ウメの実のその後

ウメの実がだいぶ大きくなって来ましたので、その様子を紹介します。

トウジバイ

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このウメは珍しい形質を3つも併せ持った非常に珍しい株です。一つ目は冬至の頃花が咲き始める早咲き性、二つ目は実が梅雨明け頃まで青さを保って落ちない青梅性、三つ目は強い自家受粉性を持つ事です。今年は花が少なめだったのですが、殆どの花が実を止めました。花が多い年は、大豆ほどの大きさになると、半分以上実が落ちてしまいます。青梅性なので熟度の見極めが難しいのですが、種子の中の仁と呼ばれている部分が、白く固まっていれば梅酒には適期です。この株の場合は5月中旬です。

ザロンバイ

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花が咲いた時は4本の雌しべが有り、それ等が全部実が止まり大豆ほどの大きさになった時に、殆どが一つになります。その様子から座論梅と呼ばれます。でも中には双子稀に三つ子の実も有ります。写真の様にたくさん成らせてしまうと、実が小さくなり木も弱って、来年はほとんど花を付けない裏年になります。このウメは種子の比率が小さく皮が柔らかいので、梅干に使っています。梅干にすると酸味が弱く、小粒の方が食べ易いので、摘果せずわざとこの様な成らせ方をしています。

ヤマブドウの発芽?

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去年ヤマブドウに初めて3房の花が付き、内2房から3粒の実が採れました。熟した実を食べて種子を蒔いておきました。今年はたくさん花を付けているので受粉が気になり、近くにある毎年花をよく付ける雄株を調べてみました。すると両者の開花時期が10日以上ずれていました。雌株が先に咲き雄株が遅れて咲きます。去年も同じだったのでしょうか。もしそうだったら、ヤマブドウには無いと言われている両性花だった事になります。今年の実の成り方をしっかり注意して観察してみようと思います。ところでこの芽はヤマブドウなのか気になります。小さい双葉の内は、付近にたくさん発芽するツタの発芽とそっくりなのです。本葉が大きくならないと判断できません。傍に楊枝を刺して印にしたのですが、断定はできません。もしヤマブドウであったなら、発芽能力を持った種子が出来た事になり、両性花の可能性がかなり高くなります。でもまだこの株の雌雄は数年以上して花が咲かないと分かりません。これから先が難題です。この株が何か分かりましたらまた報告します。

 

次回はまた庭の草花の様子を紹介します。

 

 

春の木の花

この時期に咲くあまり見られない花を紹介します。

ミヤママタタビの花

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4月上旬から2週間程かけて、下から上に咲いて行きます。これは雌花で付いている雄しべは飾りで、受粉能力は有りません。キューゥイの花粉を付ければ実が成りますが、その種子は蒔いても発芽しません。

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この木は花の時期に先端の葉が、淡い薄桃色になるのが特徴です。自生地では木全体が薄桃色に染まって、とても綺麗でよく目立ちます。こちらで栽培すると、初めのうちは花が咲いても僅かしか変色せず、年と共にその変色する葉が増えて行きます。葉を変色させるのは、受粉してもらう虫を呼び寄せる為で、マタタビは葉を真っ白にしますが、これは高山地帯で春が遅いので、その時期の虫に合わせて桃色にしているのでしょう。

ヤマブドウの花

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ヤマブドウは風媒化で虫を呼ぶ必要が有りませんので、花がとても地味です。雄花も雌花も帽子の様に覆っていた花びらが、花が咲くと帽子を取る様に外れます。雌花は雌しべとその周りに雄しべが見られますが、その雄しべは飾りで両性花では有りません。この株は今年が花が咲き始めて2年目になり、花は20房以上は有りそうです。そこで今年は雌花と雄花の咲く時期を確認してみました。すると雌花はもう咲いているのですが、雄花はまだ咲いていませんでした。どれくらい実が止まるのかとても気になります。

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雄花ですがまだ咲いていません。

シャクヤク

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実生のシャクヤクの花です。ボタンやシャクヤクやブドウやウメなどは、園芸種として古くから何世代にも亘って栽培されて来たので、種子を蒔いてもそれなりの見応えや食べ応えのあるものが出来ます。ただ特定の形質のものを得ようとすると、一般の人ではまず不可能です。実生で育てると、何が出て来るのか分からないので、宝くじを買った様にとても楽しみです。場所と時間に余裕のある方は、やってみてください。

 

次回はウメの実の様子を紹介します。

 

 

 

春の草木

庭のヤマユリに、意外な姿を見せている株が有りますので、それらを中心に紹介します。

 

ヤマユリ

今年は全般的に草木の季節の進み方が早い様に感じますが、ヤマユリもかなり早い様に思います。毎年花を咲かせている株は、もう3個の蕾が見えて来ています。ヤマユリの栽培を本格的に再開して、今年で3年目になります。10年以上前に、熱帯夜が続く様な暑さになった為、殆どのユリは消えてしまいましたので、それ以来ユリの栽培は休んでいました。でもヤマユリが1株だけ消えずに残って、毎年花を咲かせていました。そんな時放置しておいた鉢に、小さい株が生き残っているのを見つけました。多分以前栽培していた株の種子が落ちて、出来た実生株の生き残りだと思います。この状態を観て耐暑性の強い株を作る目的で、ヤマユリの栽培を再開する事にしました。その栽培過程の中でそれ等の生育の様子を見ていると、後で見つけた耐暑性の強い株は、耐暑性が強いだけでなく長い日照時間にも耐えられる形質を持っている様です。一昨年の初冬に、後から見つかった株に出来た多くの木子を、一株づつ鉢に分けて植え付けました。それらの株は、去年は葉の枚数が5,6枚から10数枚で、花は付きませんでしたが、10月末まで葉はしっかりと青々と残っていました。耐暑性の弱い株は、花が咲いても7月中旬には枯れてしまい、普通の株でも9月末には枯れ始めます。そこで去年の秋にこの葉が遅くまで残った7,8株に、紐を結んで印を付けて追跡調査する事にしました。この春の途中経過を見ると、これらの株が異常に大きくなっていることが分かります。前年に花を付けなかった茎の細い株が、今年になっていきなり花を3輪くらい付けそうな大きさになるのは異常です。花が1輪づつ増えて行くのが、肥料を与えない場合の普通の生長速度です。これはこの株が、夏の日照時間が長い環境に耐える形質を持っていたからで、その為球根を異常に大きくする事が出来たのでしょう。普通のヤマユリは、日照時間が長く周りの草丈が低い、日差しの強い環境の所では生育できません。やはりこれは特別な形質を持っている株の様です。この形質は耐暑性を持つ株を作る上で、とても良い助けになります。これらの株が花を咲かせましたら、またその姿を報告します。

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紐が結んであるのは、去年の茎です。

 

もう一つ今年はヤマユリに珍しい現象が見られました。それは球根が鉢の中で分解した様です。この春に前年は1株だった鉢に、中小の沢山の芽が鉢の全面に出て来たのです。一昨年鉢に植えたヤマユリの球根が、去年の夏から秋にかけて何らかの原因で、球根が分解してしまった様です。ヤマユリは植えられた土壌の状態が悪いと、芯の茎が腐り球根の分解と同時に全体が腐って消えるのですが、今回の鉢は底にしっかりと炭を敷いてあり、土壌の状態が良かったので分解しても腐らなかったのでしょう。バラバラになった鱗片が新たな木子を作り、それぞれが独立した株になって芽を出したのでしょう。これと同じ様なやり方は、園芸業者が一度に多量のユリの球根を作る時に使われます。その分解の原因と考えられる現象としては、球根の下部の横から出た根の牽引力によって、球根の下部の茎が引き裂かれて、球根が分解した事が考えられます。

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アシガラサンショウ

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花が終わった姿で、一房の中に5,6個の両性花が付いていた花です。実が育つのはこの内の2,3個でしょう。雌しべは1本で、周りに枯れた雄しべが見られます。

 

タツナミソウ

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庭の白のタツナミソウが見頃です。この草も年と共に少しづつ移動して行く様です。7,8年前に植え付けた時は、ここより30cmほど離れた所でした。

 

次回も庭の草木の変化を紹介します。

 

 

春の庭の様子

タンポポ

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何処からか種子が飛んで来て生えた者です。詳しくは知りませんが、萼が反り返らず春だけ咲くので、在来種のタンポポではないかと思います。まさに春爛漫の光景ですね。

 

セイタカヤマシャヤクの発芽

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セイタカヤマシャヤクとヤマシャヤクを比較する為に、セイタカヤマシャヤクの種子を、ヤマシャヤクの箱に蒔いてみました。セイタカヤマシャヤクは、ヤマシャヤクの花が散る4月上旬に、やっと芽を出します。でも4月下旬にはヤマシャヤクの上に葉を広げ、5月上旬に花を咲かせます。草丈が高いので低い草の上に出られ、秋まで葉が枯れずに残るので、寒さの緩んだ春遅く芽を出した方が安全なのでしょう。

 

ヨトウムシ

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そろそろヨトウムシの活動する時期になりました。この虫はヨトウガの幼虫で、名前の通り夜だけ活動し、昼間は土の中に潜っています。これは4月9日午後10時50分に、ユリの葉を食べているところを写したものです。

昼間にヨトウムシと思われる食害を見つけたら、農薬を使わずにその虫を駆除する方法は3つ有ります。

一つ目は、今回の様に夜の10時以降に、食害された葉を調べて捕まえる事です。

二つ目は、食害された植物の根元に、スレート板を置いてその上に生乾きの枯れ草を、2,3cmの厚さに敷き詰めておきます。ヨトウムシは昼間はその適度に湿った敷き草の下に隠れますので、昼間にそっとその敷き草をどけて虫を捕まえます。

三つ目は、鉢植えの植物が被害を受けた時に使う方法です。鉢が完全に入る容器を用意し、鉢をその中に入れて鉢と容器の間に、水をゆっくりと鉢が沈むまで注ぎ込みます。暫く待つと虫が浮かび上がって来ますので、それを捕まえます。鉢をすぐに水から出して、元の所に戻しておきます。

これからはコウモリガの幼虫に注意してください。捕まえ方は後日説明します。

 

ザロンバイの実

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4月に入ると沢山付いていた実の内、余分な実が落ち始めます。少し強い風でもパラパラと落ちていきます。4月末には殆ど落ちきり、残った者が普通の梅の実になります。木の為には3月中に摘果した方が、木に負担をかけずに済みます。

 

次回も庭の植物の様子を紹介します。

 

 

ヤマブドウ

関東近辺ではヤマブドウは、中高山の山奥に行かなければ見られません。ヤマブドウは紅葉する葉の中では最も大きくとても綺麗で、食べられる実も成るので人気のある野生の蔓植物です。最近はこの果実に多量に含まれるポリフェノールが注目されて話題になっています。このヤマブドウを暖地の平地の家の庭で栽培出来るのかやってみました。

栽培のきっかけ

二十数年前に秋田県の樹木調査に参加した際、家で栽培してみようと蔓を採取して来ました。揷し木が活着して蔓がよく伸びたのですが、全く花を付けてくれません。そんな時アケビの蔓で、花を早く咲かせる誘引法を見つけたので、早速その誘引を試してみました。するとその誘引後の翌々年に突然沢山の花を付けました。

ヤマブドウは雌雄別株?

でもその花を見ると、雄しべだけで雌しべが有りません。そこでもしやと思い植物図鑑を調べてみると、ヤマブドウは雌雄別株であることが判りました。私は高校生の頃、家の畑でブドウを作った経験が有りましたので、ヤマブドウもてっきり両性花だと思い込んでいました。そこで暫くは山歩きする度に、雌株を見つけては採取して挿木してみました。自生地で観察して分かったのですが、実のなるヤマブドウはとても少ない様です。初めは雌株の割合が低い為と考えたのですが、それを確認しようとヤマブドウの多く生えている林道で、春に花を調べてみました。すると意外にも雄株は考えていた程多くは無く、僅かに多い程度でした。多分雌株は花が咲いても、中々実が付かないのでしょう。数年に一度しか実を付けないのかもしれません。サルナシ等にも同じ様な傾向が有りますが、環境の良い暖地の平地で栽培すると、毎年良く実を付けます。これらの事からヤマブドウは雌雄別株で、そのら割合はほぼ同じくらいの植物でした。

ヤマブドウは平地でも実が採れるのか

このヤマブドウはサルナシ等に比べると、揷し木の活着率は良くありません。揷し木が上手くいって少し大きくなると、シンクイムシにやられてまた根元の方から新しい芽を出して、その繰り返しでついには枯れてしまいます。雄株は虫にやられても大きく育ったのですが、雌株はどれも虫に弱い様です。暖地の冬は寒さが厳しくないので、虫が越冬出来てしまう様です。もしかするとこれが暖地で自生しない理由かもしれません。ところがこの数年は気候が変化した為か、虫の被害が目立たなくなりました。何回か被害を繰り返していた株が、数年前からやっと大きく伸び出して、去年初めて花を3房付けました。内2房から3個の実が稔りました。少し離れた場所に在る最初に植えた雄株の花粉が、上手く飛んで来ているのでしょう。今年はかなり多くの房が見られますので、数年すればもっと実が止まる様になる事を期待しています。

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園芸種のブドウ

園芸種の果物は、両性花が一般的です。でも野生の植物では、雌雄別株がかなり有ります。ブドウも園芸種は両性花ですが、野生のブドウの仲間は雌雄別株です。このヤマブドウの雌雄別株を知ってから気付いたのですが、人間が初めて作り出した果物であるブドウは、野生の雌雄別株のブドウから両性花の株を作り、それを色々改良したのではないでしょうか。雄株ではその株が持っている果実に関する形質は、全く外には現れません。ですから交配によって期待する果実の成る株を得ることは、非常に困難です。文字も設備も情報も無い時代の古代人に、そんな知識と技術が有ったのかが疑問ですが、それでも両性花の株の作出と改良をやったと考えるのが最も合理的です。古代人は我々現代人より遥かに鋭い自然観察力を持っていた様です。私も特別な設備を使う事なく、雌雄別株のサンショウから、両性花のアシガラサンショウを作ることが出来ました。初めは古代人が両性花のヤマブドウを探し出して、それを使って改良して行ったと思っていました。そこで十数年かけて両性花のヤマブドウを探してみましたが、どうしても見付け出すことは出来ませんでした。ですからこのサンショウの経験から考えるとそうではなく、雄株に付く僅かの両性花の実を見付けて、それを使って両性花の株を作り出したと思う様になりました。雌雄別株の植物の雄株には、思っていた以上に両性花が付いている様です。多分古代人もこの事に気付いていたと思います。

鳥が蒔いたブドウ

6年ほど前に建物の横に有る幅80cmほどの空き地に、蒔いた覚えの無いブドウが生えて来ました。どんなブドウが成るのか育ててみようと思い、支柱を立てて建物に沿わせておきました。葉の感じはデラウェアに似ていました。2年前に建物の2階の廊下まで伸びた枝に、初めて花を4房付けましたが実は止まりませんでした。去年は花の数が増えて、実も少し止まりました。実はデラウェアの1.5倍ほどで色は同じ様でした。味は甘味も酸味も普通のブドウと変わらないものでした。今年はもっとしっかりと実がつくのではと期待しています。多分このブドウは小鳥が蒔いたものと思いますが、園芸種の実生のブドウは、凄く良いものが出来ると期待しなければ、そこそこの味のものが得られる様です。

 

次回からは、春から初夏にかけての庭の植物を紹介して行きます。

ウメの種子の二重発芽抑制機構

ウメの種子には、いままで知られていなかった二段階の発芽抑制作用が有る事が分かって来ました。その二段階目の発芽抑制作用について解説します。

樹木の種子の発芽抑制

樹木の種子には、発芽抑制機構を持つ者が多く有ります。その目的は、親株の根元で発芽される事を防ぐ為です。親子で生存競争が生じ、種の繁殖にとって良くないからです。果物の場合は、種子に付いている果肉は、その捕食者にそれを食べさせる事によって、親株から遠くへ運ばせる為と考えられていますが、あまり一般には知られていませんが、もう一つの大事な働きが発芽抑制機能なのです。もしそれが食べられる事無く根元に落ちた時に、発芽してしまうのを防ぐ為です。果実にはこの他、特殊な被膜や種子の乾燥を発芽抑制に使う者も有ります。ウメの実の果肉にも発芽抑制作用は有りますが、その先にもう一段の発芽抑制機構が有ります。

調査のきっかけ

20年程前に、関西の梅農家の人から「父親がウメはまとめて種子を蒔くと、発芽しないと言っているのですが、どうしてですか。」との質問を受けました。私はそれまでその様な植え方をした経験は無かったので、「経験は無いが多分果肉が持っている発芽抑制作用によると思います」、と答えておきました。それから暫く経って、どうもその事が気になっていましたので、調べてみる事にしました。

発芽実験の方法

私は毎年梅干しを作っていますが、出来るだけ完熟に近い果実を使っています。その為実が少し落ち出すのを待って収穫するのですが、その収穫前に落ちた実を使って、この発芽実験をやってみました。

1回目は、30個程の実を果肉の付いたまま、まとめて蒔いてみました。予想通り1本も発芽しませんでした。この実験の場合は、必ず比較用に何個かの種子を果肉を完全に取り除いて、一粒づつ離して別の所に蒔いておきます。その比較用の種子は普通に発芽しました。

2回目は、30個程の実を果肉を完全に取り除いて、まとめて蒔いてみました。これも1本も発芽しませんでした。比較用の種子は発芽しました。

3回目は、30個程の実を果肉を完全に取り除いた後、3日間水に浸けてアク出しをして、まとめて蒔いてみました。これも1本も発芽しませんでした。比較用の種子は発芽しました。

それまでの発芽しなかった種子を調べてみると、殻は割れていませんでした。割って中身を調べてみると、白くどろどろに腐っていました。普通の発芽は、12月初め頃に殻を割って根が下に伸び出すのです。従ってその前の発芽準備工程で既に抑制作用を受けている事になります。そこで

4回目は、30個程の実を果肉を完全に取り除いて、プランターに炭の粒で作った用土に、まとめて蒔いてみました。翌春には1本も発芽しませんでしたが、次の年に端の1本だけ発芽し、その年の7月末に枯れてしまいました。これは種子が発芽抑制物質を、事前に出しているのではと予想して、それを吸着させる為にやってみたのです。

5回目は、50個程の実を果肉を完全に取り除いて、プランターに5cmの間隔で蒔いて、6月中旬に蒔いた種子を、7月末と9月末と11月末に10個づつ取り出して、直径5cm程のビニールポットに蒔き直してみました。プランターに残った物もビニールポットに移した物も全て発芽しませんでした。後でわかったのですが、移した容器の容量が小さすぎた様で、直径15cm以上が必要だった様です。これは発芽抑制物質が、植物フェロモンではないかと考えて、他の種子と引き離せば影響を受けないと思ったからでした。植物フェロモンであれば、自身には何の影響も与えません。結果は植物フェロモンではなかった事になります。

纏めて蒔くと発芽しない原因

ここまでの実験で考えられる原因は、種子が発芽準備に入る前に発芽抑制物質を出し、種子を植えた用土の容積が小さい場合又は、隣接して他の種子が在る場合はその物質が拡散されずに、その濃度が高い状態で発芽準備に入った種子が、水分と一緒にその高濃度の発芽抑制物質を吸収して、発芽出来なくなる事です。発芽しなかった種子を調べた結果からも、これらはその発芽準備の前に枯れている事になります。ではその種子1個当たりの容積とはどれくらいでしょうか。鉢の大きさで言うと直径と高さが15cm、プランターや直植えでは種子の間隔が15cm程度の容積と思われます。全ての実験の際に別途比較用に植えた種子は、全てこの基準より大きくなっていましたので、全く発芽しなかった年は有りませんでした。そこでこれを確認する為、

6回目は、30個の実を果肉を完全に取り除いて、10個づつに分けて次の3種類の植え方をしてみました。一つ目は再度確認の為、直径と高さが12cmの鉢に植えました。二つ目はもっと小さい直径と高さが6と8cmの鉢に植えました。三つ目は前年に小さい鉢に蒔いて発芽しなかった物の用土を使ってみました。鉢の大きさは、直径と高さが13と10cm程です。結果はこれからです。

発芽抑制機構の意味

そこでウメはなぜこの様な発芽抑制機構を設けたのか、その理由を考えてみましょう。多分動物に多量に食べられて、その種子が固まって一箇所に排泄された時、同時に沢山の株が出来てしまい、それらが共倒れになる事を防ぐ為かもしれません。ただ普通の果実では、その果実の成分を工夫し一個体に独占されない様にしています。サルナシの仲間は、蛋白質分解酵素を多量に含ませているのもその為でしょう。クコの実も鳥は少ししか食べません。この目的は作った種子を多くの個体に食べさせて、無駄無く出来るだけ多くの場所に蒔く事で、混植を防ぐ為では有りません。ですからウメのこの発芽抑制作用が、本当に混植を防ぐ為かは疑問の余地が有ります。

 

次回は、ヤマブドウを紹介します。

 

 

 

 

3月中旬の庭

春の彼岸頃になると、いろいろな草木が動き始めます。以前に紹介した庭の草木の動きを追って紹介します。

ギョウジャニンニク

去年の9月に二度目の葉を出した株は、1月中旬に寒さで葉が枯れました。でも2月中旬には、他の普通の株と同様に葉を出して、3月中旬には葉が伸び終わりました。この1年を振り返ると、この株は二毛作だった事になります。今期もそうなるのか、またその分増殖が増すのかを継続して観察しようと思います。宿根草で年に二度葉を出すなど聞いた事が有りません。花を付ける大きさになったら、二度花を咲かせるのか興味の有るところです。

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ザロンバイ

今年のザロンバイは成り年で、3月中旬ではまだ実は落ちませんので、この様な姿になります。この後余分な実が落ちてもまだ実が多過ぎて小さい実ばかりになり、さらに来年は裏年になり花も僅かしか付きません。ですから花粉樹に使う場合は、この時期にうんと強く摘果しなければなりません。

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アシガラサンショウ

アシガラサンショウの実生株に初めて花が付きました。小さい蕾の時は雄花の様に見えましたが、蕾が膨らんでくると雄しべの中心に、雌しべが有るのがはっきり分かって来ました。初めての花なので数房しか有りませんが、どの花も同じ様に雄しべと雌しべが有る両性花でした。どうやら雄株の中の僅かの両性花から一世代を経ただけで、数世代かかると思っていた目的の完全な両性花の株が出現した様です。これからこの株の着果率や、兄妹の株の両性花の現れ方や、この株の実生株等を観察して行くつもりです。

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実生の両性花の蕾、これから雄しべの葯が開く。

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普通の雄株の雄花、雄しべの中に雌しべは見えない。

 

ヤマシャクヤク

ヤマシャヤクの蕾がもうこんなになっています。4月初めには咲き始めます。

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ヤマユリ

耐暑性の強いヤマユリの株の芽出しです。ユリは毎年少しづつ同じ方向に移動します。このユリも始めは鉢の中心に植え付けたのですが、2,3年前に鉢の端まで来てしまいました。端まで行ったらその後どうするのか観察しているところです。今のところ端にくっついたままです。面白いのは球根のすぐ上の茎に付く木子も、親株と同じ方向に移動して行きます。クローンなのでまるで同じジャイロを備えているかの様に振る舞います。この同じ方向に動く理由は、球根の構造に因るのだと思います。ユリの球根は一見すると、鱗片が真上を向いているので茎も上を向いている様に思いがちですが、鱗片が真上を向いているのは茎から出た枝が上を向いているからで、元の茎は横を向いていて球根はその方向に移動するのでしょう。

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次回はウメの種子が持つ二段階の発芽抑制機構を紹介します。