ギョウジャニンニクの暖地に適応した株(以後「暖地株」と呼びます)については、これ迄に 何度かに亘って その創り出した過程を投稿して来ました。今回は その暖地株の発芽率について、考察した内容を投稿します。
その暖地株は 去年からは 本格的に種子が採れる様になりました。ただ 本格的と言っても 事業規模では無く、栽培実験としての規模での話です。一昨年迄は 5粒から精々10粒くらいでしたが、去年は 花房が7本で 200粒程の種子が採れました。暖地株の場合は、人工授粉は 全くしていません。ギョウジャニンニクの花に 虫が来ているのは 見た事は有りませんが、多分見ていない時に 虫は来ているのでしょう。虫は見なくても 暖地株は、寒冷地株より 遥かに結実率が高くなっています。
24年4月末の花の状態です。今年は 花房が 大小20本近く出来てますが、咲き出す時期や花房の大小や柄の長さが バラバラで 揃っていません。一つの房の中でも 熟す時期に差が出ています。花は5月いっぱい見られ、初めの方に咲く花は 良く実を付けますが、後の方に咲く花は 殆ど実は付けません。
5月中旬の状態です。寒冷地産の株では、花が咲いても 種子が出来る房は殆ど無く、出来ても1個か2個だけです。ですから 虫が少なくこんな疎でも 結実率は、暖地株は 格段に良いと言えます。種子は全部で 300粒以上採れると思います。
そこで 気になるのが 去年の発芽率なのです。一昨年迄は 数は少なかったのですが、発芽率は 7割以上と意外と高かったのです。でも 去年播いた種子の発芽率は、5割弱となっていました。
発芽率の低い原因
この発芽率が低いのと 播いた種子の数の多さとの関連は有るのでしょうか。数の少ない時は 数度に分けて、熟した房だけ種子を採取し、直ぐに播き床に播いていました。去年は 全部の房の種子が割れて見える様になってから、房を刈り取って 種子を集めました。その約200粒の種子は、2箱の播き床に播きました。結果は この春に 90本程が発芽し、発芽率は 5割を切ってしまいました。
去年100粒播いた播き床で、50本程発芽しました。今年は もうこれ以上伸びず そのままです。
北海道や東北地方の栽培業者は、多量に扱うので 当然一度に刈り取り、一度に播いているのでしょう。その発芽率は 3割程の様です。発芽率を上げる為に、前処理として 種子を1週間程 流水に晒しているそうです。それをしても 発芽率のこの低さなのは、ギョウジャニンニクは 余程発芽し難いのでしょうか。私はこの流水処理はしていませんが、これよりは かなり高い発芽率になっています。
どうやら ギョウジャニンニクの種子は、完熟後直ぐに発芽力が下がり始める性質を持っているのでしょう。栗の実は イガから外れて 3日も地表に放置されれば、発芽力は殆ど無くなってしまいます。これは欠点では無く 敢えてその様にしているのです。落下後 直ぐに動物の巣穴に運ばれた実だけが 発芽出来る様にして、親株の下で 子が育って 競争者が増えるのを 避けているのです。ギョウジャニンニクの場合もこれと同じで、親株の下で発芽しない様にしているのだと思います。ギョウジャニンニクの繁殖法は、分球の他 株の周辺については、根の途中に木子を作る 特殊な方法で、株を増やしています。ギョウジャニンニクは 種子を小鳥等に食べさせて 消化を免れた種子が、糞と共に播かれて発芽する繁殖法で、種子の方は 遠くに広げる役割を担っているのだと思います。
ギョウジャニンニクの発芽率の低いのは、早く熟した物と 後から熟した物を 一緒に播く方法を採ると、先に熟した種子は 発芽し難いので 全体の発芽率が下がってしまうのでしょう。
発芽率を高める播き方
そこで今年は 次の様に 種播きをして、その影響を確認してみます。
・種播きの準備として、発泡スチロールの箱で播き床を作り、そこに 3cm程の間隔で格子を描き、その交点に 楊枝を刺して置きます。
・種子が稔って来る時期になったら、3日毎に実を点検して 殻が割れて中の黒い種子が現れたら、房を刈り取らずに その種子だけを採取し、それを直ぐに 播き床の楊枝の所に埋めて、楊枝は取り除いておきます。
・播き終わった播き床には 乾燥防止の為、小枝のチップを表面に敷き詰めて 翌春迄待ちます。
この様にすれば 来年の4月上旬には この播き方の発芽率が判明し、種子の採取法と保管時間の短縮の効果が 評価出来ると思います。
気候の温暖化に対する応用
この栽培法は 気候が温暖化した際に、寒冷地で栽培するギョウジャニンニク栽培法にも 応用出来ると思います。