ヤマブドウ

関東近辺ではヤマブドウは、中高山の山奥に行かなければ見られません。ヤマブドウは紅葉する葉の中では最も大きくとても綺麗で、食べられる実も成るので人気のある野生の蔓植物です。最近はこの果実に多量に含まれるポリフェノールが注目されて話題になっています。このヤマブドウを暖地の平地の家の庭で栽培出来るのかやってみました。

栽培のきっかけ

二十数年前に秋田県の樹木調査に参加した際、家で栽培してみようと蔓を採取して来ました。揷し木が活着して蔓がよく伸びたのですが、全く花を付けてくれません。そんな時アケビの蔓で、花を早く咲かせる誘引法を見つけたので、早速その誘引を試してみました。するとその誘引後の翌々年に突然沢山の花を付けました。

ヤマブドウは雌雄別株?

でもその花を見ると、雄しべだけで雌しべが有りません。そこでもしやと思い植物図鑑を調べてみると、ヤマブドウは雌雄別株であることが判りました。私は高校生の頃、家の畑でブドウを作った経験が有りましたので、ヤマブドウもてっきり両性花だと思い込んでいました。そこで暫くは山歩きする度に、雌株を見つけては採取して挿木してみました。自生地で観察して分かったのですが、実のなるヤマブドウはとても少ない様です。初めは雌株の割合が低い為と考えたのですが、それを確認しようとヤマブドウの多く生えている林道で、春に花を調べてみました。すると意外にも雄株は考えていた程多くは無く、僅かに多い程度でした。多分雌株は花が咲いても、中々実が付かないのでしょう。数年に一度しか実を付けないのかもしれません。サルナシ等にも同じ様な傾向が有りますが、環境の良い暖地の平地で栽培すると、毎年良く実を付けます。これらの事からヤマブドウは雌雄別株で、そのら割合はほぼ同じくらいの植物でした。

ヤマブドウは平地でも実が採れるのか

このヤマブドウはサルナシ等に比べると、揷し木の活着率は良くありません。揷し木が上手くいって少し大きくなると、シンクイムシにやられてまた根元の方から新しい芽を出して、その繰り返しでついには枯れてしまいます。雄株は虫にやられても大きく育ったのですが、雌株はどれも虫に弱い様です。暖地の冬は寒さが厳しくないので、虫が越冬出来てしまう様です。もしかするとこれが暖地で自生しない理由かもしれません。ところがこの数年は気候が変化した為か、虫の被害が目立たなくなりました。何回か被害を繰り返していた株が、数年前からやっと大きく伸び出して、去年初めて花を3房付けました。内2房から3個の実が稔りました。少し離れた場所に在る最初に植えた雄株の花粉が、上手く飛んで来ているのでしょう。今年はかなり多くの房が見られますので、数年すればもっと実が止まる様になる事を期待しています。

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園芸種のブドウ

園芸種の果物は、両性花が一般的です。でも野生の植物では、雌雄別株がかなり有ります。ブドウも園芸種は両性花ですが、野生のブドウの仲間は雌雄別株です。このヤマブドウの雌雄別株を知ってから気付いたのですが、人間が初めて作り出した果物であるブドウは、野生の雌雄別株のブドウから両性花の株を作り、それを色々改良したのではないでしょうか。雄株ではその株が持っている果実に関する形質は、全く外には現れません。ですから交配によって期待する果実の成る株を得ることは、非常に困難です。文字も設備も情報も無い時代の古代人に、そんな知識と技術が有ったのかが疑問ですが、それでも両性花の株の作出と改良をやったと考えるのが最も合理的です。古代人は我々現代人より遥かに鋭い自然観察力を持っていた様です。私も特別な設備を使う事なく、雌雄別株のサンショウから、両性花のアシガラサンショウを作ることが出来ました。初めは古代人が両性花のヤマブドウを探し出して、それを使って改良して行ったと思っていました。そこで十数年かけて両性花のヤマブドウを探してみましたが、どうしても見付け出すことは出来ませんでした。ですからこのサンショウの経験から考えるとそうではなく、雄株に付く僅かの両性花の実を見付けて、それを使って両性花の株を作り出したと思う様になりました。雌雄別株の植物の雄株には、思っていた以上に両性花が付いている様です。多分古代人もこの事に気付いていたと思います。

鳥が蒔いたブドウ

6年ほど前に建物の横に有る幅80cmほどの空き地に、蒔いた覚えの無いブドウが生えて来ました。どんなブドウが成るのか育ててみようと思い、支柱を立てて建物に沿わせておきました。葉の感じはデラウェアに似ていました。2年前に建物の2階の廊下まで伸びた枝に、初めて花を4房付けましたが実は止まりませんでした。去年は花の数が増えて、実も少し止まりました。実はデラウェアの1.5倍ほどで色は同じ様でした。味は甘味も酸味も普通のブドウと変わらないものでした。今年はもっとしっかりと実がつくのではと期待しています。多分このブドウは小鳥が蒔いたものと思いますが、園芸種の実生のブドウは、凄く良いものが出来ると期待しなければ、そこそこの味のものが得られる様です。

 

次回からは、春から初夏にかけての庭の植物を紹介して行きます。