹木を食害されないコツです。

・ヨトウガの幼虫

これについては以前紹介した通りです。

・プドウのシンクイムシ

この害虫の正式な名前は知りませんが、多分小型の蛾の幼虫で、夏の終わりから秋にかけて、ブドウの冬芽に卵を生みつけます。初冬になると孵化し、蔓の外側の枯れた皮の下の新しい皮を、2㎜程の幅で先端の方に食い進んでいきます。食いカスも出さず穴も無いので、外観からは分かりません。プドウの栽培農家ではこの害を防ぐ為、剪定を終えた蔓を軽く曲げて、古い皮を弾けさせてその皮を剥がします。その皮の下に虫が居れば捕殺します。プドウにとっては古い皮でも木の保護になるのに、剥がされてしまって迷惑な事でしょう。この虫は一つの芽に居れば、必ずその前後の芽にも産みつけているので、良く注意して調べます。もしこれを捕殺せずに放置しておくと、新芽が伸びて1m程になった時、突然同じ枝から伸びた新梢が萎びて来ます。その原因はその元の枝に居たシンクイムシが、皮の部分から蔓の中心部に食い入ったからです。木が若いと冬芽の無い根元近くでも食われ、コウモリガと同じ様な致命的被害を受けます。

最近の害虫の発生状況

これらの害虫の被害が、ここ数年変化して来ました。それまではいくら徹底して捕っても、毎年ほぼ一定数発生していました。それは多分隣接する山から入って来る数だったと思われます。山は誰も手入れしないので、自然発生の状態です。この被害が数年前に何となく減っている様に感じました。それを意識して注意深く観察していると、少しづつですが確かに減っていました。それを裏付ける様に、それまではヤマブドウの揷し木苗を庭に植えると、1,2m程に成長すると必ず根元を虫に食われて、それ以上大きく成長出来ませんでしたが、3,4年前から虫に食われなくなって大きくなり、去年初めて花を付けるまでになりました。そのヤマブドウは今のところまだ虫の被害は受けていません。この傾向はブドウのシンクイムシに限らず、毛虫やヨトウガやコウモリガも同様です。今年はそれらの虫の被害は、まだそれぞれ1件だけしか遭っていません。数年前までは多少の増減はありましたが、毎年5,6件は有りました。ただどの虫も減っているわけでは無い様です。

変化の原因

この変化はこれらの虫を徹底して捕殺したからではないと思います。隣接する山に何か変化が起きていると思います。考えられる原因は、気候の温暖化がこれらの虫が生き残れない環境を、作り出してしまったのかも知れません。ただ何故温暖化するとそうなるのかは、まだ良く分かりません。

変化の影響

これらの害虫が減るのは、私にとっては栽培が楽になって嬉しい事ですが、でもそう単純にはこれを喜べません。山にこれらの虫が減ると言う事は、自然界の均衡を壊す事になるかも知れません。例えばこれらの虫を餌にしていた小鳥達は、その数が減るかも知れません。するとその小鳥が果たしていた、別の役割が出来なくなってしまいます。農薬を使っていた人には、この変化に気付かないでしょうが、もしかすると大変な変化かも知れません。

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コウモリガの被害に遭ったボタンの木

 

次回は樹木に優しい支え方を紹介します。