冬至梅

冬至梅が咲き始めました

冬至梅″と言うのは品種名ではなく、冬至の頃に咲き始める早咲きの梅の総称のようです。日本一早く開花する事で知られている熱海の梅園は、その半分ほどが冬至梅です。私が20年ほど前に種を蒔いて育てた梅が、偶然冬至梅でした。この早咲き性も温暖化の影響を受けるる様で、10年ほどの間に1週間ほど開花が遅くなって来ました。これは気温がいつまでも高いので、落葉が遅くなってその分開花が遅くなって来たのでしょう。ところが今年は台風の被害もなかったのに、葉が一月ほど早く落ちてしまいました。その為開花が異常に早まり、12月の初めにはもう咲き始めてしまいました。花の数も例年よりずっと少ないので、何かの原因で木が弱ったのかも知れません。今年は新型コロナの為、他の梅の様子を見に行けないので原因は判りません。

ところでこの梅は、早咲き性以外にまだ二つの特異な形質を持っていました。その一つは青梅性です。この梅の母親が青梅の梅で、完全な青梅性を持った梅です。青梅性とは、種子が熟しても果肉は熟さずに、硬く緑色のまま秋になるまで枝に付いている形質です。花粉親は周りに有る普通の白梅と思われますが、やはり母親の形質をかなり継いでいる様です。早咲きの為5月上旬には種子は熟している様ですが、果肉は7月に入らないと黄色くなりません。7月中旬に実を落とします。そこで私はこの梅を5月中旬に採取して、梅酒用に使っています。この青梅性を持った梅は、昔は各地に在った様です。今の様に品種が流通せず実生株がずっと多かったせいでしょう。でも多くは厄介者と嫌われ、有名になったのは青梅と大阪のもので、大阪のものはすでに消えてしまったようです。もう一つの特異な形質は、強い自家受粉性です。梅は一般に自家受粉はしません。果実を採る栽培用の品種でも、自家受粉するのは少なく、実生の場合は更に少なくなる様です。この強い自家受粉性を持つ梅としては、他に座論梅が有りますがこれについては後日紹介させて頂きます。この梅のこの形質は、両親には全く見られない形質で、血統の何処かに在った形質でそれが偶々現れたものと思われます。

この様に種子を蒔いて育てると、栽培用の株には見られない意外な形質のものが出てくる事があります。手間と時間がかかりますが、これが種蒔きの醍醐味です。

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次回はヤマユリを紹介します。