ユリの平衡感覚

普通ユリの花は、茎の向きに拘らず 必ず水平方向を向いて咲き、種子の鞘は 必ず垂直方向の真上を向く様になります。ユリの茎の傾きは、立地や茎の太さにもよりますが、蕾が大きくなるに従って その重さによっても 変化して来ます。にも拘らず 花は必ず水平方向を向いていますので、ユリは 蕾が開く直前の茎の向きを基準にして、水平方向を決めているのです。では 花後の子房が直ぐに真上を向ける時の動きは、何を基準にして 垂直方向を決めているのでしょうか。その基準は やはり花と同じく、開花直前の茎の向き基準に使っていると思います。それは次の様な実験で判ります。

茎が細く 花が1輪で 茎がしなり易い株を選び、蕾が少し大きくなり始めた時に、下に垂れている茎を 上に起こす様に支柱に縛り付けてやります。その状態で花を咲かせると、やはり花は水平に向いて咲きます。花が終わって花弁が落ちたら、茎を支柱から外してやります。すると 茎は元の様に下に垂れてしまいます。その状態で 種子の鞘になる子房の動きを見ていると、下を向いた子房は 垂直に上を向かず 斜め上までしか向きを変えず、そのままの向きで 鞘が 大きくなって来ます。その茎を 花が咲いた時の茎の状態に持ち上げてみると、鞘の向きは 真っ直ぐ上向きになります。

この事から 鞘の垂直の基準は、花が咲いた時の向きを基準にしている事が裏付けられます。

f:id:tanemakijiisan:20220830152346j:image

普通のユリの鞘の向きで、茎は垂れ下がっていても 必ず真上を向いています。

f:id:tanemakijiisan:20220830152538j:image

花が咲く前に茎を起こし、花が終わってから 茎を下に戻した株の鞘です。

この様な理由から ユリの支柱の付け方は、花が重いので 茎が折れない様にする支えは、茎を持ち上げずに そのままの状態で、支柱に縛り付ける方法が良いのです。こうすれば 種子は真っ直ぐ上を向いて稔り、熟した時に種子が下にこぼれ落ちる事がなくなります。