シイの実

10月に入ると、家の前のアスファルト舗装の道に、白い10cm程の円形の模様が、幾つも現れます。道に落ちたシイの実が、通る車に轢かれて出来た模様です。私の中では これを「シイの実マーク」と呼んでいます。同じ様なマークに、「クワの実マーク」が有ります。これは 山のクワの実が熟して、小鳥が食べて 糞を地面に落とすと、紫色のマークが出来ます。道路の此れ等のマークを見ていると、山に入って直接現物を見なくても、季節の変化が良くわかります。今年は この「シイの実マーク」が沢山見られましたので、シイの実について紹介します。

シイの実

シイには スダジイやコジイ等がよく見られます。常緑の高木で 硬い艶のある葉で、照葉樹林を構成する主要な樹木です。その果実は食べる事ができ、昔食料が乏しかった頃は、拾い集めた実を炒って食べていました。米が採れなかった 伊豆七島御蔵島では、昔年貢米の代わりに納めていたと聞きました。シイの実は 春に咲いた花は 秋にはまだ熟さずに、翌年の秋に熟します。つまり 1年半かけて 実を作っているのです。実は中のドングリを外皮が完全に覆っています。秋にドングリが熟すと、外皮が割けて中のドングリを落とします。シイはブナ等他の植物にもよく見られる、数年に一度 豊作になる実の付け方をします。毎年同じ様に実を付けると、実の殆どを動物に食べられて、食べ残しが出にくくなるので、この様な成り方にしていると考えられています。その為 1年半かけて、ゆっくり作る余裕があるのでしょう。シイの実は、ドングリの中でも 特に硬い実です。これを炒ると 更に硬くなります。シイの実は 木から落ちて そのまま4,5日置くと、乾燥により発芽能力を失います。これは クリの実と同じで、直ぐに湿度の高い動物の巣に運ばれた物だけが発芽出来るのです。巣の中で動物に食べ残された物が、発芽する様にしてあるのです。そのまま地表に残されて 発芽能力を失った実は、クリと同様に不味い味になります。発芽能力の無い物を食べにくくすれば、発芽能力の有る新鮮な物が残される確率は低くなります。

シイの実の食べ方

拾い集めたシイの実は、鮮度の落ちない内に 炒ってそれを保存します。炒り方は 始めに軽く水洗いをして、汚れをとります。それをフライパンで 弱火で炒っていきます。炒り始めると どんどん鬼皮と渋皮が 外れて来ます。中身の実が 焦げない様に、良くかき混ぜながら炒ります。ある程度薄く全体が色付いて来たら、炒り上がりです。粗熱を取ったら、渋皮の焦げカスやゴミを取り除きます。昔はこれを子供のおやつにしたそうですが、今の人にはとても硬くて食べられません。これを粉に挽くのですが、このままでは硬くて 大き過ぎて、石臼の目を傷めてしまいます。そこで この炒った実を、フードプロセッサーで ごま粒大まで砕いてから、石臼で少しづつ丁寧に挽いていきます。小麦粉の様な粉が出来ます。色は炒り加減にもよりますが、僅かに黄みがかった白い粉で、舐めると はっきりと甘みを感じます。昔はこれを和菓子の材料に使ったそうです。私はこれで クッキーを焼いています。その際 砂糖は小麦粉の場合の 1/3 以下にしています。焼き上がったクッキーは、小麦粉の場合より サクサクした感じになります。味は 美味しいのですが、やはり バターや卵の味が勝って、シイの実の香りは期待ほど有りません。やはり和菓子の方が向いているのかも知れません。

 

f:id:tanemakijiisan:20211025121040j:image

 

次回は イスノキの虫癭を紹介します。