デワノマタタビの苗の選別

去年の春に発芽した デワノマタタビの苗の30本程が、播き床の中で育ちましたので その一部の植え替えをしました。数が多いので 何時もお願いしている研究者に、今回も引き取りを打診してみたのですが、既に畑が一杯で 引き受けは 無理との事でした。そこで 折角発芽してくれたので、出来る範囲で 鉢植えで栽培してみる事にしたのです。その様子を投稿します。

f:id:tanemakijiisan:20231224123404j:image 今回の種播きは 播き床の中を2つに分けて、2通りの低温処理をしたデワノマタタビの種子を、半分づつに播いてみました。写真の手前の右半分には ミヤママタタビと同じ -20℃で3週間とし、先の方左半分には -1℃で 4ヶ月の処理をしています。手前のミヤママタタビと同じ処理では、ミヤママタタビであれば 発芽しますが、デワノマタタビなので その処理をすると 全く発芽しませんでした。先の方 写真の左半分のデワノマタタビの種子は、発芽率が5割以上で 発芽しています。ちなみに ミヤママタタビやデワノマタタビは、当地で 低温処理せずに 普通に播くと全く発芽しません。

この苗は デワノマタタビの果実から採った種子を播いたものですが、交配種の種子の発芽条件は 母方のものになります。デワノマタタビは 雄株が無くても 果実は成ります。この形質は マタタビ属の中で、この種だけの特殊な形質です。ただ 受粉しなかったものは、受粉したものに比べ 果実の大きさが 半分くらいにしかならず、種子は出来ません。受粉は デワノマタタビでなくても、他のマタタビ科の花粉 例えばキューウィの花粉でも出来ます。近くには キューウィを栽培している人はいますが、それ以外のマタタビ科の植物を栽培している人はいませんので、この株も何処か近くの キューウィの雄株の花粉を受粉して、大きな果実を成らせているのでしょう。この苗は その僅かに採れる大きな果実から採取した種子を播いたものです。ですから この苗も デワノマタタビとキューウィの交配種の筈です。実生株ですので 出来た苗が 30株有っても、一つとして同じ形質の株は 無いと思います。有るかどうか分からない 商品価値の高い株を、この30本の中から 選び出すのは 至難の業です。理想的には 全ての株を 実が成る迄育て、その果実を確認して 株を選別する方法ですが、現実には 全ての株を栽培する余地は 我が家には有りません。家で育てられるのは、精々プランターで育てられる 2本でしょう。ですから この中から 2本を選ばなくてはなりません。それも どれが雌株なのかも分からない状態で、選ばなくてはなりません。全くの運任せになるのですが、私はこう言う時は 何かちょっとした気になる点が有るものを選んでいます。

今回は その外観から選ぶ事にしました。写真の中で 白い紐を結んである2本が、他のものより 茎が太く ずんぐりした姿の株と 蔓を良く伸ばしている株なので、その2本に決めました。

f:id:tanemakijiisan:20240106150505j:image後は選んだ株が 雌株である事を祈るばかりです。残りの株は 残念ですが、廃棄処分する事になります。

木性蔓植物の開花を早める特殊な蔓誘引法については、以前詳しく投稿しておきましたので ここでは省きます。

この苗を作った趣旨は、種子の発芽条件を調べる為で、新しい果物を作り出す為では無かったのです。先に ミヤママタタビが “平地の暖地でもよく育つのに、何故高地の厳しい寒冷地にしか自生しないのか“ が気になって調べてみました。その理由は 種子の発芽条件をとても厳しいものにして、環境の良い地域に進出しない様にしているからであると、その発芽試験で確認出来ました。環境は良いが 競争の厳しい地域よりも、環境は厳しくとも 競争の少ない地域を選ぶ「生き残り戦略」だったのでしょう。

そのミヤママタタビの戦略が判明すると、デワノマタタビも 同じ様に 自生地から出て行かない「生き残り戦略」を採っているのではと考えて、今回の種播きは その発芽条件を確認する為の発芽実験だったのです。デワノマタタビの自生地は 日本海側の豪雪地帯で、深い雪の下は それ程冷え込みませんが、低温の期間がとても長い地域なので、それを模した低温処理条件にしたのです。結果は 予想通りでしたが、ただ 出来てしまった苗の処分には 悩んでいます。