ヤマユリの開花

ヤマユリの開花の時期になりましたので、その開花状況を紹介します。

ヤマユリの種類

我が家には現在3系統で総数50株以上のヤマユリが栽培されています。この3系統のユリはすべて、自生地から採取した株が暑さで消えてしまった後に、それらが残した大量の種子から生まれた実生株で、耐暑性を持った3株だけが生き残り、その3株から木子で増えたユリ達です。内2系統は強い耐暑性を持ったユリで、両者には開花時期に10日から2週間の差が有ります。早く咲く方を「ヤマユリA」、遅く咲く方を「ヤマユリB」と呼んでおきます。この中間の時期に咲くのが、「ベニスジ系」で、これは弱い耐暑性しか持っていません。ヤマユリAの株は、他の系統に比べて木子は僅かしか出来ません。一昨年までは花の咲く株は、最初に見つかって毎年咲いていたヤマユリAの1株だけでした。去年はこれに加えて、ベニスジが2株咲き始めました。今年からその2系統に加え、ヤマユリBの系統も蕾を持つ株が多く見られますので、何株か咲く様になりそうです。ヤマユリAは、今年からその木子から育った株も咲く様になり、花の咲く株は2株になりました。ヤマユリBは、Aより葉の緑色が濃く、枯れる時期も遅くなっています。その為生産性はAより高く、3系統の中では最も良く木子を付けるので、最も遅く見つかってまだ花も咲かないのに、株の数は一番多くなっています。

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ヤマユリAの今年から咲き始めた木子株の花

受粉作業

ヤマユリは自家受粉はしません。木子でよく増えますが,増やしても種としては増えた事にはなりません。ましてや温暖化に耐える為の増殖には、殆んど役に立ちません。種として耐暑性を持たせるには、種子による繁殖が必須の要件です。今年からやっと耐暑性の有る株同士の受粉が可能となりました。でも 花期がずれていると、早く咲くAの方の花粉を、遅く咲くBの方の雌しべにかける受粉は出来ますが、その逆は出来ません。遅く咲くBの方の花粉を、早く咲くAの方の雌しべにかけるには、前年のBの花粉を保存して置いて使うしか有りません。ですから今年は、Aの花粉をBにかける受粉しか出来ません。この花期がずれる形質は、受粉するにはかなり厄介な形質ですが、種の保存の面から見ると、とても有利な形質ですので、大事にしなければなりません。今年はヤマユリAにかけられる花粉としては、強い耐暑性は有りませんが、去年のベニスジの花粉が有りますので、受粉しておきました。この受粉によって出来る種子を蒔くと、その中の強い耐暑性を持った株だけが育ち、ベニスジの形質を持った株が必ず出て来ると思います。こうする事によって、ベニスジの形質が引き継がれます。また来年からは「AからBに」と「BからAに」の、両方の受粉が出来る様になります。今有るベニスジは強い耐暑性を持っていませんので、花後に暑い気温に耐えきれずに枯れてしまい、ヤマユリAの花粉はかけられても種子は得られません。ただ しっかりと固めた炭床に植えられて、施肥もしていませんので、上体が枯れても球根は残り、木子も良く出来ます。ヤマユリは柔らかい用土や肥料を与えると、球根が腐って消滅してしまいますが、暑い気温になるとこの傾向が更に強くなります。

花粉の保存

各系統の花粉については、少なくとも1花は、開花した日の午前中に雄しべの葯を採取して保存します。保存容器は、直径と高さが5㎝ほどのガラスの小瓶に、底に家庭用の乾燥剤の粒を敷き詰めて、その上にティシュペーパーを敷いた物です。その小瓶の中に、採取した葯を入れて、しっかりと蓋をして保存します。その年には受粉しない遅く咲いた花の花粉は、その保存容器を家庭用の冷凍庫に入れて保存します。この様にすると1年間は生きたまま花粉を保存出来ます。早く咲いた花でも、花期が4,5日以上ずれている株の受粉をするときは、そのままの花粉を使うと花粉が古くなるので、開花直後の葯を採取して保存容器に入れて、冷蔵庫に保管して置きます。遅れた方の花が開花したら、その一部を使って受粉します。残りは保存容器を冷凍庫に移して、翌年まで保存して置き予備の花粉として使います。

 

次回はヤマユリのベニスジの開花を紹介します。